ひみつなポケット
またまた、嘘つき魔術師の口車に乗せられ
意気揚々と城内を闊歩する俺、ではあるが・・・
姫との結婚は悪くない。
うん、悪くないはずだ!
城の玄関口に着いた。
部屋から数分歩いただけだ。
こんなに近かったのか・・・やはり、あのビッチ魔女は信用できんな。
だが、姫との結婚は悪くない。
お!
そのリズ姫がいるじゃないか。
王様をはじめその他有象無象も一緒だ。
どうやら俺たちを見送りに来てるらしい。
「別に、アンタを見送りに来たんじゃないんだからね!」
ぷいっとそっぽを向く姫。
今度はツンデレキャラにチェンジしたようだ・・・
「うむうむ、魔王討伐は頼んだぞよ、勇者ケントよ!」
と言いながらカレンの胸をガン見の王・・・
「えー、勇者様には旅に必要なアイテムの数々をご用意いたしました」
手帳を読む給仕・・・
アンタの職業は何なの?
見送りの一団の横には、宝箱や袋が山積みに・・・
おい・・・くれるのはありがたいが、これをどうやって持って行けと?
トラックか何かで運ぶ量だぞ・・・
「えー、馬車は、この次の村アホロートルで手に入れるクエストがございます」
七三給仕がまた手帳を読んだ。
クエストってなんだよ!
だから、その手帳何?
「まぁまぁ、ケントさん。ここはファンタジーの世界ですから」
でも、どうすんだよ?この荷物・・・
「大丈夫です。こんなこともあろうかと、不思議な道具を用意してありますよ」
マジック・アイテム?
「たらららったら~!」
また例のBGMと共に、カレンは半円型のアイテムを手に掲げた。
「四次元ポ・・・」
バシッ!
俺はカレンの帽子のつばを思いっきりひっぱたいた。
「痛っ!ちょっと、なにするんですか!ケントさん!」
「バカ野郎!それ以上言わせないぞ!」
「なにをですか?」
「俺だって、金曜夜の国民的アニメは子供の頃見ていたんだ。
パクるにしても『まんま』はダメだろう!『まんま』は・・・」
「パクるって、なんのことですか?
なにがいけないんですか?この四次元ポ・・・」
バシッ!
「もう、ケントさん!痛いですよ!」
帽子を叩くだけありがたいと思え。
グーで殴るぞ。白いまん丸のグーで・・・
「そのアイテムの使い道はだいたい想像できるから、名前を出さずに使えよ」
「ムリですよ。この不思議な道具は名前を呼ぶことで効力が発動するんですから
なにがいけないんですか?この四次元ポ・・・」
俺はパクリ美少女の口を手で塞いだ。
鎧の手ではあるが、カレンの唇の柔らかさが伝わってくる・・・
「ん、もう!女子の唇をそんな無粋なもので塞がないでください」
カレンは俺の手を払いのけた後、不敵に笑った。
「塞ぐのなら、手じゃなくて・・・こ、こ、でしょ・・・」
美少女魔術師は自分の赤い唇に人差し指を当ててから、その指を俺の口へと付けた。
うっ・・・関節キッス?
手袋に少しだけ付いた赤い口紅が、俺の唇に・・・
ああ、こんな事で赤面してしまう経験値の無さが愛おしい・・・
赤面硬直する俺の隙をついて、カレンがさらっと言ってしまう。
「でも、なにがいけないんですかね?
この『四次元ポシェット』って名前・・・」
ぽ、ぽ、ポシェットだと?
紛らわしいわー!
微妙すぎるパクリ方すなーっ!
で、ギリセーフ?な名前の不思議な道具を俺の鎧の腹辺りに張り付けるカレン。
「こうやって、こういうかさばる物を中に入れるんです」
カレンがポケットならぬポシェットの口を広げ餞別の袋を近付けた。
スッと口の中に姿を消す袋。
おおっ!すごいな、これ
「建物とかは無理ですけど、結構大きいものまで入りますよ」
次々とポシェットの中に吸い込まれてゆくアイテムたち・・・
「取り出すときはどうすんだ?」
「ああ、簡単ですよ。普通にこうやって・・・」
俺の下腹部に手を入れるカレン。
「たらららったら~!やくそう!」
ポシェットからなんか出た。
「こうやって名前を呼びながら取り出すんです」
「その、『たらららったら~!』てのは必要なのか?あと、その口調も・・・」
「まぁ、ノリというか、お約束というか・・・
ポシェットの中に手を入れて
取り出したいものを思い浮かべればいいんですけどね」
名前もアンセムも必要ねぇじゃん!
「あ、いくら想像しても入れてないものは出てきませんよ
例えば『すぐにやらせてくれるカワイイ子』とか
『超美人のエッチなお姉さん』とか妄想しても無駄ですからね」
するか!アホ天使!
って、あれ?
ポシェットの中へ無造作に突っ込んだ手が、何か掴んだ・・・
「なんんだ?これ・・・」
思わずポシェットから出した俺の手には
白い小さな布切れが・・・
あ・・・
これって・・・
「ケ、ケ、ケ、ケントさん!なに取り出してるんですか!」
あ、いや、これは、その・・・
「それ、私のパンティーじゃないですか!!!」
別に想像したわけじゃないんだが・・・
「しかも、それ私のお気にの『キ〇ィちゃんパンツ』ですよ!」
なんで、口無しリボンの猫キャラがプリントされたパンツ持ってんだよ!
「なに私のパンツを妄想してんですか!
こんな変態に触られたパンツなんか、もう履けないですよぉ~」
いや、直に触ってないし、妄想だってしてない・・・はず・・・
あれ?
周りのみんながドン引きしてる?
「だ、大体、何でパンツが入ってるんだよ!パンツなんか入れてる方が悪い・・・」
って、あれ?
「さすがじゃのう、聞きしに勝る変態ぶりじゃ」
「さすがでございます、変態勇者様」
「うむ、流石だ。ど変態勇者殿」
「婆や、ああゆうのを『変態さん』と呼ぶのですか?」
「はい、姫様。あれこそ『伝説の変態』でございます」
え~ん!え~ん!みんながぼくのことを『変態』って呼ぶよ~。
助けてよ!青い猫ロボえも~ん!
次話予告
人生は、山あり谷あり。
意外な落とし穴が口を開けている事も・・・
サイコロを転がし、振り出しに戻る事だってあるさ。
『穴』も『最初』も気持ちの問題。
気持ち良ければすべて良し。
始め良ければ終わり良し。
終わり良ければ全て良し。
物語は終焉に向け大きな展開を見せる!
次回「遂に、魔王が!」
染みついて離れない下ネタ臭を落とす『ひみつ道具』ありませんかね?
あと、パクリ癖を直す方法も・・・




