第五十三話「詐欺師は異世界に咆哮す」
月の昇る夜空。
とても作られたものだとは思えない真なる世界を、俺たちは猛進していた。
もう吐き気なんて言ってられない。
血なまぐさい戦争が始まる以上、ゲロを吐きながらでも勝利を掴んでやる。
それが、宇喜多家への最後の礼儀だ。
石山城にたどり着くと、何やら無骨な人達が橋のあたりにいた。
格好からして兵士ではないようだが、俺達を見て今しがた行なっていた作業を中断した。
「おお、お帰りになられましたか! 急いで渡ってください」
「これは何をしてるんだ?」
「橋を落としております」
「籠城しやすくするためですよ、ご主人様」
「ああ、そういう戦法なのか」
聞く所によると、敵が攻め寄せてくる方向の反対側の橋だけを残して、あとの橋は落とすらしい。
こうすることで、敵の侵入を防げる上に、修復する門と橋が一つに絞れるから楽なのだそうだ。
「急ぐぞ。もうすぐそこまで来てるはずだ」
「にゃー、これはごはんを食べる暇もないにゃ」
のん気なことを言っているアヤメを無視し、急いで城の中に向かう。
何か、兵の量が異常に多いんだけど。
天守から城門まで、兵士が窮屈そうに休息をとっている。
いくら何でも、兵の量が多すぎるように思う。明らかに、宇喜多の兵だけではない。
途中で兵の詰所がいくつかあったが、兵はみんな一様にして晴れやかな笑顔をしている。
その会話も、生気に満ち溢れていた。
「宇喜多様を守ろうぞ」
「望むところじゃき。
我らはしょせん雑兵。しかし、盾になることは出来る」
「おお、我らもその心意気に乗ったでごわす」
誰も、死ぬことに恐怖を覚えていないのか。
いや、違うな。本当は生きて帰りたい。
だけど、この危機を乗り越えないと、平穏が手に入らないから、こうして歯を食いしばって堪えて槍を取ってるんだ。
あいつらも、絶対に死なせてなるものか。
一人か二人、妙な話し方をする兵もいたけど。誰だあいつら。
まあ良い、一刻も早く日和の元へ行かないと。
アヤメに背負ってもらいながら、夜の城下を駆けまわる。
すでに羞恥心なんて感じなかった。恥ずかしがる暇があるなら、急いで合流しなければ。
なんとか天守付近まで来て、軍議が行われていると思われる評定の間へ。
すると、入り口には見知った顔がいた。
「む、遅いぞ貴様。さっさと軍議に加われ」
「ああ、遅くなったな紫。
ちょっと俺も挨拶したいことがあるんだ」
そう言って、紫の案内とともに評定の間へ入った。
そこでは、天下の雌雄を決する戦いに挑むだけあって、全員の意気が尋常でなく高かった。
加えて、妙な武将を発見する。
どう見ても戦場に出入りしてはいけないくらいの歳――毛利蓮臥と変わらないくらい幼い少女が、甲冑を着て座っていた。
戦が始まる寸前だというのに、グビグビと酒を飲んでいる。
そして、その家紋は――
「お前、どうしてこんなところまで……」
「おお? あたしの名前を知っているのか坊主」
「いや、お前に坊主と言われたくない」
「いいや、言うね。あたしは認めた奴しか名前で呼ばない。
坊主の名前もちゃあんと知ってるが、まだ信頼が置けないんだ」
「こっちのセリフだそれは。
というか、名を名乗ってくれないか」
「あたしか? あたしは島津終焉。
亡き父と伯父達に代わり島津家を継いだ、生粋の豪傑だぜ」
やっぱりか。円の中に十文字の家紋。
その紋章は紛れもなく、九州の覇者・島津家のものだ。
途中で見た変な格好の奴らは、こいつの兵士だったのか。
