第二十三話 『会長』
「そういえば、今日はどうして梓を呼んだんですか?」
呼ばれた理由は梓本人も気になっていたらしく、部活動の許可願いを読んでいた手を一旦休めて会長の方を見る。会長は少し恥ずかしそうに、うつむきながらも話し出した。
「私自身に自覚はないのだがな、どうやら私の判断基準や価値観は普通ではないらしいと昔から指摘されているんだ。今回の仕分けでも、私一人でやってしまったら、まずいかなと思ったんだ。そこで常識的な判断を持ち合わせていそうな君とぶっ飛んだ思考を持っている熊谷さんに頼んだんだ」
「ぶっ飛んだ思考?」
梓は一体誰のこと? みたいな感じで首をかしげている。お前だよ、お前!
それよりも会長自身が自分の価値観がずれていることを指摘されていたことが驚きだった。やっぱり昔からなのか……。
この際だ。今気になっていることを聞いてしまおう!
「ちなみに会長、どうして『ぬいぐるみ同好会』に活動許可を出したんですか?」
「可愛いからだ」
「…………」
「可愛いは正義だからだ」
二回も言わなくても聞こえてるし、二回ともほとんど同じ内容じゃないか! 呆れる俺の腕を梓がチョンチョンとつついてくる。どうやら耳を貸して欲しいらしい。梓が俺の耳に口を寄せる。
「竜的には今のファール?」
んん……確かに無茶苦茶だが、「可愛いは正義」は全員とは言わないが、一定数の人が認めている意見ではある。まだセーフだろう。
「生徒会の奴隷でしたっけ? あれはいつから続いてるんですか?」
奴隷とは、なかなかシビアな名前だ。俺が入学を考えていた時、高校紹介のパンフレットにはそんな記述は一切見られなかったし、生徒会紹介の写真に鎖で繋がれた悲しそうな生徒がいたような記憶もなかった。
これにはどのくらいの歴史があるのだろうか?
「ああ、それか。それは私が会長になってから、私が作った」
会長の回答を聞いた途端、俺と梓の会長への視線が暖かいものに変わる。
「な、なんだ君たちは。なんでそんな目で私を見るんだ」
あわあわと手を顔の前で振る会長に対して、俺たちは何も答えない。梓が前を向いたまま、俺に話しかけてくる。
「竜、ここまでの話を聞いてどう?」
考えるまでもない。即答だった。
「レッドカード、退場だ」
野球だったらアウトを通り越して、チェンジまでいくレベルのやばさだった。
俺は本当に生徒会でやっていけるのだろうか。




