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第二十六話 『妹』

 「ったく人が心配して来てみれば、週末課題を見てうめき声をあげただ?」


 ふざけてるのか? だが今度からはこの話を理由に、つまらなそうな用事は無視することができる。やったね! 俺は今梓の家のテーブルで三人で朝食を食べていた。


 「あはは、ごめんね。だからお詫びに朝ごはんご馳走してるじゃん」


 「たしかに材料はお前の家のものだけどな。作ったのは俺じゃん」


 目玉焼きを箸で切り分けながら、梓を睨みつける。早朝に呼ばれて朝食を作るとか、俺は家事代行サービスかよ!


  本当は思いつく限りの悪態をつきたかったが、俺は堪えた。理由は大きく分けて二つ。一つは電話の理由を週末課題のせいと言っているが、梓の目の下には金曜日まではなかったはずのクマがある。


 こいつも二年生になって、さすがにまずいと思って昨日必死に取り組んだのだろう。だけどやっぱり解けなくて、朝電話してきたと俺は考えている。


 さすがにそんな努力の跡を見せられちゃ、俺も鬼じゃないから強く言うことはできない。


 そして二つ目の理由は……


 俺は梓の隣に座って行儀よく食事をする幼女を見る。熊谷雪菜(くまたにゆきな)。梓の五歳になる妹だった。去年までは両親と一緒に過ごしていたらしいのだが、この春から日本の幼稚園に通うために帰ってきたらしい。


ショートの梓と違って、黒い艶のあるロングヘアを腰近くまで伸ばしている。梓もこんなんだけど、一応姉だ。雪菜ちゃんも自分の姉が小言を言われるのを見るのは嫌だろう。ましてやそれが朝食どきに行われようものなら、せっかくのご飯が美味しくなくなってしまう。


 要するに梓のメンツを立てた方がいいと思ったのが、二つ目の理由だった。


 雪菜ちゃんは俺と何回かしか面識はないはずなのだが、普通に話してくれる。だけど……


 「雪菜ちゃん、俺が梓を起こす時はいつもいなかったよね?」


 もしいたら、この前の「ヘンゼルとグレーテル作戦」の時なんて絶対に目が覚めていたはずだ。まさか梓と同じで、あの大音量の中でも寝ていたというのだろうか……。


 俺の質問に対して、雪菜ちゃんは自分の口を指す。どうやら口に食べ物が入ってるから、待てということらしい。


 かしこまりました! きちんと飲み込むと、雪菜ちゃんは口を開いた。


 「私はあず(ねえ)よりも早く起きて、先に幼稚園行ってる。お母さんが頼んでくれた人が迎えに来てくれるから」


 喋り方は断片的だったが、その言葉をヒントに俺は名案を思いついた。さっきまで不機嫌だったのに、急に顔がパァッと明るくなった俺を見て、梓は(いぶか)しむような視線を投げかけてくるが、そんなことは気にならない。


 これは、これは……梓を起こす役割を妹である雪菜ちゃんに譲る(押し付ける)チャンス!

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