だけど、今回の戦場は備前――つまり岡山周辺。
なぜ薩摩の英雄がこんな所まで出向いてきているんだろうか。
「てっきり足利家に降伏するもんだと思ったんだが」
「嫌だね! あんなお白い塗っておっほっほな上品貴族や守護連中に、誰が膝を屈するか!」
「……おお、この頑固さこそまさに島津」
「分かってくれるか坊主!」
「確かに俺も足利家に降るつもりはない。宇喜多家の勝利をつかむだけだ」
「よく言った! ささ、戦の前は呑まないとやってられない。
樽で持ってきてるから、いっぱい飲むんだ!」
「酔いつぶれて戦にならないだろうが!」
俺が一喝すると、酒の入っているらしい終焉は眼に涙をにじませた。
畳を指でなぞり、グスグス泣き始める。
どうやら相当な泣き上戸らしい。てか、合戦の前に酒を飲まそうとするなよ。
一瞬酒での篭絡を狙った足利家の回し者かと思ったじゃねえか。
この態度を見る限りそれはないだろうけど。
とりあえず「一緒にがんばろうな」と背中を押しておく。
そして、戦略で熟議を重ねている紫のもとに行った。
「む、今は非常に忙しいのだがな」
「悪いって。頼むから、今の状況を説明してくれ」
「まったく、仕方がない奴だな貴様は。
現時点で足利の大軍勢は備前と播磨の境のあたりを進軍している。
こちらの正規兵の四倍に当たる兵力だ。
一瞬絶望しかけたが、その直後に嬉しいことが起きた」
「アレか」
「アレだ」
指の先にいるのは、一人で重臣とともに酒を煽っている少女。
自分の苦労話をあれやこれやと部下に話し込んでいる。
どうやら、終焉は酒を飲むと絡んでくるタイプのようだ。
「島津家は、最後の防波堤である長宗我部が潰れ、戦を強いられる状態になった。
足利家に降伏するならばと、この度五万の兵とともに石山城へ駆けつけてくれたんだ」
「正規兵より多いじゃねえか……」
さすがは九州を併合した島津家だ。
相当の兵力を貯蔵してたってことか。
でも、その状態でも足利家の兵力の半分以下。
こうして力を合わせないと太刀打ち出来ないだろう。
「加えて、滅ぼされた長宗我部の残党がこの機会に宇喜多家へ流入してきた」
「言い方が毒々しいなおい。味方してくれたでいいじゃないか」
「大して変わらないだろう。細かいことを気にするな。
連合を組んだ結果、東日ノ本連合軍もとい、宇喜多連合軍の兵力は九万まで膨れ上がった」
「おおー、だいぶ肉薄できる兵力になったな」
だけど、連合を組むのなら、本来敵の兵を上回るのが理想なんだよな。
それぞれの勢力の兵が持つ癖や信念が違うので、連合は戦場でうまく連携が取れないことが多い。
なので、少しのエラーがあっても敵を封殺できる、圧倒的な兵力が求められるのだが……。
まあこれ以上望めるものはないか。
「ここまでの兵となったので、野戦を挑むことにしたのだ。
華々しい最後を、あの足利に叩きつけてやる」
「……一番死人が多い戦法だな」
「仕方がないだろう。これ以外に有効な策がないのだ。
籠城していてもこれだけの兵士を抱え込める兵糧がない。決着は短期に尽きる」
そうか、恐らく戦法としては、平野での総当たり戦となるのだろう。
そうなれば、何千人、ひょっとしたら何万人の死人が出るかもしれない。
中途半端に人道主義な世界で育って来たからか、この事実には胸焼けが起きそうになる。
人の死は何度も看取ってきたが、そのたびに喪失感を味わってしまう。
「なあ、布陣はどうするんだ?」
「石山城に向かってくる進路に小高い山がある。
