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第五十話 『逃げ切れると思うなよぉぉ』

 暗闇が支配する空間。その中に希望のごとく灯る小さな明かり。そして明かりがのっている小さな机を挟んで俺と先生方は向かい合っていた。


 俺は今絶賛取り調べられ中です♪ って語尾に音符なんて付けてる場合じゃねえぇぇぇ! どうしてバスケ部を助けようとしただけなのにこうなったんだ!? 俺が今ここにいるのも黒魔術部の呪いなのだろうか。


 頭を抱える俺に相手高校のバスケ部で顧問をしているらしい先生が机を叩く。筋骨隆々という言葉が人に化けたら、こんな感じになるんだろうなという先生だった。


 「君。高校バスケ部で頂点を目指そうとしている者が、高校バスケを取り仕切る会長のことを知らないなんて言い訳が通ると思うのかい?」


 「だ・か・ら、何度も言ってますけど俺は旭高校のバスケ部じゃないんですってば!」


 「それについてはもう証拠が上がってるんだよ」


 先生は少しキザな仕草で一枚の紙を取り出すと、俺に差し出してくる。その紙は今日の練習試合に参加する旭高校バスケ部のメンバーリストだった。


 「ほら、ここを見てみろ」


 そう言って先生は紙の一点を指で指す。なんだ? バスケ部でもない俺が登録されてるはずないだろ……そう思いながらも一応確認のためメンバーリストを上から順に確認していく。リストの最後を見た俺は目をむいた。


 「は!? なんだこれ。特別アドバイザー『小島竜』。いやいや俺、こんなの知らないですってば」


 「私ももらった時に気になってそちらに確認した際、部長は本物だと言っていたぞ」


 あっのトサカ頭めぇぇ! まさかこうなることを見越して、メンバーリストに俺を載せるという布石を打っていやがったのか? ……意外に策士だな、あいつ。だがスポーツとは本来クリーンなものであるべきだ。そこに闘志や熱意を持ち込んだとしても、悪意を持ち込んではいけない。


 だから今回の事態で生じた罪は今ここで償わなければならない。ならば生徒の規範となるべき生徒会副会長として俺は今何ができる? そうだ、行動を起こすなら今だ! 


 「先生俺の他に共犯者がいます」


 目には目を、歯には歯を。トサカ頭め、寝たふりをしたまま逃げ切れると思うなよ。黒魔術部の呪いから逃げるために(たぬき)寝入りをして厄介ごとを俺に押し付けるつもりかは知らないが、そうは問屋がおろさない。俺は心の中でほくそ笑んだ。




 一時退室を許可された俺は寝たふりを続ける、うちのキャプテンを引きずってきた。こいつもなかなか強情だ。体育館の隅で寝ているトサカ頭に声をかけたら、試合が終わったと勘違いしたのか一旦は目を開けたのだが、俺が事情を話すとまた目を閉じやがった。なんてやつだ! 


 それから揺すったり、頬を少し叩いてみたり、部員に日頃の恨みだと軽く蹴られても一向に起きる気配がない。そのため仕方なく俺はトサカ頭を引きずりながら、わざと階段を通ってみたりしたのだが、うめき声をあげるだけで目を開けなかった。結局自分で歩かないトサカ頭を俺は取調室に連れてきた。


 「この子が君が言っていた共犯かね? だが寝ているじゃないか」


 「ちょっと待っててくださいね。今起こしますから」


 もう多少の体へのダメージはトサカ頭の場合、覚醒させるための手段にはならないことはわかっている。こういう時に有効なのは言葉だ。心が震えるような言葉をかけられた人間は思わず涙を流して、起き上がるに違いない。


 俺はトサカ頭の耳に口を近づけた。


「起きないと気絶した会長をお前の上にかぶせて、お前のファーストキスを奪わせるぞ」


 俺の言葉がトサカ頭の脳を刺戟する。トサカ頭は跳ね起きるように立ち上がった。見開かれる目からは涙を流し、体は震えて鳥肌が立っている。


 「貴様、なんて危ないことを! そんなことを考えつくとは、とても人の心を持っているとは思えん!」


 「は! 人に厄介ごとを押し付けておいて、人の心を持ってないだと。お前にだけは言われたくないな」


 睨み合う俺たちの耳に先生の咳払いの音が聞こえてきた。


 「さて共犯者の目も覚めたようだし、話の続きを聞きましょうか」


 こっからはトサカ頭を巻き込んだデスゲームの始まりだぜ! ひゃっは!

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