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無題

作者: 橘壮馬

G-DRAGONさんの「無題」という曲を聴いて書きました。

私のとても好きな曲です。皆さんも是非歌詞の日本語訳を見ながら聴いてみてください。

午前二時。

世界が寝静まったこの時間は、記憶の淵が最も深く、暗くなる刻だ。

窓の外に広がる街の灯りは、僕たちが過ごしたあの日々よりもずっと遠く、冷たく滲んでいる。僕は鍵盤に指を這わせるように、虚空に君の輪郭をなぞってみる。けれど、そこに触れられる温もりはもうない。

「もしも」という言葉が、これほど残酷で、これほど甘美な響きを持つことを、僕は君を失って初めて知った。

もしも、あの日に帰れるのなら。

もしも、君にもう一度会えるのなら。

僕が今、この手に掴んでいるすべて——積み上げてきた誇りも、守るべき立場も、明日という未来さえも——すべてを捨て去っても構わない。ただもう一度、君と視線を交わし、その手を握り返すことができるなら、僕は迷わずそうするだろう。

振り返れば、僕はあまりにも幼く、傲慢だった。

愛されているという事実に胡座をかき、君の優しさを「当たり前」という箱に押し込めていた。傷つかないようにとついた嘘が、結局は鋭利な刃物となって君の心を切り裂いたことを、今の僕なら痛いほどに理解できる。

君はいつも僕を信じてくれていたのに。

僕はその信頼を、身勝手なプライドで塗りつぶしてしまった。

「ごめんね」

いまさら風に乗せても届かないこの言葉が、喉の奥でつかえて熱を帯びる。

君は今、どこで誰と笑っているだろうか。

僕の知らない誰かが、僕のできなかったやり方で、君を大切にしているだろうか。

想像するだけで、心臓が引きちぎられるような痛みが走る。けれど、それこそが僕が背負うべき罰なのだと思う。

僕は祈ろう。

たとえ次の恋が、あるいは次の生が訪れようとも、君の記憶の片隅に僕という傷跡が残っていませんように。

そして矛盾するようだけれど、夢の中でだけでもいい、君に会いたいと願ってしまうこの浅ましい心を、どうか許してほしい。

君が幸せでありますように。

僕よりもずっと、ずっと幸せでありますように。

この想いには題名なんてつけられない。

ただ純粋で、痛々しいほどに透明な、僕の最初で最後の祈りだ。

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