そこに布陣して、兵を二方向から進撃させ、側面攻撃で敵を揺さぶる」
「……そのあとは?」
「そのあと?」
「側面攻撃で敵が怯んだ後だ」
「そこからは、全面からの殲滅戦だ。
先に兵が枯渇したほうが負ける血と死が渦巻く戦場となる」
やっぱりな。
俺が日本史で習った戦争に、これと似た兵力で激突したものがある。
その戦では東軍が勝って大喜びしていたが、その喜びと幸せの数だけ、裏側に悲しみと不幸があった。
家族がいるかもしれない兵士。親の世話をしていたかもしれない兵士。
よく見れば、この戦国ではもう絶滅危惧種であるはずの男性が、ちらほら見受けられる。
この決戦にあたって、世を忍んでいた農民たちが出てきたのだろう。
こうやって集められた命が、これから消えて行こうとしている。
それを俺は、絶対に認めたくない。
「その戦法は却下だ、紫」
「……なっ。私の完璧な軍略にケチを付けるつもりか?」
「ああ、たしかにお前の軍略は完璧だ。
この状況で、この条件で、一番勝率の見込める戦いを展開しようとしている」
「だろう? だから――」
「だけど、人の死が必要以上に消えゆく戦法なんて、
俺からしてみれば完璧でもなんでもないんだ」
それはただの、愚策。
俺がそう言うと、紫は真っ向から俺に叱咤を浴びせてきた。
「ならば、降伏でもしろというのか?
ここまで来て、敵の思うがままに媚びへつらって負けろと言うのか?」
「誰もそんな事は言ってない。俺は宇喜多家を勝たせる。この信念は変わらない。
だけど、俺なりに策を考えてみたんだ。聞き苦しいかもしれないがちょっと耳をかせ」
「……言ってみろ」
誰かに聞かれでもしたら、悲鳴確定のものである。
なので、絶対に他に漏れないように、耳打ちで伝えた。
紫は最初の方はうむうむと腕を組みながら賛同していたが、俺が本当の狙いを遂行するための策を伝えた途端、表情が急変した。
「はぁっ……!? 馬鹿かお前は!
そんなものが成功するとでも思っているのか!?」
「思ってるさ。俺たちならやれる」
「そ、それにもし成功しても、勝てるとは限らない博打じゃないか!」
「合戦なんて博打だ。てか、世の中の全ては博打、時の運だろ。
この現状で突拍子なことを言い出す俺はな――人生を博打で生きているんだよ」
どこかの破産したギャンブラーのようなセリフを繰り出した。
一歩間違えればパチンコで身を滅ぼした糞親父のことが浮かんできそうになるが、この言葉は本気で言っている。
すると、呆れて口を開けた紫の背後から、ものすごい大声が聞こえてきた。
「よくぞ言った坊主!」
「……は?」
俺も思わず間の抜けた声を出してしまう。
高らかに俺に賛同しようとした声は、幼い少女のものだった。
というか、島津終焉のものだった。
「人生これみんな博打。あたしもそうやって生きてきた。
南にいるキリシタン大名と決戦をした時、私は一世一代の大博打に出たんだ。
それがうまいこと決まって、私は九州の覇者になった。そしてその時確信した。
全ての能力を使い、全ての人脈を使い、全てを出し切った後――残された手札は『天運』しかないんだ!ッ」
……おお、さすがギャンブラーの家系。
日本史で捨てかまりという死の戦法を実践しただけのことはある。
現代のラスベガスの日本人ギャンブラーは、実は全員こいつらの子孫なんじゃないだろうか。
「坊主がどんな策を練ったか、あたしに聞かせてくれ!」
「……他言無用にしてもらいたいんだが」
「構わないぞ! 例えどんな馬鹿げた発想でも、私は笑わない!
