102話 『うそっ、私強すぎ!?』
さてさて一通り自分を褒め称えた結果、私は今すごく最高な気分になりました!
いや、自分で自分を褒めて喜ぶ変態とか言わないでよね! 絶対だよ!
って、自分でそれを思ってる時点で私もヤバいやつだ……。
ぐぬぬ。気付かなきゃ良かった……。
くそっ! 喋ってもいないから人間達から変な目で見られてないけど、なんとなく視線が痛い!
あ、そうだ!
こいつらの仲間が来るまでの間なら私どっか行っても良いんじゃない!?
そうだよ! 近寄らないし話し掛けないが条件なんだから移動しちゃおーっと!
先にこいつらの仲間の話を隠れて聞いといた方が後々役立ちそうだしね!
ふんふんふーん。
ほらほら、私を見張ってるのか知らないけどどんどんそんなの私は気にしないよー!
だって分裂スキル使えるもんね! まずは何気なく歩いて物陰に隠れて、後は分裂して変身スキルを使うだけ!
ほーら、ご覧の通り私は貴方達の前にいますよー!
おっと、それは分裂体だけどね!
ま、わたしであることに間違いなーし! 本体の私は蛇に変身して移動させてもらいまーす!
ーーはっ!?
あいつらは! よもやまだゴブリンが生きているとは!
てっきりこの集落のゴブリンは全滅させたと思ったのに!
あちゃー、これは失敗したなぁ。というか、この集落には入り口が二つもあるのかぁ。
ん? でもなんで見張りのゴブリンは確実に他のゴブリンの叫び声とかが聞こえたはずなのにまだ動かないんだ?
そういう命令とかされてるのかなぁ?
『はっはっは! 俺こそがゴブリンの王! お前たちは何があってもその場から動くんじゃないぞ! これは王からの勅命である!』
……的なことを言われて動かないとか?
うーん、それとも別の理由なのかなぁ。
ま、どっちでもいっか! とりあえず邪魔だから殺しちゃおーっと!
サクッと逝かせてあげるからそこから動かないでよね!
はーい、さようなーー!?
「ここが俺たちの仲間が捕まったゴブリンの集落か。確かにこの大きさじゃ中々の数がいるに違いないな」
「あぁ。彼らも手練れである事は間違いないのだがな、やはり数の力には勝てなかったという事だ」
「まだ生きていれば良いが……」
「いや、生きてはいても、嬲られているかもしれん。ゴブリンは雌を壊すように扱うからな」
「あぁ、そうだな。ーー待て。止まれ。あそこに見張りのゴブリンがいる」
あっぶな!
セーフ! ギリギリセーフ! 一思いに殺す前に声が聞こえて良かったぁ。
ってか、なんでこのタイミングなの!? もう少し待ってくれれば君たちは安全に仲間に会えただろうに!
ま、さすがに見張りのゴブリンには苦戦もしないか。
所詮数匹程度だしね。私は見てるだけで大丈夫!
……
…………んー? あれれ〜? どういう事?
なんで苦戦してるの!? おかしいでしょ!
たかがゴブリンじゃん! あんた達2人でも余裕でしょ! なんなら1人でも余裕だよ!
いやいやいや、こうなってくるとどんだけ弱いのかむしろ気になってくるんだけど。
これじゃ私のいた迷宮で即死だよ?
あー……でもそっか。話を聞いた限りだと、数の力にあの女の子達も負けたって言ってたっけ。
いやー、でもなぁ、あの女の子達が手練れで、あんた達が仲間ならそれなりに強いはずでしょー?
ならどうして押されてるの? 本当に意味がわからないんだけど……。
いや、うん。確かにあの女の子達が囚われてる理由は分かるよ? あの集落のゴブリンの数とか、長っぽい奴に負けたっぽいし。
けど、君たちが戦ってるのは見張りのゴブリンです。
それに時間掛けてるようじゃ、仮に勝てたとしても集落のゴブリンに蹂躙されてた気しかしないんだけど……。
はぁ、こんなの溜め息しか出ないよ。
ま、でもここで無駄に時間を使うのは勿体ないし、手助けしてあげますか!
ちょちょいっと、麒麟の姿に変態してと、分裂スキルを使ってるせいでステータス的には半分になってるけど、まぁ大丈夫でしょ!
ふおおおお!
瞬殺! 瞬殺ー!
よっしゃー!
「な、なんだあのモンスターは!?」
「馬鹿! あれは麒麟だぞ! 伝説のモンスターだ!」
「あれが麒麟!? なんでこんな所に!」
「俺が知るかよ!」
「くそっ。今俺たちじゃ絶対勝てないぞ!」
おおっ?
あれれ? 私やっぱり敵対されてる感じ?
伝説のモンスターなのに、助けたのにどうして?
「待て。あのモンスターは俺たちを助けてくれたみたいだぞ」
そうです。私が助けました!
ですので私は貴方達とは戦いませんよ〜。
「まさかこんな場所で伝説を垣間見るとはな……」
「あぁ。一瞬しか見れなかったが、あの強さは次元が違いすぎる。たかだかゴブリン相手だが、瞬きの瞬間には全滅だったしな」
うん。確かにそうなんだけどさ。
そのたかだかゴブリンに苦戦してたのはどこの誰ですかね?
いや、別にどっちでも良いけどさ。なんていうか君たちが言える立場じゃなくないですか?
おっと、これ以上麒麟の姿で居たら色々めんどくさそうだし、そろそろ姿を変えるとしますか!
とりあえず、太陽の光を使ってと、後は森で姿を消すだけ!
よしっ! 完璧!
さーて、もうゴブリンは全滅させたし、後はこの冒険者達が女の子達に辿り着くのを見守るだけ。
あーあ、早く街に行ってみたいな〜。




