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第十五話 『メロンパン』

 「おはよう、竜。十分眠るだけで、そんなに変わるの?」


 目が覚めた俺に夏樹が尋ねてくる。その手にはお弁当と一緒にシャンくんが握られていた。そのぬいぐるみ、カバンとかに置いてこいよ。そうじゃないとケチャップとか飛んだ日には大惨事だぞ! 


 あっという間に狩りを終えたパンダの出来上がりだ。


 「ああ、十分だけでも結構頭がすっきりするんだ。うちの学校も昼寝の時間を取り入れてくれないかな」


 俺はぼやきながら、休み時間に購買で買っておいた弁当を取り出す。その俺の横では梓が菓子パンを持ってきていた。チャッピーも一緒だ。ぬいぐるみが二匹もいるせいで、俺たち三人の食事場所だけ幼稚園みたいになっていた。


 「いっただきまーす!」


 梓は元気な声とともにメロンパンにかぶりつく。カリッという音をさせて、メロンパンは梓の口に吸い込まれていく。満面の笑みだった。


 本当にこいつ、なんでも美味しそうに食べるよな。美味しそうに食べる人との食事は楽しいというが、俺もその一人のようだった。


 それにしても……こいつは寝てる時と食べてる時だけは静かだな。


 俺がじっと見ていたからだろうか。梓はメロンパンを口にくわえたまま、首をひねった。


 「どうしたの?」


 「いや、うちの学校のメロンパンは人気なのに、よく買えたなと思って」


 「ふっふっふ」


 旭高校のパンは近くのパン屋さんが焼いているらしく、それを昼に持ってきてくれるため焼きたてが食べられる。焼きたてが食べられるだけでもありがたいことなのに、俺たち高校生の財布のことを考えてくれているのか、かなり値段を抑えてくれているのだ。人気が出ない方がおかしい。


 そんな人気のパンの中でもメロンパンはダントツの人気を誇っていた。それゆえに今くわえているのに加えて、もう一個メロンパンをゲットしている梓に驚いての質問だった。


 梓は誇らしげに胸を反らす。頭に行くはずだった栄養素を奪って成長した胸が盛大に主張していた。


 「この小さい身長のおかげで、人ごみをうまくすり抜けられる! たまにはいいことあるんだよ」


 なるほど、そういうことなのか。うちの学校の通学形式は大き三つ。徒歩、自転車、電車と分かれている。


 そのうち電車通学をしているやつで、身長があまり高くないクラスメイトが、小さいと朝の満員電車に埋もれて苦しくて大変と言っていたが、どうやら梓のようなメリットもあるらしい。是非今度その手の話題になった時は教えてあげよう。

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