118話 『双子の名前』
街を出た私は、街から遠く離れた場所で人間へと変身し、双子の持っていた地図を受け取って、自分の位置と魔王城の位置を確認した。
「あちゃー、結構遠いなぁ」
「ママ、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
地図を確認し、思っていたよりもずっと遠くにある魔王城を見て、少し考え込んだ私を見て、双子の妹の方が私を心配して声を掛けてくれた。
そんな中、姉の方は、こうして外に出る事が珍しかったのか、あまり離れすぎていない距離で走り回ったりして楽しんでいる。
うーん、こうして見ると内気で気配りの出来る妹と、好奇心旺盛な姉は正反対って感じかな?
だとしたら戦闘向きなのは姉の方だし、妹の方はどうしようかな。
いつか家事とかさせてみるとか? それとも魔法とかのサポート役?
んー、ステータスとかが見れないからなんとも言えないけど、多分2人とも素質はないんだよね。
ま、その辺は詳しく分かんないし、後回しでいっか。
とりあえず魔王に会ってからだね。
「ん? あ、ちょっと待った。重要な事忘れてたわ」
一つだけ一番重要な事を私は忘れていた。
魔王に会うとか、魔王城に向かうとかより遥かに大事な事。
そう、それは名前。
私は双子の名前を知らないのだ。
これから先一緒に居るのだとしたら知らないとまずい、っていうか普通に知っておきたい。
「ねぇ、2人の名前を教えてもらって良い?」
「……? 名前なんてないよ?」
「お姉ちゃん、私の名前ってなに?」
あちゃー、ダメだこれ。
2人とも完全に首を傾げちゃってるよ。
というか、名前がないってどういう事なの?
そういう名前を付けない文化とかこの国にあるってこと?
「よし分かった。とりあえず2人の今までの話を聞いても良い?」
「魔王様の所に行かなくて良いの?」
「遅くなったら魔王様怒っちゃうんじゃ……」
「大丈夫! そこは私に任せといて! それよりも私は2人のことを知りたいの! それに、歩きながら話せば大丈夫でしょ?」
双子は私の言葉に頷き、歩きながら私へと過去を話し始めた。
それは私と出会う前のお話で、話すのすら辛くなるのような話だ。
目が見えなくなった経緯、ボロボロになる程働かされる日々、私ならきっと耐えられなかっただろう。
「よく頑張ったね」
それしか言えない。
同情もするし、可哀想だとも思うからこそ、私はこの言葉しか言えなかった。
でも、この言葉が2人にとってはなによりも嬉しかったのか、私に抱きついてボロボロと涙を流している。
っていうかさ、なんていうんだろ、すんごいイライラするんですけど!
いや別にさ、言っちゃえば奴隷をどう扱おうが知ったこっちゃないし、この世界基準で言えば特に問題ないんだろうけどさ、それでも今目の前に店主とやらが居たら八つ裂きにして殺しちゃうわ!
だって話を聞いちゃったし、私の庇護下に入っている双子だもん。
マジで許せねぇ。
……今からでもあの街の人間殺してこようかな。
どうせあの道具屋に入った人達も見て見ぬ振りをしてたんだろ?
幾ら見えない位置に傷を作ったりしても、気付く人は気付くだろうしさ、それを無視してたって考えると同罪だよね?
ま、でも正直分からなくもない。
こうして私は力があるから怒れるし、殺意を向けられるけど、力がない人からすれば助けるのなんて難しいはず。
だから、ムカつくけど今回は何もしない。
私も最初は助ける気なんてなかったし、殺し尽くしたいけど殺すほどの権利は私にはない。
あるとすればこの双子だけ。
でも、その双子が何も言わないのであれば私からは何もしないのが正解なのだろう。
「ねぇ、ママは私達をずっと守ってくれる?」
「当たり前。私は親なんだから、ずっと守り続けるよ」
もし、これから先双子を狙ってくる奴らがいたら私は有無を言わさずそいつらを殺すだろう。
既に双子は私にとって大切な存在なのだから、それに手を出すということは私の怒りを買うということだ。
まぁ、麒麟の近くにいる人間を襲おうなんて馬鹿な考えを持つモンスターは居ないだろうし、基本的には大丈夫だろうけどね。
「さて、2人の話を聞いて私は名前を考えたんだけど……」
「名前!? 付けてくれるの!?」
「ママからのお名前! 嬉しい!」
お、おう。
そこまで喜んでくれるとは思わなかったんだけど、ってか、ここまでの喜びようで私の付ける名前が気に食わなかったらどうしよう。
やばい、なんか途端に不安になってきたんだけど!
「そ、それじゃあ、えーっと、そっちの白い髪の妹ちゃんが、白夜って名前で、黒い髪のお姉ちゃんの方が、黒亜ってかなーって。初めて名前付けたし、結構難しかったから変かもしれないけど…….」
「黒亜……! カッコいい!」
「私、お姫様みたいなお名前だ!」
「喜んでくれて良かった。それじゃ、そろそろ全力で向かうよ」
「「うん!」」
以前まで白夜の名前を白姫と記載してましたが、白夜が正しいです!
既に直してますが一応ここに記載しておきます!(๑>◡<๑)
申し訳ありません!(๑╹ω╹๑ )




