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Revenge  作者: ひまじん
第2章 策略
15/17

宣戦布告

遅くなって申し訳ございませんでした。

 友達の友達は友達とは言わない。だが、友達になることはできる。

 しかし、友達を作る事はなかなかに難しいことだと思う。だからこそ独りぼっちと言う現象ができて、さらにはボッチなどと言う言葉が生まれたのだ。

 少し話がずれたが、友達を作るということは難しいということを伝えたかったのだ。

 特に相手が話をただ聞くだけの「受け」の姿勢を崩さない場合、相手のどこまで踏み込んでよいのかこっちから探り探りで質問しなければならない。

 さて、こんな前置きがあるってことは・・だいたい予想付くだろう。

 そう、俺は今非常に困っている。隣にいる高校生とは思えないほどの巨躯と筋肉の持ち主「時雨優斗しぐれゆうと」との会話に。

 時雨とはルカの友達の友達と言う関係だ。・・いや、まさか「関わることはないだろう」とか言った次の日に、ルカから「あんたたち・・なんかいい友達になる気がする」とか言って紹介されるとは思わなかった。

 そして、そんな彼と俺は、休日の昼間にコンビニでばったり出会い、帰り道が途中まで同じとのことなので一緒に帰っていると言う状況だ。

 いや、マジで何話せばいいんだよ。「体大きいね」なんて言ったら片手でひねり潰されそうだし・・ハッ!、筋肉をほめればとりあえずこの空気は少し和らぐんじゃなかろうか。よし、それでいこう。


「すごい筋肉だね。何かやってるの?」


 あれ?「体大きいね」と大して言ってる事変わんなくね?俺捻り潰されないよね。

 俺がいきなり話し出したせいか、少しびっくりした様子の時雨。


「!・・ありがとう。僕、あるゲームのキャラクターが好きで、そうなりたいなって思って、毎日筋トレとかしてるんだ」


 ゲームのキャラクターにあこがれたって理由でここまでムキムキになれるもんなのか?

