10話 私の居場所がっ!?
やばい。
やばいやばいやばい!
どうしてこうなった!? 私の楽園を返して!
っていうかもう追いかけてこないでよー!
今、私は大ピンチであり、以前遭遇したモンスターに絶賛追い掛けられ中です。
まぁ、こんな最悪な事態も全て私のスライムとしての体が原因なのだけど……。
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それはいつも通り私が魚を食べて、ベチャっとなって、時折私が食べてる筈なのに増えている魚を見たり、壁に張り付く練習をしていた時のこと。
怠惰を貪り、日本での生活を思い出しながら、ニート生活最高などと、私は思っておりました。
日本でも不登校だったから自堕落な生活を送ってはいたんだけど、日本ではなによりお金が必要だった。
それに比べれば私の今の生活はなによりも幸せだ。
問題はスライムの体ってことだけど、慣れてしまった今では些細な問題に過ぎない。
不登校の時は誰の目でも気にしていたのに、今では誰の目も気にしない。
あ、モンスターの気配とかには気を配ってるけどね。
まぁそんな事より、私は今解放感に包まれているのだ。
スライムの幸せがどうとか知らないけど、私は私なりにとても幸せ。
小説や娯楽なんてものはないもないけれど、日本の時には体験できないような事も体験してるし、なんだかんだ一日中暇でも耐えられる。
こんな日々が、楽園がずーっと続けば良いのになとか考えていたのに、そんな日に限って崩壊の兆しが訪れた。
えっ!? なにあいつ! なんでここに来てんの!?
モンスターが来るのはたまにある事。そんなこと分かってる。
だけど、今日は違った。普段ならここに来たことのないモンスターだし、なによりも私の視界に映るモンスターは私が無様にも逃走したモンスターだ。
あれかな? もしかして最初からこの場所を知ってたとかだよね? 間違っても私を追ってきたとかそういうわけじゃないよね?
うん。大丈夫。私みたいな雑魚スライムを追い回したって、美味しくないし、ってか私って食べれるのかな?
って、そんな事より見張らなきゃ。隠れてるから大丈夫だとは思うけど、念のためにね。
おっ、なんだ。やっぱりあの熊型のモンスターは魚を食べに来たんだ。
ってなにあれ。あの熊さん全然魚獲れてないじゃん!
ぷぷぷっ。これなら私の方が獲るのは上手そうだね。
……ん? あれ? なんか熊さんこっち見てない?
おかしいなぁ。私の姿は完全に隠れてる筈なんだけど……。もしかしなくても、私の粘液が勝手に姿見せちゃった?
あちゃー。これは笑うしかないね。私が熊さんを見て笑った事によって、私の体は少しだけ見えちゃってるのね。
あーあ。折角良い岩場に隠れてたんだけどなー。
はぁ。仕方ない。逃げますか。まだこっちを見てるだけで完全には気が付いてないみたいだしね。
ーーはっ? えっ? はぁぁぁぁぁああ!?
ずるいし、そんなの聞いてないよ!
なんで熊さんが3匹居るの!?
折角こっちが余裕な感じで逃げようと思ったのに、そんな風に数でこられたら逃げられないじゃん!
いや、逃げるしかないんだけどさ!
くっそぉ。こうなったら蛇になって猛スピードで逃げてやる。
私の鍛え上げた足腰で壁を縦横無尽に這いまわって逃げきってやるよ!




