8:買い出し
エドのカフェで暮らすようになって四日目、いつものようにお店でお昼を食べていると、エドから明日は店休日だと伝えられました。
「アンタ、飯はどうするんだ?」
「そうですねぇ…………あ、お部屋のキッチンで調理はしてもいいのでしょうか?」
お部屋には、こぢんまりとしたキッチンというか、コンロとシンクがあります。本格的なお料理は無理そうですが、先日からはお茶などを沸かしたりするようになっていました。
「調理? 構わないが、アンタが? 出来るのか?」
「うふふ。はい!」
スープなどを作って、買ってきたパンと一緒に食べれば、朝などはそれで充分そうです。
そう話すと、エドがにっこりと笑みを浮かべました。
「そうだな。それに節約にもなるしな」
ウンウンと頷いていますが、エドはそれでいいのでしょうか?
「お店の売り上げが減りますが、いいのですか?」
「あ? 余計な気遣いはしなくていい。ったく。アンタの思考回路は分かりやすいのに、時々読めないな」
呆れられたように笑われてしまいました。
「分かりやすいのですか?」
「食べてるときは、特にな。エビ好きなんだろ? いつも好きなものを最後に食べてる」
「ひょわっ…………はい」
エビは好きです。ぷりぷりとした歯ごたえや、シーフード特有の旨味。それに見た目も鮮やかで可愛いですし。
好きなものがそんなことでバレるとは予想外でした。あまり意識していませんでしたが、確かに最後に食べている気がします。
夕方に明日の朝食べるパンやスープの材料、調理用具などを買い出しに行きました。
「はいよ、毎度あり」
「ありがとうございます」
野菜売りの屋台でジャガイモやニンジン、セロリにタマネギなどを買い、お肉屋さんで腸詰めの肉を。
パン屋さんではライ麦の丸いパンを買いました。
夜の内にポトフを作っておき、明日の朝は温めるだけで済むようにしましょう。
そのためにも、調理器具やカトラリーを購入せねばなりません。
最低でもナイフとカッティングボードと小さめのお鍋が必要ですし、スプーンやフォークなども。
色々なお店を回り、必要なものを買い揃えるころには、辺りは薄暗くなっていました。
「ただいま戻りました」
「っ、あ…………おかえり」
「えっと? どうかしました?」
エドの顔が妙に焦ったようなものになっており、言葉を妙に詰まらせていました。
そして、その様子をカウンターにいた常連のおじさんに笑われていました。
おじさんは大笑いしながらカウンターをバンバンと叩いています。
「っ、なんでもねぇよ。それより食材は? 預かろうか?」
今から作って明日は温めるだけにすると話すと、なんでそういうところは庶民的なんだよと言われてしまいました。
庶民的というよりは、召使いのように扱われていただけなんですけどね。
そういえば、あの人はどうされているでしょうか?
別に気にはなりませんが、あの人のご機嫌や新しく迎えた妻の人柄によって、使用人たちの待遇が変わりますので。
ちょっとだけ心配です。





