初依頼は探し物?
「あ、あの!解決部さんってここでいいんですか!?」
放課後、俺が部室に行き本を読みつつ麗さんが買ってきたお菓子を食べていると急にドアが開き女生徒が怒鳴り……依頼を持ってきた。
また面倒事かよ……。
「まあ、依頼はいいんですがこっちにも都合があるんで議事録を作らせてもらってもいいですか?」
「あ、はい…ごめんなさい…」
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ーーはい、じゃあ貴方の名前と学年、クラスをお願いします。
「えっと…も、もう話していいの?」
そういうのもパソコンに打ち込まなきゃいけないんで質問にはちゃっちゃと答えちゃってください。
「あ、ごめんなさい…えっと、私は2年6組の高橋夏希と言います。」
で、依頼ってなんですか?
「あ、うん…川に落とした私の宝物を探してほしいの」
初依頼が落とし物探しか…まるで売れない探偵だなこりゃ。
「え?」
ああ、すいません。こっちの話です。
落とし物探し、ということですが…いつ、どこの川で落としたのですか?
「昨日の夕方くらいに……学校からそう遠くない川に落としたわ」
なるほど…。
ところで高橋先輩。
「な、なに?」
先輩の通学手段はなんでしょう?
「どうしてそんなことを?」
まあただの興味本位ですよ。
「そ、そう…えっと、電車で通っているわ」
家族構成は?
「え、ええ?」
ーーおい、なんか脱線してないか?
麗さんはちょっと静かにしてて下さいよ。
ーーう、うむ…。
で、どうなんですか先輩
「母と父…それから弟がいるわ」
そうですか…部活の方は何をやっているんですか?
「水泳部よ」
なるほど。
ーー何がなるほどなんだ?
いや、文化部にはない筋肉が付いてると思って気になっただけです。
「…う、うん…」
ーー余計なことばっか聞いてないでさっさと落とし物のことについて聞け
……わかったよ。じゃあ、聞きます。落とし物とはなんですか?
「…ブレスレットよ」
それはどのような?
「銀のブレスレット。装飾はないけれど、とても大切な物なの」
そうですか…まあ、今のところはこれくらいです。ありがとうございました。
「あ、うん…」
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「お疲れ、ひな」
俺はずっとパソコンに向かっていたひなにお茶を差し出した。
ひなはそれをビールのようにぐびぐび飲み、
「いやぁー…本当に疲れたよー」
と言った。
「えっとそれで私の宝物は…」
戸惑った様子の先輩が言う。
「大丈夫です。私たちが必ず見つけます。」
「なんで麗さんが答えてんですかね」
「…ま、まあ細かいことはいいじゃないか!」
慌てた様子で言う。
「まあ、いいけど…あ、先輩。ちょっと聞き忘れてたことがあるんですけど」
「な、なにかな?」
「落とし物探しの期限はいつまでですか?」
「…一週間くらいで見つかるかな?私も手伝うから」」
俺は少し考え込む。
落とし物はまあいい…問題はその後だろうけど…まずは見つからなきゃしょうがないか。
「了解しました」
「あ、ありがとう。それじゃあ改めて…お願いします」
これが、俺たち解決部の初めての依頼。
そして、力の足りなさを実感するには十分な依頼の始まりだった。