第四十四話「詐欺師の本気」
あんまり好ましい状況とは言えないな。
風薫を助けに来たはいいが、まさか吉川元春がいるとは。これは予想外だった。
風薫に手をかけようとする直前だったってとこか。
ふざけやがって。同じ世界で生まれたのなら。その行為がどれほど愚かしいか分かるだろう。
少なくとも、俺が大切に思ってる人が餌食になったら、おそらく俺は怒りで犯人を殺してしまうだろう。
腕に装着した『不滅の両椀』を確認する。相対するのはあの豪槍。
……防げるか、微妙だな。だけど、やるしかない。
直立して動かない俺を見て、元春は槍の切っ先を振るってくる。
まさしく横方向へのなぎ払い。さすがに武人だけあって、俺の反応速度では避けることも難しい。
だから、下手に回避することは諦め、腕を盾にしてなぎ払いを受けた。
「――ッ、痛いな。当たり前だが」
腕に痛烈な衝撃が走り、ビリビリと痺れる。
衝撃を殺す効果もあるこの手袋だが、体重を乗せた槍の完全無力化は難しいらしい。
十文字槍を使われてたら危なかったな。
こいつの流派は素槍を使うみたいだから、斬撃の脅威は少ない。
だが、その分貫通力は他の槍を圧倒する。
荒い息を吐く元春が、一度槍を引いて腰のあたりまで切っ先を下げた。
「我流の槍術を舐めてんじゃねえッ!」
「欲に狂った人間を舐めるかよ。蔑んでるんだ」
「黙れァアアアアアアアッ!」
穿つような刺突。その切っ先は俺の心臓を貫こうとしていた。
やはり、速い。先ほどまでの速度はないが、俺の身体能力で避けることは難しい。
普通に戦って、槍術のプロに太刀打ちできるはずもないのだ。
なんとか半身をひねって、刺突の有効範囲から逃げた。
吉川元春は俺の横っ飛びを視認する。
するとその瞬間、奴は醜悪に口元を釣り上げた。
「――引っかかったな? 槍術を前にして横方向への回避は愚の骨頂だ」
「ッ、まずい……」
そうだ。突きを避けられても、すぐさま力を転換してなぎ払いに移行できるのが槍術の利点。
こいつ、この形に持ち込むために速度を押さえたのか……!
豪腕をしならせ、元春は柄を渾身の力で振り回す。
「――我流・『嵐巻槍』ッ!」
まさしく、吹き荒れる突風のような薙ぎ払い。
体勢を崩している俺は、防御行動すらも取れない。
仕方がない、ここは甘屋の力を借りるしかないか。
俺は顔を奴に方向に向け、口に含んでいた物を吐き出した。
――ド、ドド、ド
目に見えるか見えないかの異物は、攻撃態勢をとる元春の首元に突き刺さった。
鋭い痛みが走ったのか、元春は槍を引っ込めて首を押さえる。
「――ッ! てめえ、また妙なものを」
「ただの含み針だよ。直接的なダメージはない」
「ふざけるんじゃね……ぇ?」
大声を出そうとした元春の表情が、苦悶なものへと変わる。
それは、甘屋が開発した痴漢撃退用の発明品・『奪息針』――に殺傷性をもたせたもの。
その真価が徐々に現れ始めた。
「……ハァ、……ヒュァ、……なん、だこれは」
「呼吸器官に効く即効性の毒が塗ってある。
強制的に『過呼吸』状態に持ち込んで対象を失神させる、護身道具だよ」
刺さる衝撃を感知して毒を放出するので、口の中に入れていても害はない。
力がないものでも不意打ちによって反撃ができる、優秀な品だ。
苦しそうに呻いて、元春は槍を握り締める。
これで、相当動きが鈍っているはずだ。
さらに、奴の利き腕である右腕には、ヤマトリカブトの毒が侵入している。
槍に対して暗器と毒。
少年漫画なら確実に俺のほうが悪役だろうな。
しかし、ここでは善悪なんて関係ない。
こいつを倒すためなら、風薫を助けるためなら、いくらでも悪名をかぶろう。
「クソが、ふざけやがって……!」
「そろそろこっちも本命の武器を出させてもらおうか」
先ほどまでの攻撃は、たんなる下地と防衛手段だ。
甘屋の発明品をフル動員して、この毛利家の癌を取り除く。
まず高電圧スタンガンのスイッチを入れ、予備の痺れナイフを取り出しやすい位置に設置する。
他にもないことはないが、この場面で有効なのはこの2つだろう。
「……もういい」
俺が内心で戦略を立てていると、吉川元春はうんざりしたような顔になった。
諦めたのかと思ったが、眼に秘めた殺意はそのままだ。
「――素槍でこの辺の技を使うと刀身が傷みやすいんだが、仕方ねえな」
