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器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


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135話 『黒亜と修行なう!』

 2人のお使いが終わり、幾月が経ったある日、私は黒亜に話があると呼び出された。

 白夜と一緒に話をするならともかく、黒亜1人で、尚且つ白夜に聞かれたくない話とは一体なんなのだろうか。


 あれ? もしかしてこの家を出て行くとかじゃないよね?

 い、いやいや、さすがにそれはないはず!

 ……でも他に私1人にだけ話す事なんてあるかな?


 待って。嫌すぎるんだけど。出て行くにしても早すぎるよ!

 お願いします。もっと普通の話でありますように……。


「あ、あのね。私ってほら稽古とかして強くなったし、そろそろママと一緒にモンスターを倒しに行きたいなって」

「モンスターを倒しにね。良かった……」


 私の考えていた内容とは裏腹に、黒亜は実戦をしてみたいという事だった。

 けれど、どうしてこの話を白夜に聞かせたくないのだろうか。


「私は別に構わないけど、なんで白夜の居ない所で話したの?」

「それは、白夜は私と違って戦いがあんまり好きじゃないみたいだし、もしも私がママと一緒に行くって言ったら無理にでも付いてきそうだから……それに、多分白夜は私だけママと行ったら嫉妬するし……」

「うーん。それなら私から白夜に聞いてみるね。付いてくるって言うのであれば私が全力で守るし」


 黒亜のお願いをひとまず聞き、了承した私は、白夜の元へと向かい、今の話を白夜へとした。


「という事で、白夜はどうする?」

「私は待つ練習をする。きっとこれから先も同じような事になると思うし、ご飯とか作って待つ!」

「そっか。ありがとね」


 待つと言ってくれたものの、やはり寂しそうな顔をしている白夜を見て、喜んでくれるかは分からないけれど、頬へとキスをした。

 しかし、そんな私の行動を見ていた黒亜は案の定と言うべきか「ズルい! 私にもして!」と抱きつきながら叫んでいる。

 正直、ここまで求められたら黒亜にもしてあげたい気持ちが出てくるけど、私はその気持ちをグッと我慢して、黒亜を納得させる為の言葉を探した。


「黒亜は今から白夜よりも私と一緒に居るんだから我慢出来るでしょ?」


 そして出てきたのはこの言葉。

 お姉ちゃんだから我慢出来るでしょ? っとどちらを言うか迷ったが、これを言ってしまえばこれから先お姉ちゃんだからという理由で黒亜が我慢しなければならない可能性が出てきてしまう。

 だから、こっちの言葉を選択しなかった。


「んー。確かに私の方がママと一緒に居れるし、我慢する!」

「うんうん。ちゃんと我慢出来て偉いね」

「えへへ〜」


 黒亜が納得し、一方の白夜は私からのキスを喜び、「一生懸命料理とか、掃除とかしてお出迎え出来る様にするね!」と張り切ってくれている。

 元気に手を振りながら私たちを見送る白夜を見る限り、寂しさは既に無くなったと思って大丈夫だろう。


「それじゃ、私はちょっと魔王とかに話してくるから、黒亜は少し待っててね」

「はーい!」


 白夜自身に寂しさは無いと言えど、1人にしておくにはやはり心配な部分が多い。

 おおよそ心配ないとは思うけれど、念のために私はいつも様子を見てくれている執事や兵士、魔王へと白夜の事を頼む事にした。


『はぁ。たった1日程度狩りに行く為に魔王である私にまでお願いするなんて馬鹿なの?』

「いや、なんとなく心配なんだって」

『あーはいはい。分かったからさっさと行ってこい。私も適当に面倒見るけど、仕事があるんだからさっさと帰ってこいよ?』

「ありがとね」


 なんだかんだ言いつつも、しっかりと面倒を見てくれようとしている魔王。

 私と魔王の仲だからかもしれないし、単純に魔王が双子の事を気に入っているだけかもしれないけど、それでも面倒見の良い魔王と友人であり、こんな事まで頼める仲である事が少しだけ嬉しかった。


 そんな感じで魔王との話も終わり、待っていた黒亜の元へと戻った私は、黒亜を抱えた状態で麒麟へと変態し、魔王城から飛び立った。

 まぁ、飛ぶといっても、私自身本当に飛ぶことは出来ないから物凄いジャンプだけどね。


 そして何度かジャンプを繰り返し、ある程度離れた山に着地した私は、麒麟から人間へと変身し、少し涙目の黒亜と共にモンスターを探し始めた。


「うぅ。そういえばどうしてママはモンスターの姿じゃないの?」

「んー、私があのモンスターの姿でいると他のモンスターが寄ってこなくなっちゃうし、万が一人間とかと会ったりした時に面倒くさい事になるからかな?」


 黒亜にも説明した通り、何故か麒麟状態でいると他のモンスターは殆ど私から逃げてしまうのだ。

 威圧スキルもオフにしてるし、特に問題はないはずなのに、モンスターが逃げるということはきっと見た目の問題があるのだろう。


 私って怖いのかなぁ?

