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とあるニートの自虐

作者: 御船

「……女に幻想を持つな、と言われた事がある。

 だが、俺はそこまで幻想を持ってはいないと思う。

 ただ、望むレベルが少々……いや、現実にはいないのではないかと思える程に、高いだけで」


 俺以外は誰もいない部屋で、そう、ぽつりと呟いてみるが、当然ながら返事はない。


「そもそも第一前提がボクっ娘な時点で絶対数が少ない上に、女と分かるレベルでのボーイッシュさとスポーツ選手のような締まった身体付きという外見的特徴があって欲しいとなると、まず現実には存在しないと言って良い」


 しかし、それには構わず、独り言を垂れ流す。


「その上で、服にさほど頓着せず、俺と二人きりでのんびりと怠惰に過ごせるとなると、二次元でも滅多にいないだろう。

 そんな事は分かっているが、それでも、そもそも俺を好きになるような奇特な女性がいるとは思えないのはさておき、好きでもないのに付き合えば互いが不幸になるだけだと思っている以上は、俺は誰とも付き合えない。

 最悪ボクっ娘だけに緩和して他の条件は無理矢理抑え込んだとしても、絶対数が少ない以上、そもそもからして遭遇しないのならば意味は無い」


 そこまで言って、軽くため息を吐く。


「……はぁ……どっかで理想の嫁を造り出す機械、発明されないかなぁ……」


 無理だとは分かっているが、口からはそんな願望が漏れる。

 理想の女性が仮にいたとしても、俺みたいなゴミには愛想を尽かしそうだな、と思いつつも、そう思わずにはいられないから。


「……せめてバイトしなさい、か……最近言われなくなったなぁ……いつ追い出されるかと冷や冷やしてるんだが、まだ大丈夫なのかね?

 貯金は無いって言ってたし、そろそろ年齢的にも不味いと思うんだが……他人、怖いんだよなぁ……」


 そんな自分を変えようとすれば、まるで天がそれを拒むように新たなトラウマを植え付けてくる。

 トラウマ等と言っても、苛めを受けた人からすれば……いや、一般人ですら鼻で笑う様なチンケなシロモノだとは思うのだが……それでも俺は、弱く、傷付きやすい生きたゴミ……略して生ゴミなのだから、小さな一つ一つが枷となり、俺を苦しめる。


「あーあ……俺みたいな奴、生まれてこなけりゃ皆幸せだったろうになぁ……」


 俺も苦しまずに済むし、親も無駄な金を使わずに済んだし、周りも迷惑を掛けられずに済んだろうし、ほんと俺は害悪だ。


「自殺しようにも怖くて出来ないしなぁ……」


 そういえば昔、スクールカウンセラーとかいう相談してね、という感じの人がいたのだが、あんなん相談出来る訳がないし、意味もないと思う。

 他人に打ち明けるという時点で怖いのだから、どうしようもない。

 かといって自分の中で溜め込み過ぎても……潰れるだけ。


 顔も見えず喋る必要の無い匿名掲示板でも一々緊張するし、そんなところに悩みを打ち明けたとしても、馬鹿にされるか玩具にされるか自分語り乙と言われるか糞スレ立てんなと言われるか荒らし扱いされて終わるだけだろう。

 一度やった事があり、以降そういう場所を見るのも怖くなった。


「俺を受け入れてくれて、決して嫌わない人……そんな人がいても、俺は依存するだけで、現状から脱却する事も出来ないんだろうなぁ……ははっ、ほんとゴミだ。不要物だ」


 自然と涙が溢れてくるが、だからといって何が変わるでもないし、泣いてすっきりなんて事にはならず、余計に酷くなるだけだ。


「自分に自信が持て……か」


 持てる筈が無いだろう、なけなしの勇気を振り絞れば更なる失敗をして自己嫌悪とトラウマという名の枷が追加されて、そんなんでも自信が持てるんなら、俺はもう少し楽しく生きていける筈だ。


「他人と話すのが苦手」


 普通に話そうとしても噛むし、声は小さいし、相手の声を正確には聞き取れず聞き返しても聞き取れず、思考速度が遅すぎて話についていけないし、話せる話題になることも無いし、そもそも誰かが話している途中に割り込めないから話せる話題でもすぐに終わっちゃうし、記憶力低すぎて真面目に聞いていても数分前の事も忘れるし……そんなやつが、他人とまともに話せる訳がないだろう。


「あーあ、全く。どうしてこうなっちゃったんだろうなぁ……」


 真面目にやって、初めのうちは周りより早く理解できて優秀だと思われても、才能はすぐに頭打ちとなる。

 それでも必死にやってみるが、全然伸びない。

 なのに周りは、努力すればどうこうと言って来る。それはホントに止めて欲しい。


 期待しないでくれ、望まないでくれ、俺はそんなに賢くない、俺はそんなに優秀じゃない。


 勝手に期待して、勝手に失望しないでくれ。


 やり方が悪い?言われた通りにやったり、自分なりのやり方を模索したり、参考となる体験談から真似してみたりしたけれど、一切変わらなかったのに?


 批判ばかりで、そうでないものも過剰な期待ばかりで、期待は大概失望へと変わる。

 そんなんばかりじゃ、俺だって次第にどうでも良くなってくる。

 やっても変わらないどころか、やった方がマイナスになるのだから。


 周りのせいにする屑?……ああ、そうだとも。俺は屑だ。俺はゴミだ。そんな事はとっくの昔に理解している。


 だから、俺みたいな奴はそもそもからして存在しなければ良かったんだ。

 周りも無意味な期待を抱かずに済んだし、そもそも期待しなければ、失望に変わることもなかった。


 だから、もう、終わりにしてくれ。

 誰か俺を、終わりにしてくれ。


 とあるニートの自虐 -完-



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