そう言って、槍を頭上に振り上げ、回転させ始めた。
このことは、俺としては想定外。
最初のナイフの一撃から始まり、含み針による呼吸器官への攻撃。
奴と俺のかけ離れた実力差を埋めるために発明品を使用した。
都合に種類もの毒を盛り込んだ。
しかし、それでも止まらない。
この男の精神力と体が強靭すぎる。
毒が回り始めているはずなのに、なぜそこまで力が出る。
どうやらこいつは、俺の予想を上回る体力を持っているらしい。
奴は口元に笑みを浮かべて、急接近してきた。
「槍の利点はァッ、この圧倒的な間合いだぁぁぁああああ!」
「――ッ!」
螺旋を描くように振り回してくる槍を、這いつくばって避ける。
その勢いのまま腰にタックルをかまして押し倒す。
このビジョンを描いていたのだが、地面に身体を下ろす際に膝を強打してしまった。
「……ぐっ」
しまった、これはなんというイージーミス。
今までに蓄積した疲労が、首を絞め始めている。
俺の一瞬の怯みを見た元春は、俺の頭を思い切り踏みつけた。
――痛い、死ぬほど痛い。
鼻を強打したのか、熱い液体が込み上げてくる。
「まぁ、体力皆無のボンクラにしては、頑張ったほうだな」
そう言って、俺の腕に槍を突き刺そうとしてくる。
しかし、腕をとっさに引いて、『不滅の両椀』部分で受けた。
酷い衝撃が走る、しかし、耐えられないほどじゃない。
俺は大口を開けて、反撃とばかりに元春の足に噛み付いた。
「ぐ、ぁああああああああ!」
歯が折れそうになるまで力を入れ、奴の戦意を削ぐ。
人間が持つ咬筋は、人体を破壊するには十分な力を持つのだ。
嫌な音を響かせながら、犬歯が皮膚を突き破っていく。
「ぐぉおおおおおおおおお! 離せ、離せこの野郎!」
離せと言われて誰が離すか。
更に凄まじい力を入れて、与えるダメージを極限まで上げていく。
犬歯で皮膚を裂き、臼歯で肉を削ぐ。
必死に食らいついていると、吉川元春の目が見開いた。
「いい加減に――しろやぁ!」
その瞬間、俺の足のあたりに、鋭い刺激が走った。
急激に血が沸騰してしまったかのような熱を感じる。
槍の冷たい感触。どうやら、足を突かれてしまったらしい。
脳を苛んでいく痛みで、眼から涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
脚から流れ落ちていく血は、俺の内心を表すかのように煮えたぎっていた。
だが、まだ俺は負けない。負けていない。負けられない。
片足は潰れたが、足は二本ある。
タイミングを見計らい、俺は奴の血だらけの脚から歯を引き抜き、思いっきり腰にタックルを決めた。
この不意打ちに、元春は脚を軸にして耐えようとする。
しかし、俺と奴の血でドロドロになった床で足を滑らせ、背中から倒れこんだ。
「――今だッ!」
無意識に俺は叫び、奴のマウントポジションを取って打撃を加えた。
密着状態にあるためスタンガンは使えないが、ナイフがある。
奴の肩口に痺れナイフを突き立て、パチキを何度も繰り出した。
文系の上に大した頭ではないが、打撃に使うとなればおあつらえ向きだと自負している。
流れだしていく血を認識しながら、一心不乱に攻撃を続けた。
この時点で、俺の意識は暴走していた。
流出していく血液が、俺の理性を吹き飛ばして暴力衝動を掻き立てる。
その上、ここに進入した時から端を発するハイテンションが、完全に暴虐を覚醒させた。
殴って殴って殴って 殴って殴って殴って 殴って殴って殴ってパチキパチキパチキパチキパチキパチキパチキパチキパチキパチキパチキパチキ殴る殴る殴るパチキ殴る殴る肘鉄肘鉄肘鉄パチキパチキ殴る殴る拳の骨が悲鳴を上げるパチキパチキ肘鉄肘鉄肘鉄パチキパチキパチキパチキ脳震盪になりかけて意識を失いそうだ肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄肘鉄トドメのパチキ肘が痛いもうこれ以上使いたくないだから殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る――――
奴の眼の焦点が定まらなくなってきた。
そして、肘も痛覚がなくなってくる。
拳? もうとっくに痛覚どころか触覚すらもない。