俺もゲームは好きでキャラクターに憧れた事はあったが、目指した事はなかった。


「へー、どんなキャラクター?」


 キャラクターを目指してムキムキになったなら、そのキャラクターは間違いなくムキムキなはず。


「なんて言うか、正義感の強いキャラクターで、すごくカッコいいんだ」


 それを語る時雨の瞳は、ヒーローに憧れる少年のようだった。


「なれるさ、きっとな」


 素直に心に思ったことを言葉にする。

 俺は頬をつり上げ時雨の顔を見上げると、時雨は目をぱちくりして、少しだけ微笑んだ。


「うん」


 なぜ俺は、この笑顔を見て「こいつって笑うんだな」と思ったのだろう。笑うなんて誰でもできるはずなのに。

 そんなことを思ったが、時雨との会話を続けているうちに忘れてしまうのだった。




 時雨とはもうすでに分かれて、俺は今、リビングでアカリがゲームをしているのを、コンビニで買ってきたお菓子を食べながら眺めていた。

 時雨との会話は基本的にゲームの話ばかりだった。個人的にはアクションやFPSが好きなのだが、時雨は楽しめれば何でもいいみたいだった。


「お兄ちゃん、やんない?」


 アカリはこっちを向いてコントローラーをかざしている。

 俺は何も言わずに手を洗い、濡らしたフキンを持ってきて、そのコントローラーを受け取りキャラクターを選択する。

 アカリもキャラクターを選択し、3!2!と謎テンションのカウントが始まる。

 今この空間を支配しているこの空気は殺気と言えばいいだろうか。とてつもなく重たい空気がアカリから放たれ、リビング中に蔓延していた。

 だが、俺はそんな空気ものともしない。なぜかって?そんなの1分もしないうちに分かる。

 GO!と始まりの合図が聞こえると同時に俺は後ろへ下がった。速攻で肉薄してきたアカリのキャラクターの攻撃は空を切る。

 俺は攻撃を仕掛けると、かわされてコンボ技を食らう。

 それを見た俺はそっとコントローラを床に置いて、残りのお菓子を食べ始めた。

 するとすぐにKO!と言う声が響き渡り、アカリの選択した筋肉質なキャラクターが「私に敵う者などいない」などと言ってラウンド2を始めるカウントが始まる。

 丁寧に手を拭いた俺は、コントローラーを持ち上げ死んだ目で画面の睨む。

 2度目の始まりの合図が鳴り響くと同時、俺は勢いよく飛び出しボディーブローを食らわせようとする。

 しかし、俺の攻撃はいとも簡単に避けられ、カウンター食らうと「バッショ!」と何言ってるかよくわからない技名を叫ぶと共に、俺のキャラクターが吹き飛ばされる。

 俺はどうやったら勝てるだろうかと思考を巡らせた結果、そっとコントローラーを置いた。


「お兄ちゃん!そうやって諦めないでよ!」


「むしろお前に勝てる奴がいたら見てみてぇんだけど」


 むー、と頬を膨らせるアカリに死んだ目でかえす。

 こいつはこのゲームで世界ランキング3位を取っている。

 そんな奴に格ゲービギナープレイヤーの俺がどうやって勝てと言うのか。


「じゃあ別のゲームしよ!何でもいいから!」


 何でこいつこんな必死なんだ?暇なのか?


「そんなことより勉強したらどうだ?お前テスト近いだろ」


「そんなこと言ったらお兄ちゃんだって、テストそろそろじゃん」


 妹になかなか痛いところを突かれた俺は、何も言わずに勝てそうなゲームを選ぶ。

 負けてばっかりじゃいられない。少しはコイツにも痛い目を見てもらおうか。


「えへへー」


 アカリに背を向けゲームカセットを物色していると後ろから楽しそうなアカリの声が聞こえる。


「楽しそうだな」


「うん!とっても楽しいよ」


 クソ、コイツ何でも勝てる気でいやがんのか。良いだろう。俺が一番得意なジャンルで勝負してやる。よし、これとか良いんじゃなかろうか。

 アカリは幸せそうな顔で、ただ兄の背中を眺める。

 兄にとってこの時間はただのゲームの時間だが、アカリにとってこの時間は何にも変えがたい、至福の時だ。誰にも奪われたくない。もしも兄を独り占め出来たら・・・そんな願いを叶えてくれる魔法の時間なのだから。




 もはややる気をなくした4時間目を寝て過ごし、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。


「タイチ—、飯食おうぜー」


 リュウジが弁当を持って、俺の前の席の椅子に座る。

 俺も弁当を取り出し中身を確認しようとする。

 今日はアカリが作りたいと言ったので、希望通りアカリに弁当を作ってもらったから、何が入っているか分からない。

 でも良いよな、こういう感じ。誰かに作ってもらって、何が入ってるかワクワクしながら開ける楽しみみたいなのって。

 そう思った矢先、弁当箱を開けて俺とリュウジは唖然とした。

 鮮やかに彩られた目に優しい弁当は、器用に海苔で星型やら丸やらが所狭しとあった。だが、何よりも目を引くのは、筋肉隆々の警官のようなキャラクター。様々な形はそのキャラクターを飾るように点在していた。

 俺の恥ずかしさも知らずどや顔で弁当箱のど真ん中で決めポーズをとっているコイツに何となく腹立ってきた。


「たいち君、すごいね・・いろいろ」


 何とも言えない顔で、サエと神楽が弁当を持って俺の弁当箱の中を覗き込んでいる。

 いや、神楽は相変わらず無表情だから何とも言えないんだけど。


「そのだな、今日はアカリが作ってくれてだな・・」


 そこまで言って失言だったことに気づいた。


「アカリちゃんが作ったのか!?」


 やっぱり食いついてきやがった!

