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Revenge  作者: ひまじん
第1章 痛みに呻く
9/17

再戦

遅くなってしまい申し訳ございません。

 瞬きをすると、そこはもう別の世界。

 今回は前のような見渡す限り一面の砂漠の世界ではない。

 相変わらず地面は砂ばかりだが、枯れた木々ばかりのジャングルのような場所だ。

 夜のはずだが、異様なほど明るい月光が世界を照らしている。

 だが今はそんなこと考えている場合ではない、楓さん達を見つけないといけない。

 とりあえず自分の周りを見渡し、楓さん達がいないか確認する。

 すると前から女性の声が聞こえた。

 この声は楓さんだ。

 楓さんがここへ来るのにそんな時間はかからなかったから、きっと近くに仲間もいるだろう。


「どうして・・」


 近寄ってきた楓さんが何とも言えない表情で聞いてくる。

 俺はこの人にもうあんな顔をしてほしくないんだ。

 これが俺の戦く理由。


「俺は、決着をつけに来ました」


 俺は痛みと向き合うんだ。

 それが俺の決意であり、俺の能力。




 楓さんに連れられてきたのは、少しだけ緑の残る砂漠のような場所。だが、緑があるのはほんの少しだけで、ほとんど砂と枯れた草木ばかりだ。

 その真ん中で、俺と男はにらみ合っていた。


「私と一対一で勝負とは、いい度胸してるじゃないか」


「だろ?だが、おまえを倒したら次は楓さんだ。俺はお前と楓さんを倒して、この心に決着をつけるんだ」


 俺が提案したのはこの男と一対一で戦うこと。

 負けたら俺はアイツにつく。だが、俺が勝ったらおとなしく死んでもらう。

 と言ってもこの世界では死なないらしい。

 死ぬときに能力が死を肩代わりしてくれるとかなんとか。

 ちなみに楓さんとも同じ条件で戦う。

 これが俺なりに考えた決着のつけ方だ。


「その前に名前を聞かせてくれ。私は天霧(あまぎり)だ」


「・・村雨だ」


 名前を言わず名字だけを伝え合うと、俺は不格好にも戦う姿勢をとる。

 両者ともその目を鋭くして睨み合う。


「喧嘩なんてしたことないが、先手必勝ってな!」


 俺が走り出すことで開戦する。

 それと同時に天霧の周りに影が出てくる。


「おらぁ!!」


 俺は声をあげながら、目の前に現れた影を蹴散らしていく。

 影には触れた感触がない。触れば水のように消えていく。だが、影からの攻撃は受けるという謎使用だ。

 触れればすぐ消えるため、そんな苦じゃないだろうと思うかもしれない。

 影自体が強いのではない、数がおかしいのだ。

 今この瞬間にも30から50体はいる。

 だが、泣き言を言っている場合ではない。


「っと!あぶねぇ!」


 影たちの近くへ行くと、一気に攻撃を仕掛けてくる。

 どうやって攻めようかと考えていると、目の前からパンチが来る。俺は、それを後ろへ下がることで回避する。

 追撃を警戒していつでも避けられるよう足に力を込める。

 何か動こうとする者がいたら左へ跳んでサイドから攻撃を仕掛けようと思っていたのだが、

 そこであることに気づいた。

 天霧の前方を覆うように影たちがいるのだが、



 その左端の影の足先がなかった。



 あいつの能力の発動条件が完璧じゃなかったのか?いや、能力は発動条件を完ぺきに満たしてないと発動しないと楓さんが言っていたはず。

 ならアイツの能力は「代償系能力」なのか?だとしたらアイツの代償は何だ。

 そろそろ頭が痛くなってきた。

 影たちに体当たりをしながら走る。

 俺に当たった影は液体のように溶けていき、地面に消える。

 まっすぐ自分のもとへと来る俺を驚いた表情で見る天霧

 しかし、あと少しというところで影に足を蹴られる。


「っち!くそ!」


 バランスをくずして、前のめりに倒れそうになるのを右肩から入って前転するように転がることで体勢を立て直す。

 転がった先で影が蹴ろうとしているのが見えたので、右足が地面についた瞬間に力を込めて左へ跳ぶ。

 まだしっかりバランスをとれていないが、とんだ勢いのまま天霧の横に回るように走る。

 だが、それを阻むように影が現れる。

 下手に攻めて返り討ちにされても嫌なので、後ろへさがる。


「なんだ、数が多いだけで大した事ねぇな」


「数だけが取り柄なんでね」


 挑発をしながら、石を一つ拾い上げる。

 今思いついたのだが、触れればすぐ消えるのだ。ならば、と俺は拾い上げた石を天霧に向け、思いっきり投げる

 その石に当たった影たちは地面に消えていった。

 天霧にはよけられたが、予想通りだな。


「お前の能力の弱点はこれだな!」


 天霧はただこちらを眺める。

 俺は頰を釣り上げながら嬉々として石を投げ続ける。


「そして、お前の能力は「範囲内に影を出す能力」だ」


 俺は石を投げるのを止めるとニヤリと笑う。


「範囲はさしずめ、そこまでだろう?発動条件は良く分からないけどな」


 自分の少し手前を指差して範囲を示し、俺は更に顔を歪めながらながら語る。


「どうだ?自分の手の内がバレた気分は!こっち超愉快だぞ、ハハハハハ!」


 やり返してやった。

 心が汚れていると言われようが構わない。何せ俺の能力は「復讐」だ。

 どう考えても綺麗な能力ではないだろう。


「馬鹿だなぁ」


 そう言って天霧はこちらに体を向ける。

 何か嫌な予感がする。

 俺は後ろへ下がると、後ろから重い一撃を食らう。

 何でだ!?、予想範囲が間違ってたのか!?

 裏拳で後ろの影を一掃しようとして、驚愕する。


「なっ!?」


 俺は無数の影に囲まれていた。


「アッハハハハ!まんまと掛かったな、私の作戦に!」


 作戦だと?


「私の範囲は変えることができるんだ。いや〜やっぱり単純なバカを相手にするのは楽しいね、ハハハハ!」


 タイチ眉間にしわを寄せながら、あれは罠だったのか、という怒りよりも、どう返してやろうか、ということを考えていた。


「どんな気分か教えてやろうか?いや、もう痛いほど伝わっているか」


 知らずに二人は復讐という泥沼にはまっていく。

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