44:和気あいあい?
何か臭うような? これ何の臭いかしら……と考えていましたら、エドが元夫の人とその妻が盛大に吐いて、しかも漏らしてもいると教えてくれました。
「さて、これが権力というものだ。アレキサンドライトに聞きたい」
「はい」
「……ねぇ、目隠しもうよくないかい?」
国王陛下のちょっと不服そうな声が聞こえるのですが、エドに目隠しをされたままなので何も見えません。
「汚物をアレキサンドライトに見せたくありません」
「はぁ。分かったよ。なーんか間抜けだなぁ」
溜め息を吐きながら聞かれたのは、これからもこういったことが起こるかもしれないが、それでもエドの側にいる勇気はあるのかということでした。
私の目を覆っているエドの手をタップして、外してもらいました。
ちゃんと目を見て伝えたいですからね。
「いまこの瞬間も膝は震えていますが、それがエドヴァルド様を諦める理由にはなりません。綺麗事ではありますが、愛するということは、相手の全てを受け止めると同義だと思うのです」
「受け入れるではなくて、受け止めるなのかい?」
「はい」
何でもかんでもは受け入れたら駄目だと思います。どんな聖人君子だって何かに違反してしまうことがあるかもしれない。話を聞いて、考えを理解し、受け入れられなくとも受け止めて落としどころを探る。
私は愛する人とはそういう関係でいたいのです。
「なるほどな。エドヴァルドもそうなんだな?」
「ええ」
「良い伴侶を見つけたな。幸せになれよ」
「っ、ありがたき御言葉」
国王陛下が驚くほどに柔らかく微笑みました。そのお顔が為政者というよりは、父親のそれでした。
ついぞ私には向けられることのなかったもの。少しだけ羨ましく感じてしまいます。
「あぁ、アレキサンドライトもお父様って呼んでいいよ」
「へ?」
「それはやめろ」
「はははは! 嫉妬は醜いぞ、エドヴァルド」
数メートル先には義母の亡骸とそれを抱くお父様、汚物に塗れた二人がいる中で、なぜか和気あいあいとした空気。
この状況には、流石に慣れることはないだろうなと思いました。





