第四十四話『バスケ部復活作戦』
「おーい、生徒会の者だけど、バスケ部の部長っているか?」
俺はロリ魔術師に頼まれたバスケ部の件を片付けに来ていた。それにしてもなあ、運動部でもない俺に何ができるのだろうか。自分ができることを頭の中で箇条書きにしていると、一人の男子生徒が教室から出てきた。
「おう! 俺がバスケ部の部長だけど何か用か?」
大柄な偉丈夫がそこには立っていた。筋肉質な体つきは制服の上からでも分かる。パネルクイズをしたら、シルエットだけ出しても百人が百人スポーツマンと答えるであろう出で立ちだ。だけど……
「あんまり俺、人の髪型とかどうこう言うつもりはないんだけど、その東京タワーみたいにてっぺんが尖った髪型にしてるのはなんでか教えてくれるか? なんかお前UFOにさらわれる直前の地球人みたいになってるぞ」
「これは高校バスケの頂点を目指すぞっていう意気込みを表してる髪型なんだ! それはそうと生徒会のやつが俺になんか用か?」
「ああ、実は黒魔術部のことでちょっと……」
俺が黒魔術部の名前を出した途端、部長の顔が青ざめる。どうやらすでにトラウマになってるらしい。髪の毛の先端も少しへなっとなっていた。へえ、この髪型本人のテンションと相関してるんだ……
「まあ運悪く呪いを勝手にかけられたのには、本当に心から同情するよ。それで呪いをかけられてから、バスケ部が弱くなってしまったって聞いたんだけど……」
「ああ、そのことか。それは本当だよ。あの一件以来、なんだか試合とか本番で力が出せなくて……」
「自分たちの本来の力が出せなくなってから、何か対策とかはしたのか?」
俺が尋ねると、部長は何度も首を縦にふる。部長という役職についているだけあって、すでに自分でできることはしたらしい。
「それはもちろんだ。練習のメニューを変えたり、練習量を増やしてみたりと色々やってみたんだがどれも効果がなくてな……あんまり科学的じゃないことは信じないタイプだったんだけど、ここまで影響が出るとやっぱり黒、オエッ」
どうやら黒魔術部の名前を出すことも憚られるらしい。
「そうなのか。いや黒魔術部の方でもなんだか責任を感じてるみたいでな、なんとかならないかって相談されたんだよ」
「なんだろう……罪滅ぼしなのか」
どうやらすぐには解決策は出そうにない。一旦この場は引き上げることにしよう。
「ひとまず俺は帰るよ。何か協力できそうなことがあったら遠慮なく言ってくれ。あともし何かできそうだったら、こっちでやってもいいか?」
「ああ、それは構わない。バスケ部としても明後日の練習試合で結果を出さないと、そろそろ顧問の怒りの鉄拳が飛びそうなんだ。だからできることがあったら、なんでもやるからどうにかしてほしい」
「わかった、頑張ってみるよ」
俺は片手を軽くあげると、教室を出て行く。それにしても練習試合が明後日ねえ……。そんな短い間にバスケ部を元通り強くするとなると、何かしら大きな一手を打つ必要がある。自分の教室に戻りながら、俺はバスケ部再生のための案を考える。
明後日が練習試合なら、何かしらの準備ができるのは明日だけ。たった一日で何ができるっていうんだ? バスケ部内でできることは、すでに部長によってあらゆる手が打たれたはずだ。ならばまだ使われていない手で、かつ一日でバスケ部を激変させる手段……本当にそんなものがあるのか?
考えごとをしている時の俺は若干怖めな顔になる。そのせいかすれ違う生徒は俺を避けるように歩いていく。だがそんなことを気にしないやつもいた。
「竜。今度スーパーの反対側にクレープ屋さんができたんだって! 放課後行ってみようよ!」
「ああ、いいけど今日はちょっと無理かな。また今度……は!」
俺の体を電撃が貫いた。梓の言葉をヒントに一つの可能性が浮かび上がる。
これはいけるか、いけるのか? いや、これしかない!
「梓、ありがとう! お礼にそのクレープ今度奢ってやるよ」
「あ、うん。ありがとう……」
状況がうまく飲み込めていない梓を置いて、俺は作戦を実行するために走り出した。




