表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/50

第二十八話 『お姉ちゃんリスペクト?』

 「そこのXに今出した答えを代入して……」


 「ああ、なるほど。そうやって考えればいいんだ。さっすが竜!」


 梓の部屋の真ん中に置かれているミニテーブル。それを挟むようにして俺と梓は座っていた。そして俺の膝の上には……


 「竜兄、あしょぼー。雪菜、この後お出かけするから、それまであしょんでよー」


 頬ずりするようにして甘えてくる雪菜ちゃんがいた。どうしよう、めっちゃ抱きしめたいし、遊びたい! 何この子。五歳にして男をたぶらかす術をすでに習得してるとは……恐るべし昼ドラの力!


 「ごめんね、雪菜ちゃん。梓ちょっとお勉強が苦手だから、俺が見てあげないといけないんだ」


 雪菜ちゃんはそんな俺の言葉にフルフルと首を横に振る。はは、このくらいの年の子にそんなこと言っても分からないよな。


 「あず姉はちょっとお勉強が苦手なんじゃないよ、とっても苦手なんだよ!」


 あらあらなんて正直なんでしょう、この子は。梓なんて開いた口が塞がってないです。あまりの衝撃に思わず、敬語になってしまった。


 「雪菜ちゃんは勉強得意なの?」


 「得意ではないけど……」


 梓をちらりと見る雪菜ちゃん。


 「身近に勉強できなくて苦労してる人がいると、将来こうなりたくないっていう思いが毎日更新されるの」


 子供心というのは時に残酷だ。嘘をつくことができない子なら、なおさら。雪菜ちゃんの言葉は梓の心にクリティカルヒットした。


 「ぐへっ」


 車に轢かれたカエルのような音が梓の口から漏れたかと思うと、テーブルに倒れこんだ。どうやら効果はバツグンだったらしい!


 「あず姉どーしたの?」


 自分がとどめを刺したことを知らない雪菜ちゃんは、俺の膝から降りると梓の方に歩いていく。そして手を伸ばすと、机に倒れこむ梓の頬をつっつく。


 そんな中、家にインターホンの音が鳴り響いた。


 「あ、雪菜ちゃん。さっき言ってたお出かけの相手が来たんじゃない?」


 俺の言葉に雪菜ちゃんが頷く。


 「たぶんユウタ君が迎えに来てくれたんだと思う」


 何?  ユウタ君だと? さてはデートだな。竜兄が雪菜ちゃんにふさわしいかどうか、見てやろう! 雪菜ちゃんと一緒に階段を降り、玄関に向かう。雪菜ちゃんが扉を開けると、そこには幼いながらも顔立ちにメリハリの効いた、将来イケメンになりそうな男の子が背筋を伸ばして立っていた。


 今から有望そうなのを押さえておくとは、雪菜ちゃんやり手だな……俺は二人の邪魔をしないように、壁際からそっと様子を伺う。


 「ユウタ君、ありがとう」


 「いえいえ。それでは雪菜ちゃん、参りましょう」


 五歳児どうしの会話としては、ややおかしい気もするが……まあ世の中いろんな人がいるからね。姫をエスコートする紳士みたいな関係なのかな? 玄関の扉が閉まってしまったので、俺は外が見える窓まで移動する。


 ちょうど雪菜ちゃんが自転車に乗るところだった。そしてユウタ君は


 ん? あいつ何してるんだ?


 雪菜ちゃんが自転車に乗るのを確認すると、自分は自転車から伸びるロープでできた輪っかに体を通す。そして……引っ張り始めた。


 なんでだろう、涙が出てきた。姫と紳士っていう物語の世界を思い浮かべてたのに、実際はどう見ても姫と馬だった。


 俺は涙で霞む視界で二人を見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