 でも黒亜とか白夜も別に私の姿を怖がってないし……。

 うーん、本心では怖がられてたらやだなぁ。

 うわぁ。なんか考えれば考えるほどに怖がられてそうな気がしてくるんだけど。


「そうなんだ! ママはどんな姿でも強いしカッコいいから私は好きだけど、やっぱり今の姿の方が好き! だって手を繋げるんだもん!」


 ふぅ。良かった。

 麒麟の姿が嫌いとか言われたらどうしようとか思っちゃってたよ。

 ってか、それよりもカッコいいって言ってくれたし、やっぱり今からでも麒麟の状態で行った方がいいかな?


 ……いやいやいや! それだと黒亜の修行にならないじゃん!

 アホか私は!


「ふふっ。そっか、私も黒亜と手を繋ぐのはとっても嬉しいよ」

「ママの笑顔だ! 可愛い!」

「そ、そう? ありがとね」


 まるでモンスターを狩りに来たとは思えないほどに緊張感がなく、なんならピクニックでもしに来たのか? だと思えるほどだけど、私はともかく黒亜の装備を見れば少なくともピクニックではない事が分かる。


 肌がある程度露出しているものの、胸当てなどはしっかりとしたものを使っており、身軽さを重視した軽装。

 肝心の武器に関しては変哲もない二本の短剣だった。


 恐らく稽古で使っている装備と似たような物を魔王から貰ったのだろう。

 ただし、武器に関しては魔王城でも兵士などが使用している短剣で間違いない。


「ママ、どうしたの?」


 黒亜をじっと見ていたからか、疑問に思った黒亜が私の方を向いて訊ねてくるが、それに答えようとした瞬間に、茂みから一体のモンスターが襲ってきた。

 しかし狼が襲うよりも早く、私の体は動き出し、黒亜を抱えたまま狼の攻撃を避けることに成功した。


 けれど、一体だと思っていたモンスターはどうやら群れで行動していたらしく、茂みから複数体の同じ姿形をしたモンスターが唸り声をあげながら現れた。


「大丈夫? 一人で戦える?」

「が、頑張ってみる!」

「危なくなったら助けるから、全力で戦ってごらん」


 武者震いか、それとも恐怖で震えているのか、どちらかは分からないけど、若干震えている黒亜に戦わせるのは普通に考えたら酷というものだろう。

 それに、殺すことに抵抗があるか、血を怖がらないか、噛まれたりして傷を負うことに恐怖しないかなど、不安要素はどんどん浮かんでくる。


 だが、そんな私の不安要素など全てかき消すように、モンスターと対峙した黒亜は囲まれたりしながらも、身軽に木を使ったりして翻弄しながら戦っていた。

 当然、ある程度の傷を負ってしまっているものの、それでもそんな傷を諸共せずに果敢に戦い、危なげなく勝利した。


「ママ! 私戦えたよ!」

「うんうん。凄いね。ホントに一人で全部倒すなんて思わなかったよ! さすが黒亜!」

「えへへ〜」


 黒亜の頭を撫で、褒めながら私は傷を癒していく。


「さて、治し終わったし、こっから先も頑張ろっか!」

「うん! ママ、ありがと!」


 その後、夜になるまで何度か戦闘があったが、木々の隙間を抜ける月の光だけしか明かりがない中や、今までより少し強いモンスターとの戦闘でも黒亜は一切の弱音を吐かず、戦い続けた。

 ただし、決して黒亜が強いというわけでもない。

 確かに根性もあるし、真正面から突っ込んだりせずに弱点を狙ったりする点は優れているかもしれない。

 けど、正直な所人間の兵士よりは強く、魔王軍の兵士のリーダー格よりは弱い程度。

 ある程度地の利を生かし、スピードを活かせれば戦いリーダー格くらいはあるかもしれないけど、戦場ではそうもいってられない。


 ……うーん。このくらいの強さがあれば次の戦いから連れて行けそうかな?

 ちょっと不安だけど……。


「黒亜、強くなったね」

「うん! ……ねぇママ、これでママと一緒に戦える?」

「んー、武器を変えたり、私と稽古して強くなったりしたらかな」

「ホント!? やったぁ!」


 私と一緒に戦う為に努力し、ここまで成長した黒亜。

 そんな黒亜の笑顔は月に照らされ、それを見た私の顔も自然と微笑むのだった。

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