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【連載版】好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が  作者: 和島 逆


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20/20

短編版アンソロジーコミック発売記念*番外編

 晴れて結婚したエヴェリーナとジェラルドは、王都の貴族街の外れに居を構えることになった。

 元は高位貴族の邸宅だったが、数年ほど空き家になっていたらしい。庭は雑草がはびこって荒れ放題、屋敷の中も細かな修繕が必要な状態だった。


「結婚後も二人で王城に住めばよいものを、なぜわざわざ出ていく必要がある!?」


 国王サイラスはそう言って憤ったが、王妃メリンダが上手くなだめてくれた。


 王城は王城でジェラルド王子夫妻の部屋をきちんと準備して、自由に出入りして使っていただいたらよろしいわ。

 だけど新居は新居で必要です。新婚ほやほやのお二人の気持ちもわかって差し上げて?


 そんなメリンダの説得に、最終的にはサイラスも折れてくれた。



 ――そして無事に屋敷の手直しも終わり、エヴェリーナとジェラルドの新生活が始まったわけだが。



 ◇



「起、き、ろ、ライオネル~っ!」


『フグー……』


 今日も今日とてジェラルドは声を張り上げる。


 荒れ放題だった庭はあえてほとんど手を入れず、ライオネル用の騎獣舎だけ新たに増設した。

 庭はライオネルが駆け回るのに充分な広さがあり、騎獣舎の中はエヴェリーナがいつも居心地良く整えている。新しく手に入れた自分の根城を、ライオネルはこの上なく気に入っているようだ。


「もう出勤の時間だろう!? 新居に舞い上がりすぎて、夜更かしをするのも大概にしろとあれほど何度もっ」


「――まあ。どうぞ落ち着いてくださいませ、ジェラルド様」


「! エヴェリーナ」


 慌てて振り向けば、愛しの妻がにっこりと愛らしい笑みを浮かべていた。

 ひとりでに頬がゆるんでいくのを感じるジェラルドだったが、エヴェリーナの手に大皿があるのに気づいて顔を引き締める。


『ガウッ!?』


 ライオネルも反応し、両耳がピンとそそり立つ。


 エヴェリーナはしずしずと進み出ると、ライオネルの前に湯気の立つ大皿を置いた。


「さあ、どうぞ召し上がれ」


『ガウッ、グルルルル~ッ!!』


 がつがつと食べるライオネルに、ジェラルドは渋い目を向ける。

 最近は毎朝こうだ。惰眠をむさぼるライオネルを起こすため、好物のステーキをエヴェリーナがライオネルの鼻先に甲斐甲斐しく用意する。


「エヴェリーナ。少しライオネルを甘やかしすぎだ」


 愛おしげにライオネルを見守るエヴェリーナに、ジェラルドは苦言を呈した。


「俺たちが結婚するまでは、ライオネルも普通に早起きできていたのだ。このまま甘やかすのはライオネルのためにならないし、それにいくら我が家の財政的に問題ないとはいえ、最上級のステーキを毎朝与え続けるのは――……」


(……我が家の財政、だと!?)


 自分で言っておきながら、ジェラルドは思わず息を呑む。


 我が家。

 そう、我が家である。

 ジェラルドとエヴェリーナとライオネルの、明るく楽しい我が家なのである。


 手にしたものへの喜びが込み上げてきて、ジェラルドはじぃんと今の幸せを噛み締めた。


「ごめんなさい、ジェラルド様……。ですが……」


「あっああ、気にするなエヴェリーナ。ライオネルは少々味をしめているだけなのだ。だがもう少し頻度を減らした方が、ありがたみも増すとは思わないか?」


『ガフゥッ!?』


 ライオネルが「ひどい!」と言わんばかりに非難の眼差しを向けてくるが、ジェラルドは構わずエヴェリーナだけを熱く見つめる。

 エヴェリーナはくすりと笑って、ジェラルドの隣に寄り添った。


「ご安心くださいませ、ジェラルド様。……実は最近わたくしがご用意しているのは、安価な鶏肉のステーキですから」


「ええっ?」


「最上級の牛ステーキは、ここぞという場面でしか出しません。()()()()()()()()()()()として――わたくしも締めるところは締めませんと」


 ……ジェラルド様の妻、ですから。


 照れくさそうに続けたささやきに、ジェラルドの頭が沸騰しそうになる。

 思わずエヴェリーナに手を伸ばせば、エヴェリーナも体をぶつけるようにして胸に飛び込んでくる。


 頬を染めて二人で笑い合っていると、ライオネルがスン……と小さく鼻を鳴らした。


 ジェラルドがちらりと視線を向けた先には、空っぽの皿に愕然と目を落とすライオネルの姿があった。


「……ライオネル様?」


「ライオネル……。お前、もしや……?」


 怪しむジェラルドに、ライオネルが『ガウッ』と慌てたように一声吠えた。

 ブルルッと激しく首を振り、地面に伏せて出発の体勢を整える。


「どうかされましたか?」


 エヴェリーナは不思議そうに首を傾げるが、ジェラルドは苦笑して首を横に振った。

 見送りに出てきた使用人に皿を託し、エヴェリーナに手を差し伸べる。


「何でもない。どうやらライオネルも準備ができたようだから、そろそろ出勤するとしようか」


「――はいっ!」


 エヴェリーナは嬉しそうにはにかんで、ジェラルドとともにライオネルへ騎乗した。

 安全具でがっちり固定して、ジェラルドはすがすがしい朝の空気を胸いっぱいに吸い込む。


「飛べ、ライオネル!」


 大きな翼をはためかせ、ライオネルが空へと飛び立った。


 結婚してからも変わらずエヴェリーナは騎獣舎で働いていて、朝は一緒に出勤するのが日課となった。エヴェリーナの髪が風になびいてジェラルドをくすぐり、ジェラルドはまたも幸せを噛み締める。


 グルル、とライオネルがうなり声を上げたので、ジェラルドは我に返って優しくライオネルの背中を叩いてやった。


(安心しろ。エヴェリーナにはちゃんと黙っておいてやるさ)



 ――まさか騎獣の王者ライオネルともあろうものが、大好物の味の違いに少しも気づいていなかった……などという失態は、な



 笑いを噛み殺し、こっそりと心の中で語り掛ける。

 ライオネルはまるで聞こえたかのように、『フスンッ!』と鼻息を荒くした。

ステーキに種類があることを初めて知った、ライオネル6歳なのでした。

でも全部おいしーんだもん!と本人は思っています(*´艸`*)


◇◆◇◆


本日いよいよアンソロジーコミックが発売されます!

漫画家の麦生まいこ先生により、最高に可愛く素敵な作品に仕上げていただきました!

ぜひ皆様のお手元にお迎えいただけると嬉しいです(*^^*)


そしてこちらは予告なのですが、明日からまたコメディな異世界恋愛の新連載を始めます。

ぜひブクマして応援いただけると嬉しいです♪


【6/9追記】

ほんの出来心だったのに!?不浄の辺境伯様は、どうやら私の〇〇がお気に召した御様子です。

https://ncode.syosetu.com/n0266ks/


新連載投稿しました!

よろしくお願いいたします(*^^*)

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