絶対無敵のスリッパアタック
「えー、これから進路に関してアンケートを行うから各自書いてこの時間内に提出するように。じゃ、あたしはめんどくさいから寝てる。質問があったとしてもプリントでどうにか解決するように」
先生のなんとも責任の感じられない言葉で始まった一時限目は進路アンケートらしい。
(さて…どうするかね…)
俺は特になりたいものもなく、ただ何となく日々を消化しているのだが…
(とりあえず楽して金が欲しいので、アンケート欄には…)
アンケートには『ヒモ』と書いて裏返し寝る。
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時が過ぎるのは早いもので放課後。
みんながそれぞれ部活動やら帰る準備やら雑談を始める中、俺も帰りの準備をしていた。
すると…
『1-3倉沢善明。できるだけ迅速に進路指導室へ来るように。さもないとお前の学校生活は保障しない』
放送で担任の声が聞こえてきた。
教室のみんなが奇異な目でこちらを見てくる。
「お前…なにやったん?」
前の席で雑談をしていた木村が聞いてくるので、予想していたアンケートのことを話した。
「お前バカだろ!」
と笑って言った。
どうやらその話をクラスの人が聞いていたらしく、クスクスと笑い声が聞こえてくる。なんだか居心地が悪いのでさっさと進路指導室に行くことにした。
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「で?なんでこんなに遅いんだ?あたしは迅速に来いと言ったはずだが?」
地味にキレつつ担任様が聞いてくる。
「来る途中で妹からメールがきたのでそれの返信をしていたら夢中になって遅れました」
俺は嘘は基本言わない。
真面目に言っている。
なのになぜだ。
スパーン!!
言った瞬間、スリッパではたかれる。
「いっつ!」
「まあ遅れたことはこれで許してやろう」
「それはどうも」
「で、わかっていると思うがこれはなんだ?」
こめかみあたりをひくつかせながら聞いてくる。
「アンケート用紙です。詳しく言うのなら今日の一時限目に配られ、俺が記入したものです」
「そういうことを聞いているんじゃないのはわかって答えているんだよな?」
「いえいえ、俺は先生がそれが何か理解していないのかと思って至極真面目に答えましたよ」
スパーン!
本日二度目のスリッパアタック
「…痛いです」
「お前の進路はヒモということだが…それに関してどう思っている?」
俺の反論は無視か…と思いつつ答える。
「自分が働くことなく金をもらい生きていけるのならそれは最高に楽で素晴らしいことだと思っています」
「お前は社会のクズか」
「いえ、ゴミですね」
「わかってやってるのなら考え直せ…。お前の学力だったら大抵の大学は目指すことができるだろう?」
「俺はそんな面白くない生き方をしたくありません。頭がいいのならできるだけ自分で動かず生きるために使います。そしてできるだけ面白いことをして生きていきます」
俺は先生に俺の人生設計を語った。
すると先生は…
「よし、じゃあお前あたしが顧問をやっている部活に入れ。これは教師命令だ。職権乱用と言ってもいい」
「職権乱用なんて社会人としてあるまじき行為だ」
スパーン!!!
だいぶ強い本日三度目のスリッパアタック
「反論異論その他は認めない。さあこれが部活動の入部届けだ」
と言って渡された紙を見るとそこにはなんとも言い難い部活名が書いてあった。
ーーーー解決部、と。