今気づいたのだが、俺の脚からはすでに尋常でない血が流出している。
リアル出血第サービス状態。
ははは、ハイな状態と血の興奮があいまって狂いそうだ。
なんだこの胸の高まりは。こいつが俺の風薫に手をかけようとしていた。
ふざけるな、あいつは別に俺のものでもないが、少なくともお前のものではない。
甘屋という存在がいるから声を大にして言えないが、風薫はものすごく可愛い。
紫も可愛い。風鈴も同じくらい可愛い。君主だから身分違いもいいところだが日和だって可愛い。
あいつらの安全を脅かしたのはこいつらだから、俺がこうして狂いながらも打撃を加えるのは当然のことで、誰にも責められるべき云われもない。
それに詐欺師に責任うんぬんを求められても困る。
俺は本来搾取する側の人間なのだから。
折れたのか知らないけど血が滲んで紫色に変色した手。
だけど、風薫を助けるためならこの手がぶっ壊れても異存はない。皆無だ。
だから、この風薫に無礼を働こうとした吉川元春もどきの槍術師範を――殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルナグルなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐるなぐる――
――パァン
銃声。その音とともに、俺の意識が正常に戻った。
ぐらついていた理性が、ゆらりゆらりと揺れながら元に戻っていく。
完全に狂っている状態から、半狂乱状態になったってところか。
真っ赤だった視界が暗い牢獄のものとなり、変色して傷だらけになった俺の手が見えた。
おかしいな、この短時間で正常だった手が崩壊してしまっている。整形外科に行かないと。
あれ、でもこの世界に整形外科なんてあったっけか。
ねえな、そんな事も分からないほど俺は頭混乱中のようだ。目下大絶賛狂い中。
吉川元春の顔を見てみると、顔の原型がなくなるほどに変形していて、無駄に爽やかだった小麦色の肌は、俺の血とランデブーした混血で真っ赤になっていた。
呼吸すらも怪しい様子で、どこかの暗黒卿よろしく「ヒュコーヒュコー」と変なリズムで息をしている。
もはや見る影もない壮年の顔は、無残にも痙攣している。
おかしいな、虚弱体質にも近い俺が、どうしてここまで人体を破壊できるんだろうか。
ここに忍び込んだ時から、まるで俺が俺じゃないみたいにテンションが高い。
まあ、今はそれよりも、俺の右肩に開いた穴について考えようか。
チリチリと熱い感触が肩に宿り、激痛を発している。
この穴の原因である方角を向いた瞬間、俺は全てを理解した。
一見女と見間違えるような細い体躯。その眼に宿る暗い野望。
話に聞いていた『小早川隆景』その人だった。
「元春さん、なにしてるんですか。
こんな子供に侵入を許して、しかも肉弾戦で負けるなんて」
存在価値が失くなってしまいますよ? と隆景は楽しげに笑う。
その手には、見たこともないような小型拳銃が握られていた。
どうやら、俺の肩にぶっぱなした張本人はコイツらしい。
「よぉ、あんたが小早川隆景の偽物さん?」
「そういうあなたは異世界から来た詐欺師ですね。
お名前は伺ってますよ、伏見春虎さん?」
なんだ、俺の名前を知っているのか。
ああ、そうか。俺と同じで、マトモな世界で生きてないから、その手の業界の名前を知っているのか。
武器組織から何度か金を頂いたこともあるし。
名前くらいは知られててもおかしくない。
「明日のショーの邪魔をされても困るんですよね。
しかもその上、この毛利家を実質的に率いている元春さんを半殺しにされちゃいましたし。
とりあえず、報いとして全身に穴を開けて死ぬっていうのはどうでしょう」
「ハッ、冗談きつい…………ぜ?」
身体に力が入らない。
どうやら、全体力を使い果たしてしまったようだ。
元々少ない体力が、何故か高揚していた精神に支えられていたに過ぎない。
大量出血の上に純粋な疲労。
どうやら、これ以上抵抗するのは無理らしい。
だが、ここで死を待つほど、俺は諦めが良くない。
「……まだ、左手は動くんだ。まだ俺は、戦えるぜ」
息も切れ切れに、スタンガンを忍ばせた懐に手をやる。
しかしその刹那、俺の左腕を銃弾が通過した。
「……ぐ、ぁあああああああ!」
「おや、ちょっと浅かったですかね。
