川の中は冷たいか?
本当に不定期ですのでご容赦ください
いつものように授業を勤勉で優等生である俺こと倉沢善明は受け、部室へ向かっていた…はずだった。
「…そう、はずなのになんで川ん中にいるんだ俺は!!」
「うるさいぞ善明。口はいいから手を動かせ手を」
「頑張れー!あ、そこらへん怪しいかもー」
「え?どこだ?」
「そこそこー!もー違うよー」
うぜえ。なんだこの二人。
約一名にいたっては完全に指示役で水にすら触ってねぇし。
と言うか今はまだ寒い四月なんですけど!?
なんでこんなことになったのかってそれは…
〜
「善明!高橋先輩が失くしたというブレスレット、探しに行くぞ!」
「行くよー?」
〜
てな感じで放課後部室へ行く途中に拉致られたからだ。
「高橋先輩」
「な、なにかな?」
依頼人だけど一緒に探したいらしい高橋先輩に声をかける。
といってもほぼ戦力外の働きだけど。
「本当にこの川で落としたんですか?」
「う、うん。なんでそんなこというの?」
少し困ったような、ムッとした表情になる高橋先輩。
「確かにここは学校に一番近い川ですけど、電車で通ってるという高橋先輩が落とすには近過ぎるんじゃないかって思いまして」
「いや、それはその…そ、その日は買い物頼まれちゃって!」
「そうなんですか」
「う、うん。そうなんだよ」
嘘だな。目が泳ぐどころかザブンザブン波打ってるし。
「ついでに言うと、駅から遠回りですし、橋だってかかっていませんが、どういった経緯で落としたのか教えてもらえませんか、ねっ…っと!」
話しながら泥を掘り返し、手で探る。
無いとわかってはいるが、これは精神的に罪悪感を感じさせるためにやっていることだ。
寒い。
「………」
なにも言い訳が思いつかないのか黙ってしまう高橋先輩。
俺だけだったら付き合わされても良いんだけど…麗さんも探してるわけで…。
「申し訳ありませんが高橋先輩。俺たちは依頼があったら動かざるを得ない立場にあるんですよね。だから、本当のことを話して欲しいんですよね」
手をヒラヒラさせて水を飛ばしながら言う。
これも相手に罪悪感を感じさせるための手段の一つだ。
優しそうなこの先輩ならもうそろそろ辛くなってきているだろう。
「麗さん!ひな!今日はもう遅いし危なくなるからここらで終わりにしよう!!」
俺の言葉に偽りはない。実際陽が沈んでいっているし、時計を見る限りはもうお馴染みのチャイムが鳴る時間だ。
「倉沢くん…」
高橋先輩の呟きをわざと無視して川から上がる。
替えのジャージが無かったら妹召喚してたところだまったく。
「で、どうだった善明」
「この格好見りゃわかるだろうに。それに、その様子じゃそっちもだろ?」
俺と似たり寄ったりの濡れた格好をした麗さん。正直エロい。
水に濡れて輝く生足。ってかなんで生やねん。
なんて思っていると肩に衝撃が走る。
「アッキーどこ見てるのかなー?」
「麗さんの生あ…アッキーって俺のことか?」
「そうそう、なんでも良いって言ってたからー。ダメなの?」
「いや全然?」
「ってちょっと待て善明。お前さっき私のどこを見てると…!!」
肩を震わせこちらを睨む麗さん。
「足だよ」
できる限りのキメ顔で言ってやった。
「お前は…この色欲魔!!」
素晴らしい速さのハイキックが俺に炸裂した。痛い。
「痛いだろ!」
「だったら自粛しろ!」
「それは無理だ!」
だってエロいし。なんだかんだで俺だって年頃だし。
「そ、そんなことはもういい!!やめだ!」
こほん、と一息ついて麗さんが切り出す。
「高橋先輩、このままじゃ見つからないかもしれませんが…どうしますか?」
「え、えっと…」
視線を彷徨わせる高橋先輩。
「それも含めて明日考えようぜ?今日はもう疲れたって」
「ひなもそうかもー」
「いやお前指示出してただけじゃん」
「えー、そうだっけー?」
「はぁ…で、みんな濡れてるけど…どうする?ウチに来るか?」
そう言った瞬間約二名が腕で自身の身体を抱く。心外だな。
「大丈夫だよ。妹だっているし、完全に善意で声をかけてるって」
「わ、私はその…遠慮しておこうかな…」
「う、うむ。私もちょっと…」
約二名は予想通り来ないことを選択したか。
そうだろうとは思ってたし。
「ひなは行きたいなー?」
「「「はい?」」」
わお、ハモった。
「ひなはアッキーのお家気になるし、妹さんにも会ってみたい!」
「あ、はい」
瀬野日向選手、我が家へ初参戦です。
ちなみに約二名の方は麗さんのお家の方が迎えに来て送って行きました。