101話 『疑い』
ふむふむふむ。
いやー、変身したのは良いんだけどさ、どうしてモンスターになった瞬間に殺意を込めた目で私を見てくるかなぁ。
さっきまでは敵意はあったけどそんなに睨んでこなかったじゃん!
ってか、私が提案したけど、早くモンスターに変化しろって言ったのそっちだよね!?
ま、まぁ一旦落ち着こう。
とりあえずこのままだと殺される可能性があるし、人間に戻っておかないと。
あ、違う。間違えた。殺される可能性はないわ。
うんうん、私負けないもん。
ゴブリン如きに捕まった人間が束になっても私は負けないわ。
ま、でも一応初めて助けた人間だしね、穏便に、かつ平和的にこの嫌な関係を解決したいよね。
恩を売りたいってのもあるけど、なんとなく疑われたままってのも私的には癪なんだよね。
「それで、これで私がモンスターに変化出来るって信じてくれた?」
「そうね。確かに貴方にはそのスキルがあるってことが証明されたわ」
「ダメよ。こんな事では信じちゃダメ。もしこいつが元々モンスターで、人間に化けれるのだとしたら今の芸当も可能だもの。まだ信じるには値しないわ」
「けど、そもそも助けてくれたのよ? モンスターが人間を助けるなんてあり得るかしら?」
ほう。
なにやら状況が好転してきたかな?
一人は私をほぼほぼ信じてくれてるみたいだし、助けてもらったということも認識してるね。
って事は、こいつには恩を売れてるという事。
ただ、問題はもう一人の方だ。
奥で一言も喋らない人間はどうでも良いとして、高圧的で私を疑い続けているこいつには注意しないといけない。
話の内容を聞く限りだとまだ私がモンスターだと断定は出来てないっぽいのが救いだけど……。
「そうね。確かにモンスターが人間を助けるなんて有り得ない事だわ」
おっ? これはもしや!?
「ーーけど、こいつが知能のあるモンスターだったらあり得る行動になるのよ。何を考えて助けたのかは分からないけど、モンスターの考える事なんてろくでもない事よ。だから私はこいつをまだ疑うわ。それに、こいつは嘘をついているような気しかしないのよ」
はっ? はぁぁぁぁぁあ!?
なにこいつ! 凄いムカつくんだけど!!
いやまぁ確かに嘘をついているし、疑ってかかる事は悪くない事だけどさぁ、仮にこいつらの言葉通り知能のあるモンスターが本当に助けて、こんなに疑ってたら殺されちゃうよ?
だって、現に助けた知能のあるモンスターである私が殺したくなってるんだもん。
「どうしたら信じてくれる?」
「そうね。これから私たちの仲間の冒険者が助けに来てくれるわ。その人達が来てから話し合って、皆が信じれば私も信じてあげる」
「わかった。それで良い」
「へぇ。物分かりは良いのね。それじゃ、仲間が来るまでの間、私たちに話し掛けないのと、近づかないで頂戴」
ぐぬぬぬ。
なんでこいつは私をどんどんイラつかせるんだ!
自分が上だと思って話し掛けてくるのウザいんだよ! どう見たって私の方が立場上だろうが!
なんでいつでも殺せる立場の私がこんな事言われなくちゃいけないんだよ……。
はぁ、これも私を怖がってるようなもんだし、言い換えれば命乞いみたいものだから許すかぁ。
ってか! なんかこいつの言動とか凄いムカつくんだけど!
なんでわざわざもう一度疑わせようとしてくるの!?
一応了承した手前、殺すのはデメリットになるし、こいつらの仲間が死体を見たら絶対面倒くさいことになって、結果話し合いなんて出来なくなる未来しか見えないもん。
というか、殺さないでいてあげる私優しくね? ね?
うんうん。優しいよねー!
モンスターなのに人間殺さないんだもん!
よーし、自分をもっと褒めてイラつきをなくすぞー!
どうせ話しかける事はできないんだし、自己肯定感を高めないとね!
すいません。リアル忙しくて少し遅れました!




