部活動?やりません
「ちょっとあんた。こっち来なさいよ」
「ごめん。いやだ」
なにが悲しくてこんな暴力女について行かなければいけないのかまったく理解できない。
「いいから来なさい!」
「とてもいやだから行かない」
宮川さんはだんだんと怒りのボルテージが上がってるらしく顔が赤くなってくる。
「早く来ないと殴るわよ」
「校則を見ろ殴ったらお前の身が危ないぞ!」
「そんな校則はないわ」
「えぇ!?嘘だろ…えっと…」
先ほどもらった生徒手帳を見る。
………。
ない。
「くそっ…仕方ない…かくなる上は…!」
俺は逃げた。
柄にもなく全力で。
「あぁ!?こら逃げんな!」
後ろで何か言っている気がするが気のせいだと思おう。
帰り道。
(なんで初日からこんな疲れなきゃいけないんだ)
心の中で悪態をつく。
ていうか、心の中でしか言えない。
まったくなんでこんなに弱いんだか....
「ただいま」
「おかえりお兄ちゃん」
家に帰ると妹が出迎えてくれた。
「今日、お母さん遅いから私がご飯作るんだけどなにがいい?」
悩むな....
贔屓目で見なくても妹の料理はうまい
正直、なにが作れないのかわからないレベルだ。
母さんも料理は上手い。
俺も出来るっちゃあ出来るんだけど当然2人には劣る。
「シェフ、卵を使ったお任せコースを頼む」
「えー!考えるのがいやだから聞いたのに...でもまあいっか。了解お客さん!」
これで俺の腹の問題はなくなったな。
だけどまだ大きな問題が残っている。
明日学校に行けばどうせ宮川さんのサッカー部勧誘が待っている。
憂鬱な気分になりつつ着替えに部屋へ行く。
ーーーーーーー
「今日は学校どうだったのお兄ちゃん」
夕飯を食べながら妹が聞いてくる。
ちなみに夕飯はオムハヤシだ。
これはなかなか…ではなく普通に美味い。
「お前は俺の母さんか。どうでもいいだろそんなの」
「わたしには妹として知る権利と義務があるんだよ」
「どうせ姉ちゃんに報告するんだろ」
「んー?まあね」
いたずらする小学生みたいに笑って言う。
ウチは3人兄妹で、姉の佳依、妹の雅と俺、それと母さんと父さんの五人家族だ。
姉の佳依は今世界放浪旅行の最中でいつ帰ってくるかもわからない。
俺は連絡先なんて知らないけども妹は知っているらしい。
この姉がまた破天荒な人でたまに厄介ごとを持ってくるからあまり関わりたくはない。
「じゃあ言いたくない」
「じゃあ優ちゃんにでも聞こっかなー」
優ちゃんと言うのは宮川優、つまり今日俺を拉致ろうとしたあの人だ。
「聞いてもいいがたぶん俺の悪口ばかり出てくるからオススメはしないぞ」
「お兄ちゃん…今度はなにやったの…」
呆れたように聞いてくる。
今度とはなんだ。俺がいつもなにかやらかしてるとでも言いたいのか。
「さてね。今回は俺は無実さ」
ごちそうさま、と言い食器を流しに出す。
「雅、なんか飲む?」
「ぶどうジュースが飲みたい」
「冷蔵庫にないんだけど」
「わたしの言いたいことがわからないくらいお兄ちゃんはバカじゃないでしょ?」
にっこり笑いながら悪魔が言う。
へいへい…買ってきますよ。
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ぶどうジュースをコンビニに買いに行き帰ってくると妹が少し難しい顔をして、
「誰かに会わなかった?」
と聞いてきた。
ぶどうジュースを渡しつつ、
「いや、特になにもなかったけど」
と返す。
ふーん、と難しい顔をしたまま言い、ぶどうジュースを受け取る妹を見て不思議に思いながら俺は風呂に入って部屋へと向かう。
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とりあえず明日、学校どうするか…
そういえば明日は進路をどうするか書くんだっけか…もうそんなところまで成長してしまってめんどくさいなんて思いながら俺の意識は薄れていった。