この戦国は、この歴史は、常に大バカ者が動かしてきたんだからな!」
歴史を動かすのは、常に大バカ者。
歴史を動かそうとして、神様からの罰を食らっている俺。
つまり、俺もバカ野郎ってことだろうか。
気に食わないが、別に嫌じゃない。
俺の気に食わないは、嫌いじゃないって意味だからな。
とてとてと俺の方に走ってきた終焉。
酒が入っているはずなのに、まったく軸がぶれていない。
どうやら、相当の酒豪みたいだな。
身長が俺の腰くらいまでしか無いので、しゃがんで耳打ちをしてやる。
すると、目の色を変えて喜びの声を上げた。
「いい! いいぞ春虎! まさに戦国の大博打だ!」
「あれ、坊主って呼ぶんじゃなかったのか」
「こんなバカ野郎を見つけて、敬意を払わない者がいるか!」
果たしてこれは褒められているんだろうか。
この勢いだけで突き進みそうなお嬢さんの顔色を見る限り、褒められているんだろうけど。
「あたしは賛成するぞ!
と言うより、その戦法じゃないと、私は兵を動かさないからな!」
そう言って、スキップしながら酒のもとに帰っていった。
俺はなんかの神様に睨まれてるけど、あいつは絶対バッカスの神様に祝福をもらってるよな。
あの飲みっぷりを見てると、視界に入れてるだけで酔いそうだ。
暴風の如き嵐が過ぎ去った後、紫が呆れたような声を出した。
「やれやれ、余計なことしてくれたな。
一番兵を持っている島津がああ言った以上、お前の策を使うしか無いじゃないか」
「まんざらでもないみたいだが」
「自分の信用する男……。
好きな男の言うことは、何だって愛おしく思えるんだよ」
「そうか。じゃあこの策を日和に伝えようぜ」
「あ、あれッ!?」
「どうした?」
「いや……うう、なんでもない」
何故か落ち込んでいる紫が畳をポカポカ叩きはじめた所で、タイミングよく日和が入ってきた。
彼女は俺におかえりと言った後、隣の紫に声を掛けた。
「策は決まったか? 黒田殿」
「……ああ、滞り無くな。
ただ、少し士気に精密さが求められるため、土壇場まで策は公開しないでおきたい。大丈夫か?」
「まあ、大丈夫だ。そこは私が説得しよう」
おお、ナイス紫。
俺の策を普通の兵が聞いたら、間違い無く混乱して騒ぎ出しちまうからな。
そのあたりの気遣いまで完璧、さすが天才軍師・黒田紫だ。隣
にいる風鈴にあいさつをした所で、俺は日和に話しかけた。
「なあ日和。ちょっとだけ挨拶をしていいか」
「誰に?」
「ここにいるみんなに」
「まあ、構わないが」
すんなり許しをもらえたので、俺は上座の壇上に上がる。
そして、ポケットからあるものを取り出す。
これは災害時に生き埋めになった時、少しの労力で周りに助けを求められる画期的な発明品だ。
というより、超軽量小型メガホンだ。
誰が作ったかは言うまでもない。
しかし、俺が持っている発明品は、全てが全て茜が作ったものではないので、一つ言っておこう。
これは甘屋茜が作ったものだ。
俺がゴソゴソとブツ取り出すと、評定の間の空気が変わった。
俺の言葉を聞こうと、静かになる。
この場には、竹中風薫、果心アヤメ、黒田紫、宇喜多日和、花房風鈴、島津終焉がいる。
毛利蓮臥はお休み中だ。
他の全武士団や、重臣たち。
そいつらに向けて、俺は最後のメッセージを伝え始めた。
「あー、知っての通りか知らずの通りかは分からないが、俺は伏見春虎だ」
すると、全員の表情が「いまさらかよ」というものに変わった。
どうやら、俺の名声は悪目立ちして、ひとり歩きしてしまっていたみたいだな。
毛利両川を倒してしまった手柄が、俺のものになっちゃったみたいだし。
どうせなら、風薫か紫に譲ればよかったな。どうせ俺には、必要のないものだから。
「俺は、この男が極限まで減ってしまった戦国に来た、違う世界の人間だ」
この言葉で、辺りが少しざわめき立つ。
