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第三十三話 『梓登場!』

 梓は空に浮かんでいた。先ほどピョン吉を丸焼きにした火の玉を放ったのであろう両肩についている大砲は、まだ煙がたなびいている。普通あんな強い攻撃をしたら肩が脱臼すると思うんだけどな……そこはゲームの世界ということだろうか。


 ただなんだ、あの梓の格好は? 全身は西洋風の純白の甲冑に覆われ、右手には魔法の杖、左手には大ぶりの剣を持っている。梓の剣を見た後だと、俺の剣が子供用のおもちゃに見えた。


 大砲、甲冑、魔法の杖、そして剣。この世界はファンタジーなのだろうか? いまいち方向性がつかめない。


 それにしてもゲームの世界では俺の邪魔をするやつは梓といい、女神といい、みんな空に浮いているなあ。ぜひ引きずり下ろしてあげたい!


 「竜、大丈夫だった? まさかこんな所にいるとは思わなかったよ。とにかく助かってよかった! レベル一の竜がレベル六十七の『ピョン吉』に敵うはずないからね!」


 何! ピョン吉がレベル六十七だと! どうして初心者である俺が、そんな強力なモンスターと遭遇するんだ? 疑問が溢れ出てきて、俺はピョン吉の敵討ちも忘れて梓に尋ねる。


 「俺だって好きでこんな所にいるんじゃない。気づいたら落下してて、ここに落っこちたんだ!」


 俺の主張に梓は頭大丈夫? みたいな目で見てくる。俺はいたって正常だよ!


 「普通初心者は始まりの街でチュートリアルを受けてから出発するんだけど……運ばれてる途中で落っこちちゃったのかな?」


 途中で落っこちる? そんなシステムあるの?


 「ごめん、もう少し分かりやすく言ってもらえないか?」


 「ああ、ごめんね。ゲームを始めるとプレイヤーは飛行機に詰め込まれて街まで運ばれるんだけど、結構作業が適当らしくて、街についてから人数を数えるとプレイヤーが足りないことがあるんだって。あはは」


 あはは、じゃない! こいつはあれか? ネットで買った商品を運んで来てくれる運送会社の人が「ごめーん、君の荷物どっかで落としちゃった。あはは」って言われて許すのだろうか。


 「おーい、女神。俺がこんなところにいる理由は梓が言った通りで合ってるのか?」


 『まあ、途中でいなくなるのはそういう場合が多いんだけどな。……君は私のせいで落ちたんだ』


 どうやら女神とはきちんと話し合う必要があるらしい。俺は一旦降ろしていた剣を女神に向けて再び構え直す。そんな攻撃態勢が整った俺に、女神が待ってくれと言わんばかりに手を前に突き出した。


 何だ、見苦しい! 言い訳をするなんて、恥ずかしくないのか!


 俺と梓が見守る中、女神はもじもじとしながら俺を落とした理由を話し出した。

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