無駄に痛覚を刺激するような貫通をしてしまいました」
痛い、痛い。痛くて死にそうだ。
少なくとも、これ以上の痛みを俺はこの人生では知らない。
全身から血が噴水のように流れてるし。
頭はどんどん思考する力がなくなってきている。
……ああ、俺はここまでなのか。死ぬのか。ここで終わってしまうのか。
しょせん、二人ぽっちで捕虜を奪還しようとするのは、無理だったのか。
今までに何度も『死にそうだ』とか『もうダメだ』とか弱音を吐いてきたが、今度ばかりはマジらしい。
まあ、逆に言えば――今までよく生きてこれたものだ。
認めたくもないほどに波瀾万丈な人生。
年を食ったら自伝でも出してやろうかと思っていたのだが、どうやら書く前に死んでしまうらしい。
正直、もっと生きたかった。
今年はまだ後楽園に29回しか行っていない。
桃もまだ一個も食ってない。
悔いは残るが、これが俺の最期なら仕方がないのかも。
そう思って、眼を閉じる。
すると、あいつのことが走馬灯のように逆流した。
それは、俺があいつと付き合ってきて、うんざりするほど言われた言葉――
『先輩、私を不幸にしないでくださいね』
『先輩は、危なっかしいんですよね。だから、私が守ってあげます』
『詐欺師なんて職業、私としては反対なんですけど、でも先輩がここにいてくれるのなら、それだけで幸せなんです。だから、必ず無事に戻ってきてくださいね――』
――刹那、俺は立ち上がっていた。
もはや息をする体力があるかも怪しい。
大量出血状態で、視力が殆どない。
どうしようもなく死にかけな状態。
だが、それでも俺は立った。
そして、確固たる意思を持って、宣言するかのように呟く。
「――死なない」
「はい?」
「俺は、絶対にこんな所では死なない」
「それは無理ですよ。ここであなたの生命は終わります」
「終わらない、俺が詐欺師である限り、この人生から解放されることはない」
そう、俺はこの戦国にいる限り、どこまでも詐欺師でい続ける。
元の世界に帰って、あいつと幸せになった時、初めて俺は人を騙すことはなくなるんだと思う。
だから、あいつと共に幸せの道を歩むまで、俺は絶対に死なない。
「もういいです。元春さんもろとも、あの世に行ってください」
そう言って、小早川隆景は俺に銃口を向ける。
その口は俺の眉間に向けられており、直撃すれば死は免れないだろう。
もはや俺の打てる手は全て打った。
だから、あとはこの場の流れにすべてを任せる。
だけど、一つだけ、流れを変えるためにしなければならないことがある。
ある人間をここに呼んだ時、エセ小早川の思惑は完膚なきまでに砕け散る。
だから、だから俺は呼んだ。
俺の精神状態を、ここまでハイにしやがった、張本人を。
「――そろそろいいだろ。アヤメ」
「なッ!?」
その瞬間、小早川隆景の身体が水平に吹き飛んだ。
握っていた拳銃は宙を舞い、俺の真横に落ちた。
何が起こったのかわからない小早川隆景は、自分が先ほどいた所を見て戦慄した。
月光を思わせる、金色に輝く短髪。
山籠りでもしていたのか、ボロボロになった衣服。
しかし、全身から放たれる気品は百獣の王を思わせ、見る者を圧倒させる。
不遇な出生を遂げながら、俺と出会ってその人生をリスタートさせた半獣。
不器用ながら、思いやりを持つことのできる、心優しい少女。
行方不明だった果心アヤメが、眼の前に立っていた。
「――あなたは」
「気安く話しかけるにゃよ。私を呼んでいい男は一人だけにゃ。
それはまあいいとして――遅くにゃったな、春虎」
「ああ、遅すぎる。死ぬかと思ったぜ。修行は済んだのか?」
「もちろん、お前に『心身強化の術』をかけてやったのは他にゃらぬ私。
副作用で体力残ってにゃいと思うから、そこで休んでろにゃ」
ビシィっと俺に指をさして、アヤメは小早川隆景に相対した。
ああ、やっぱりか。ここに侵入するとき、俺に幻術をかけてやがったのか。
心身強化の術? なんだよそれ、幻術は何でもありか。
とはいえ、そんな状態だったからこそ、体格で勝る吉川元春相手に肉弾戦で勝てたんだろうけど。
だが、こいつの言う通り、俺はもう動けそうにない。
悔しいが、あとはこの嬉しい救世主に頼るしかないか。
上機嫌にしっぽを振るアヤメの背中を、俺は妙な安心感と共に見つめていた。




