第二十五話 『休日』
俺は机のライトの下で化学の問題集に取り組んでいた。そんな俺を橙赤色の朝日が照らす。
「ようやく昇ってきたか……」
窓から差し込んでくる光に目を細めながら、眩しさに耐えきれなくて目の前に手をかざす。今日は二年生が始まってから、初めての休日だった。
窓を開けると、入ってきた風が頬を撫でていく。とても気持ちのいい朝だ。
さあ、この土日は勉強するぞ! 二年生が始まってから、いろいろあったせいで一年生の時と比べると、確実に勉強時間が減っている。これは由々しき事態だ!
この土日を勉強に使うという目的を達成するために、まず自分を誘惑するものをしまっておこう。そう考えた俺は初めにスマホの電源を落とそうと、枕元にあったそれを手に取ろうとする。その刹那、着信音が俺のスマホから響く。
着信画面に切り替わるスマホ。
うへ、こんな朝早くにどこのどいつがかけてきやがったんだ? 絶対変なやつだろ。俺は頭の中で候補を絞る。
んんん……候補が多すぎて絞り込めない。
悩んでいても仕方がない。俺はスマホを取ると、画面を見る。そこに表示されている名前を見て、俺は腰を抜かしそうになった。
「あ、梓だと。なんでこんな朝早くに」
ってかこいつ休日にこんな早く起きられるなら、なんで平日は起きないんだよ! 俺への嫌がらせか? 俺はボタンを押して電話に出る。
「もしもし、梓か。どうした?」
「りゅ……竜助けて。っうぷっ……嫌だよ。 いやあぁぁぁ、っうぷっ」
そこで梓の電話は切れた。なんだなんだ? ついに頭がおかしくなったのか?
……あ、もともとだった。
だが梓は助けてと言っていたし、何やらあと少しで口から食べたものがリバースする前兆みたいな音も聞こえてきた。まさか、梓に何かあったのだろうか?
俺は部屋にあった上着を引っ掴むと、階段を駆け下り、家を飛び出した。
いつも歩く道をダッシュしたため、普段登校にかかる時間の半分で梓の家にたどり着く。チャイムを鳴らすのももどかしく、俺は玄関の扉を叩く。
「梓、梓、大丈夫か!」
俺の呼びかけに応えるように、扉がギイっとやや重めの音を鳴らして開いた。そんなわずか数秒も待てない俺は頭だけドアの隙間に突っ込んだ。
「あれ? 誰もいない」
確かに誰かがドアを開けたと思ったが、俺の目の前には誰もいない。おかしいな?
「竜兄?」
懐かしく、そして鈴を転がすような声が俺の耳に届く。俺は声のする方に目を向けた。そこには俺の膝上にようやく届くぐらいの女の子が、ドアを押さえたまま俺を見上げていた。