 リュウジは俺の妹のことが大好きなのだ。一方アカリの方は本気で嫌がっているのだが。


「やめろ!お前だけには触れさせねぇ」


「何だと!このシスコンが!」


 何アホ抜かしてんだコイツ。俺はシスコンじゃねよ。

 俺は触れさせまいとリュウジの手の届かない様に後ろへ引く。そんな俺に対し、変な構えで応戦するリュウジ。


「タイチ・・シスコン?ロリコン?」


「シスコンでもないし!ロリコンでもないわ!百歩譲って、いや千歩ぐらい譲ってシスコンは認めてやっても、ロリコンだけはねぇ!」


 そんな俺達を見て、サエがくすくすと笑いながら弁当を広げる。

 そんなサエの弁当の中身は、目にも体にも良さそうな感じだ。


「サエ、それ自分で作ったのか?」


 弁当の中身が目に入った俺は、リュウジをけん制しながらサエに尋ねる。


「ううん。お姉ちゃんが・・あ、そうだ。そう言えば、お姉ちゃんが「部活決まってないなら料理部入らない?」って誘ってたよ」


 サエには姉がいて、名前は暁沙耶(あかつきさや)。彼女を一言で表すと、「エロス」だろうか。抜群のプロポーションの持ち主で、男どもの視線をくぎ付けにする。

 サエもなかなかいい体してるんだけどな。・・・って、俺は変態かよ・・


「たいち君まだ部活入ってないよね?」


「ああ」


 部活か。早く家に帰りたいから入らない、って理由でまだどの部にも入っていなかったが、この学校部活絶対入らないといけないからな。いつか決めなきゃとは思っていいたが、料理部か・・サエも料理部だからボッチなんてことにはならないが、いかんせん女子ばっかだからなぁ。


「まぁ、考えとくよ」

 

 そう言えば、神楽は部活決まったのだろうか。と、ふと気になったので、一人黙々と箸を進めていた神楽に聞くと、「入ってない」とだけ言ってまた弁当を始めた。

 ちなみにリュウジは陸上部だ。


「部活・・か」


 俺はそう呟くと、いつの間にか椅子に座って弁当を食べているリュウジの向かいに座り、アカリの作ってくれた弁当にやっと手を付けた。

 アカリの作ったキャラ弁は上手かったし、美味かった・・なんてな。

 

 


 午後8時。約束の時間が訪れたと同時に、静寂を裂くように携帯から音楽が鳴り響く。

 俺はベッドの上で音楽を鳴らし続ける携帯を拾い上げ電話に出た。


「はいはーい、タイチですよー」


 この時間に電話すると楓さんが言っていたので、相手が誰かは分かっていた。


「少し対応が雑じゃない?まぁ、良いけれど」


 通話相手の名前を確認していなかったが、案の定楓さんの声が聞こえる。

 相手が分かっていたとはいえ、楓さんの声が聞こえて少し安心した。


「じゃあ」


 俺は眉間にしわを寄せて覚悟を決める。


「「反転」」


 楓さんと声が重なり、それと同時に目の前の景色が変わる。

 かなり強い日差しに生ぬるい風が肌をなでる。

 画面が真っ黒な形態をポケットにしまい空を見ると、そのあまりに強い日差しに目を細める。

 俺たちは、毎日この時間にパトロールというか、仕事というか、天霧のような敵を探すためにここへ来ていた。


「大地君、行くわよ。奏さん達はあっちにいるわ」


「はい。・・にしても不便ですよね」


 不便とは、この移動のことだ。

 俺は能力でこのチームに入ったわけだが、本来はしっかりした契約があるらしい。だが、契約できるのは契約主含めて三人までで、俺だけ仲間外れになった。

 だが、契約していなくてもほぼ同時の時間に反転するか、相手に触れながら反転すると一緒の世界へ行ける。


「仕方ないわ。我慢して頂戴」


 一緒の世界へ行ける方法があるだけでもいい方なのかもな。


「今日も戦わずに済めばいいですね」


俺は本来の目的を全否定するような事を抜かして、奏さん達と合流しに向かった。

 今回も結局1,2時間歩いただけで終わった。




 俺は、神楽と登校中に出会ったのでいろいろ話をしていた。考査が近いのでその話題で話を続けているといつしか校門前へ来ていた。

 昇降口を過ぎて靴をしまうために下駄箱を開ける。するとそこに一通の手紙があった。

 何だ?ラブレターか?いやぁ~てれる・・

 そんなアホみたいなことを思いながらまじまじと手紙を見て気づく。

 中身を見たわけでもない。見た目がラブレターっぽくないとかいうわけでもない。ただ、直感で分かった。これはラブレターではない、ということに。

 俺は嫌な予感を感じながら、その手紙をポケットに詰め込んだ。

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