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序詞
薄暗いステージ裏で自分の呼吸音だけが聞こえる。
目の前の大きなカーテンの向こうはきっと騒がしいはずなのに僕には呼吸音しか聞こえない。
緊張を紛らわすためにひたすらマイクの位置を上下させた。他のメンバーはスティックをクルクルさせたりキーボードの設定をしている。みんなマイペースだし、もしかしたら緊張してるのは僕だけかもしれない。
「もしかして緊張してるの?」
明らかにおかしい挙動の僕に綾城はそう問いかけた。綾城は緊張する人間じゃないだろうな。いつも通りの冷たい目だが今日はその目からワクワクが伝わってきた。
こんな時くらい緊張してくれないといよいよ人間か怪しくなってくる。
「まさか。これ以上ないくらいにリラックスしてる。」
「ふ〜ん、じゃあその足の震えは何?」
「武者震いってやつかな。」
カタカタと震える足と強がる僕を見て綾城はフッと鼻で笑った。あんなこと言っておいてこのザマだから笑われても仕方ない。
『さあ、次は軽音部です!』
放送でそうアナウンスしているのが聞こえた。ゆっくりとカーテンが上がっていき、光が少しずつ足元から上がってくる。そして、じわじわと拍手の音が満ちていく。
今は小雨のような拍手だけど、5分後に嵐のような拍手喝采が巻き起こる僕たちのステージが今始まる。