それぞれの仲間に疑問をなげかけている。
「違う世界ってなんだ?」
「遠いところのことだろう。琉球のことじゃないか?」
「いや、明国という可能性もあるでごわす」
「いやいや、はるか遠くの羅馬かも知れん」
勝手な憶測が飛び交っているが、その真実を知ってるのはさっき名前を出した奴らだけだ。
今ここでそんな事を言っても、信じて貰えそうにないからな。詳しくは言わない。
「そう、俺は本来この世界の人間じゃない。
なのに、歴史に干渉して、この世界の創造主の予想に反した行動をした。
その結果が――これだ」
そう言って、俺は袴の裾をまくり上げる。
すると、もはやそこには健常な脚はどこにも存在しなかった。
両足は透けに透け、後ろの壁までもが見通せるくらいに消えかかっている。
腰から腹にかけて侵食されかけている現状。
このままだと、遠からず俺は消えてしまうだろう。
俺の足を見た全員が、声にならない悲鳴を上げた。
「俺はこの戦いで、ひょっとしたら消えてしまうかもしれない。
元の世界にも帰れないまま、消滅してしまうかもしれない。
だけど、ここまで来たら最後まで付き合う。
――最後までやりきって、笑顔で帰るんだ」
俺の言葉を受けて、酒を飲んでいた薩摩重臣たちが、酒を煽る手を止めた。
そして、風薫や紫達は、もう何も言わない。
「これが最後の戦いなんだ。俺にとっても、この日本の勢力図にとっても。
だから、俺から言うことはただひとつ――」
なけなしの筋力を振り絞って、空気を吸う。
みんなはきっと、俺が『勝とうぜ』とでも言うんじゃないかと思っているはずだ。
この局面で、自分が消えるか否かの瀬戸際で、俺が何を言うか。
おそらく、予測しきっているはず。
だから、そこで俺は裏切ってみせる。
この大声とともに、声高らかに宣言しよう。
「死ぬなよ! お前ら!」
俺の声が、ビリビリと広い評定の間に響き渡る。
誰も私語をせず、俺の言葉に耳を傾けていた。
「この戦いで勝てば、天下は平定したも同然なんだ!
ここを乗り越えれば、皆が笑える、皆が幸せになれる泰平が待ってる!
それを天国から見てるのは、味気ないだろ?」
そう、この戦いは、できることなら誰にも死んでほしくない。
殺すことが合戦なのに、この甘ったれた発言。
無骨で戦に流儀を持っている薩摩武士が聞いたら、酒盃を投げつけられるかもしれないな。
だけど、大事なことだから、しつこくもう一度繰り返す。
「絶対に死ぬんじゃないぞ!
お前らが死んだら、こうして俺がここに来た意味がなくなる!
だから――絶対に生きて帰るぞ、お前らッ!」
最後の酸素を消費して、言い切った。
この発言で、よけい侵食が早まった気がする。
だが構うものか。俺はこいつらに、絶対死んでほしくないんだ。
俺のこの言葉を受けて、ここにいる武士たちは――
「うぉおおおおおおおお! 良く言った春虎!」
「そうだそうだ! ここまで来たら、生きて故郷に帰るぞ!」
「土佐の海をもう一度見るまで、死ぬわけにはいかん!」
「生きるぞ、私たち薩摩の英士は、決して死なない!」
「ここまでの大バカ者は珍しい! 絶対にアイツを死なせるなよ!」
「当然だぁあああああ!」
「春虎! 春虎! 春虎! 春虎!」
怒涛の勢いで、士気が急上昇した。
今にも槍を持って暴れだしそうな勢いだ。
――よし、この状態なら、みんながここまで一致団結してくれて、初めてあの策は完成する。
「よし! 行くぞ、戦乱をこれで終わらせようぜ!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!」
こうして、俺たちは天下分け目の戦いに挑むことになった。
奇策の始まりを告げるかのように、アヤメが姿を消している。
さて、俺の身体が消えるが早いか、足利を打ち崩すのが先か、面白い二択だ。
――この世界での最終決戦が、今始まる。




