俺の名は
「葡萄とか檸檬とか林檎とか
漢字で書けました?それと同じですよ」
読めるけど書けない問題にカレンはそう答えた。
「いや、その・・・自分の名前も書けないんだけど・・・」
「え、そんなレベルなんですか?よくヤンキー校に入れましたね」
日本にいた時は書けたの!
自分の名前ぐらい書けました!
ヤンキー校にも行ってません!
「仕方ないですね、教えて、あ、げ、るっ」
そう言って金髪ビッチは俺からペンと紙を取り上げた。
セリフについては特にツッコむ気もない。
「こっちの世界では苗字はいらないので『ケント』でいいですよ」
優しそうな顔でカレンはペンを走らせた。
「はい、これがあなたの な、ま、えっ」
首を傾げ気味にウィンクしながら
カレンは紙を差し出した。
W
X
Y
『W』の文字に黒い丸を二つ書き足したクオリティだった。
くしゃくしゃに丸め、俺が床に叩き付けた紙を
カレンは魔法で宙に浮かせ、手をかざした。
紙が平らに戻り、アホ魔術師の書いた落書きが消え
新たに文字が浮かび上がった。
『ケント』
こちらの世界の文字でそう書かれていた。
最初から素直にそう書けないものか
などと考えつつも
俺は礼を言って、その紙をたたんで鎧の中にしまった。
紙の裏側に
『童貞』
『エロガキ』
『元ヤン』
『オッパイ星人』
と書かれていたのに気づいたのは、後になってからだった。
次話予告
たとえ歩みが遅くとも、たとえその歩幅が小さくとも
一歩踏み出せば一歩分ゴールに近づく
だが、時として寄り道も必要だ
それに気づいた時、少年はまた一歩大人へと近づくのであった
次回「悲しいサガってなんだよ!」
本文の内容は全く進歩しませんけど・・・