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第二十一話 『提案』

 「是非生徒会に入ってくれないだろうか?」


 それが会長からの提案だった。俺が答えあぐねていると、俺と会長の間に梓が飛び込んできた。


 「会長さん、竜が生徒会に入るなら、私も入る!」


 おーい! 俺の意向を無視するな! 一言も入るなんて言ってないぞ、俺は。そんな俺に構うことなく、梓と会長の会話は進んで行く。


 「すまない、生徒会はペット禁止なんだ」


 「誰がペットよ!」


 梓は会長に向かってキャンキャン吠えている。本当だ。まずは人間になるところから始めた方がいいらしい。


 「いくらなんでも急すぎる。それに生徒会のメンバーってそんな勝手に決めていいものなのか?」


 「急なことは認めよう。それから生徒会のメンバーについてだが、うちの学校では会長職は選挙で選ばれるが、その他のメンバーは会長の推薦で決めることができるんだ」


 へえ、会長が選挙で決められてるから、その他の面々も先生とかの推薦で決められてるのかと思ってた。


 「ちなみに空いてる役職ってのはなんだんだ?」


 百万が一やるとしても、書記とか庶務のようなふわっとした名前で、ありとあらゆる雑務を押し付けられるのは勘弁してほしい。


 「今空いているのは副会長だ。何度か募集をかけたのだが、なかなか名乗りをあげる者がいなくてね。困っていたんだ。君は勉強の成績も安定していて、部活動もやっていない。だからぴったりだと思ったんだ。どうだ? それに」


 一旦会長はそこで言葉を切る。十分にためを作ると、言葉を続けた。


 「君が狙っている大学への推薦も生徒会に入れば、より有利になると思うのだがいかがかな?」


 ほとんど断ろうと思っていたのに、「大学への推薦」という言葉に俺の決意は一気に揺れ出す。   

 

 生徒会に入ったら勉強の時間が取れなくなるんじゃないか?


 「大丈夫だ。きちんと終了時刻は決まっているし、毎日集まるというわけじゃない」


 自習ブースを確保することだって難しくなる。


 「生徒会室を使わない日は自習室として使ってもらって構わない」


 それに本当に生徒会に入ったことで、大学への推薦をもらえるという保証はない。


 「だが確率はかなり高まると思うぞ」


 っておおい!


 「どんだけ俺の心を読むんですか!」


 やっぱりすごいな、この人。


 「君の表情が分かりやすすぎるんだ。コロコロと変わって実に面白い」


 会長は口に手を当てて、うふふと笑う。笑い方まで上品だった。日頃よく話す梓や白百合先生にはない、この可憐さ!


 俺はこのレアな女の子の成分に少しときめいてしまったせいか、勢いで返事をしてしまった。


 「分かりました、副会長職やらせてください!」


 「男に二言は無いな?」


 「もちろんです!」


 これから女の子成分百パーセントの人と過ごせると思うと、心が躍った。あ、そういえば他の生徒会の役職って何があるんだろう?


 「会長、いきなり質問なんですが、いいですか?」


 「別に同級生なんだから敬語は外してもらって構わないのだが、まあいいか。どうぞ」


 「俺の他にはどのような役職があるのでしょうか?」


 会長は少し考える様子を見せる。顎に指を当て、考えを整理する姿も美しかった。やがて考えがまとまったらしく、言葉を紡ぎ始めた。


 「まず会長の私に、副会長が君、書記一名、会計一名、庶務一名……あと奴隷が二名だ」


 言葉の最後に俺が初めて聞く役職があった。今この人奴隷って言った? 奴隷って、あの奴隷?


 「あの会長、今奴隷って……」


 先ほどまで爽やかスマイルだった夏樹も、顔を青くしている。梓は寒中水泳の後みたいに、歯をガチガチと鳴らしていた。


 「呼び方が誤解を招くかもしれないが、校則違反などを繰り返す生徒を更生させるために設定されている役職というだけだ。そこに今二名いるというだけだよ。別に生徒会が彼らにひどいことをしているわけじゃない。仕事内容としては庶務とほとんど同じだ」


 え! 庶務って奴隷と同じなの? 悪いことしていないのに、なんでそんな仕打ちを受けないといけないんだ! 


 ひとまず空いていたのが庶務じゃなくてよかった。だがまずい。どうやら旭高校の生徒会は、俺が想像していた普通の生徒会とはかけ離れているらしい。逃げ出さなくては! 


 「あの会長、やっぱり前言撤回……」


 やや尻込みする俺を、会長は涼しげな目で見つめてくる。そこには雪の女王が立っていた。


 「男に二言は……」


 「ありません!」


 俺は敬礼をしながら、合言葉のように叫ぶ。この日わたくし、小島竜は生徒会に入りました。


 誰か助けてくれぇぇぇ!


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