131話 『まるで破壊の神?』
魔族が攻めきているのが分かった私は、恐らく寝ていた私を守ってくれていたのであろう兵士を数人程容赦なく殺した。
ただ、全員を一気に殺したつもりだったけど、囲むように守ってくれていたのが幸いしたのか、数人は血を吐きながらも生きながらえてしまっていた。
「麒麟殿……約束は……?」
「ごめん。私は魔王の味方だから」
「……クソ。そういう事だったのかよ……」
幾ら無慈悲に殺すといっても、ボロボロになった兵士にまで手を掛けるつもりはない。
いや、なかったというのが正しい。
今まさに目の前で苦しみ、死ぬよりも辛い痛みに襲われている兵士が泣きながら「殺してくれ」と頼んできているのだ。
これは一撃で殺さなかった事が原因。
つまりは私の所為でもある。
だから私は、兵士の元に近付いてその願い通りに殺した。
罪悪感なんてものはない。人を殺すことに今更躊躇いもないし、無数の屍を見てもなんとも思わない。
けれど、それは強がりなのかもしれない。
なにせまだ心の片隅に残っている私の人間的な部分が悲鳴をあげているのだ。
地を這い、殺される事を懇願する兵士達。
それを見て殺す私。
客観的に見ればやはり私は悪者になってしまうのだろう。
でも、そんな事を考えていれば魔王と共に歩む事など出来ないし、今までだって散々悪者にはなってきている。
考える必要なんてない。私は力の限り蹂躙すればいい。
それが魔王の為であり、私の為。
「やっぱり早く白夜と黒亜に会いたいなぁ」
ちょっと休んだ事が原因なのか、なんだか疲れた気がして無性に癒しが欲しくなってしまった。
「よし! さっさと終わらせて早く帰ろっと!」
魔王軍には事前に私が本気を出して暴れ回るから近付かないでと伝えてあるし、万が一にも巻き込まれても責任は取らないとも伝えてある。
これで私は暴れ放題って訳。
「どけどけー! 死にたくないやつは私の前から姿を消しな!」
ひゃっはー! 行け行け私! どんどん突き進めー!
さっきまで人間的な部分が悲鳴をあげているとかなんとか考えてたけど、まるで気のせいだったように私は砦を破壊するが如く魔法を放ちまくっていた。
「悪魔だ……」
「これが伝説のモンスターか。俺たちとじゃ次元が違いすぎる……」
あ、悪魔……? 私が……?
いやいやいや、違うよ。そんな悪魔みたいな低俗な奴じゃなくて、どっちかっていうと神様でしょ! 破壊神だよ私は!
……うわ。なんか恥ずかしくなってきた。
悪魔って言葉に対抗してつい思っちゃったけど、普通に自分のことを神様って考えるのはやばいわ。
久しぶりに暴れ回って気分がHighになっちゃってたね。
ここは一旦冷静に落ち着いて深呼吸でもしないと。
吸って〜、吐いて〜。吸って〜、吐いて〜。
……ふぅ。落ち着いた。
深呼吸してるときについブレスを撃っちゃったけど、それのお陰で大方人間達は片付いたし、これで殲滅完了かな!
ん〜。それにしても結構砦が崩れちゃってるな〜。
これってもしや私の所為?
うんうん。わかってる。分かってるよ。
けどさ、元々私をこの戦場に送り出すってことは、こうなる事も想定済みって事でしょ?
だって私の強さは魔王が知ってるはずだしさ!
『麒麟様! この砦の占拠が完了致しました! ご尽力ありがとうございます!』
「人質だった魔族は大丈夫そう?」
『はい! 恐らく恐怖で失神してしまったと思われますが、命に別状はなく、というよりも、傷一つないです』
「良かった。それじゃ私は帰って良いよね?」
これでようやく帰れそう!
さぁさぁ! 帰って良いと言ってくれ!
『はい。麒麟様の活躍は見事なものでしたし、魔王様への報告も麒麟様がしてくださるのであればお戻りいただいて構いません』
ん? 魔王への報告?
私がしちゃって良いの? 多分普通に魔王軍も巻き込んで殺してると思うし、砦も崩壊させちゃってるし、その張本人が報告しちゃって大丈夫かな?
あ、違うか。私がやってしまったから、私が報告しなきゃいけないのか。
ぐぬぬぅ……。絶対怒られるやつだこれ……。
はぁ。ちょっと憂鬱だけど、白夜と黒亜が癒してくれるから頑張って怒られてきますかー!




