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第6話 訓練 ―生き残るための“創り方”―

第6話

訓練 ―生き残るための“創り方”―

――モディアス王国・戦艦デッキ――

「……匠様、どうされましたか?」

 ジュリア・ハーティスが、控えめながらも心配そうに声をかけた。

「だ、大丈夫です……。」

 匠は反射的に首を振る。

 だがその頬には――

 誰がどう見ても一目で分かる、くっきりとした赤い手形が残っていた。

 隣では、アンジュ・ラストウォールが腕を組

み、露骨にそっぽを向いている。

挿絵(By みてみん)

「……?」

 ジュリアは二人を交互に見て、小さく首を傾げた。

「アンジュの進言により、一度王国へ帰還します」

 場の空気を整えるように、ジュリアは淡々と続ける。

「連戦で、整備・補給・人員すべてに負荷がかかっています。

 ここで立て直しを図るべきでしょう」

 白髪白ひげの老神官、ノブロコフ・トワイスキーが、ゆっくりと頷いた。

「うむ。

 戦は気力だけでは続かぬ。休息もまた、戦力の一部よ」

 艦内に、わずかな安堵が広がる。

 ――だが。

「アンタは、話が別よ」

 アンジュの鋭い視線が、一直線に匠へ突き刺さった。

「帰還するまで、徹底的に特訓。

 逃げ場はないから、覚悟しなさい」

「……りょ、了解しました……」

 匠は、ほとんど泣きそうな顔で肩を落とす。

(生き残るって……もう、地獄が確定してる気がする……)

 だがアンジュの目は、本気だった。

 守るためではない。

 導くためでもない。

 ――生かすため。

――クライガスト王国・戦艦デッキ――

 宙に浮かぶ、無数のホログラム。

 ガガは指先だけでそれらを操り、淡々と戦闘データを解析していた。

「……やはり、興味深い」

 低く呟く。

 背後、巨大な玉座に腰掛けたジャカランダ大王が、愉悦を滲ませた声で問う。

挿絵(By みてみん)

「どうだ、ガガ。

 なかなかに、愉快な“玩具”であろう?」

「ええ。非常に」

 ガガは二つの映像を並べて表示する。

「こちらが、サウザンドブレイカー消失前のシルヴィアンジュ。

挿絵(By みてみん)

 そして――こちらが、消失後です」

挿絵(By みてみん)

 外装。出力。機動パターン。

 どれを取っても、同一機体とは思えない変化。

「短期間で、ここまで性能が刷新される例は稀です。

 これは“修理”ではない」

 ガガの声は静かだ。

「――機体を、一から“組み直している”」

「ふざけんなっ‼️」

 ギギが苛立ちを隠さず割り込む。

「サウザンドブレイカーは、俺がブチ壊したんだぜっ!」

 ジャカランダ大王は、ゆっくりと首を傾けた。

「この世界に、創造主は唯一……

 討ち漏らしたか。あるいは――」

「消失と同時に、別の創造主が召喚された」

 ガガが感情を挟まずに続ける。

「どちらにせよ、脅威であることに変わりはありません」

「へっ、問題ねぇよ」

 ギギは歪んだ笑みを浮かべた。

「次は、本気で遊んでやる。

 新しく生まれ変わった“コイツ”でな」

 ガガがタブレットを弾く。

 映し出されたのは、格納庫で禍々しく変形を続けるギギの専用機。

「今度は、油断しねぇ……

 生意気な姉ちゃんと、“新型”」

 その目は、完全に獲物を狙う捕食者のそれだった。

――モディアス王国・戦艦 シミュレーション室――

 視界いっぱいに、仮想空間が展開される。

 無機質な空間に、敵影のシルエットが浮かび上がる。

「……これ、本当に訓練ですか?」

 匠は思わず呟いた。

「実戦に“物凄く近い”だけよ」

 通信越しに、アンジュの声が返る。

「このシミュレーターは、機体性能を完全再現。

 カイザーの挙動も、実機と同期してる」

「……じゃあ、被弾したら?」

「衝撃は、そのまま操縦席に来るわ」

 淡々と、容赦なく。

「何発も喰らえば、打撲じゃ済まない。

 下手したら骨折。運が悪ければ――意識喪失」

「そ、そんな……!」

「覚悟しなさい」

 アンジュの声が、静かに、しかし鋭くなる。

「これは、勝つための訓練じゃない」

 一拍。

「――生き残るための訓練よ」

 匠は、操縦桿を強く握りしめた。

 戦場に立つ覚悟は、まだ足りない。

 英雄になれる自信もない。

 それでも。

(……生き残らなきゃ、何も始まらない)

 仮想空間の奥で、敵影がゆっくりと輪郭を持ち始める。

「まずは回避。

 撃つな。攻めるな。

 “死なない位置”を覚えなさい」

「……はい!」

 敵のビームが走る。

 匠は歯を食いしばり、機体を滑らせる。

 被弾。

 衝撃が操縦席を揺らす。

「ぐっ……!」

「遅い!

 “避ける前に考える”のよ!」

 再び衝撃。

 視界が揺れる。

 だが匠は、操縦桿を握り続けた。

 この日から。

 積村匠は、“強くなる”ことを目指すのではない。

 まず学ぶのは――

 “死なない創り方”

 機体を創るだけでは足りない。

 生き延びる動きを創れ。

 その思想が、少しずつ彼の中に刻み込まれていく。

 戦場は、待ってはくれない。

 次は、本気だ。

――つづく――

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