31:デート相手は?
カフェに戻ると、エドにずいぶん買い物してきたんだな?と興味津々に荷物を見られました。
なんと言い訳したものかと考えていましたら、夕方常連のキーラさんが「あら、女の買い物の中身は聞いちゃだめよ。無粋な男は嫌われるわよぉ?」と言ってくださいました。
「お、おぅ」
エドがタジタジしていて、ちょっと可愛かったです。
部屋に荷物を置いてカフェに戻ると、キーラさんがまだいたので、相席をお願いしました。
「あら、いいわよ。座って座って!」
隣の席の座面をポンポンと叩かれました。内緒話をしたいんでしょ?と。なぜ分かったのでしょうか?
「顔に出てます?」
「ええ。すっごく」
そう笑われて、ちょっと恥ずかしかったものの、相談はしたいのでキーラさんの隣に座りました。
小麦色の真っ直ぐな髪をひとつ結びにした、凛とした女性。何より、ナチュラルに見えるお化粧がとても気になっていたのです。
「あの……明日、人生初のデートに行くことになりまして、お化粧のコツを教えてほしいなと」
お化粧をしたことがなく、サブリナ様がプチプラというもので一式を揃えてくださりはしたのですが、使い方が全くわからないのです。
「デート!? アレク、デートするの!? 誰と!」
「しっ、しー! 声が大きいですっ」
「はぁぁぁ!? アレクちゃんがデートだとぉ!? エド! どうなってんだよ」
「まじで何やってんだよ、エド! アレクちゃんがどこかの馬の骨に持ってかれるぞ」
カフェにいたお客さんたちが、ガタガタと立ち上がり、なぜかエドに怒鳴っていました。
「えっと、あ、あのっ」
「悪かったな。馬の骨で」
エドが物凄く不機嫌そうな顔で、カウンター席のおじさんにドンと出来上がった料理を渡していました。
「「は? …………はぁぁぁぁ!?」」
「うるせぇ。店で騒ぐな。追い出すぞ」
「ちょ、ちょっと待て、エドがデートの相手かよ!」
エドが舌打ちしながら悪いかよと呟くと、おじさんがガクリと項垂れました。
「それはそれで納得行かねぇ。こんなよく分からんヤツより、身元のしっかりしたヤツがいいよぉ」
「おっさんの希望なぞ知らん。アレキサンドライトは、俺がいいって言ってんだよ。な?」
「えっ…………あっ、ひゃうっ」
急に話を振られて、変な返事をしてしまいました。顔が熱いです。火が出そうです。
「んっもぉ、おっさんたちうるさいわね。ご飯食べたらアレクの部屋に行ってもいい? 化粧教えてあげるわよ」
「はい、ぜひ! よろしくお願いいたします」
「いいわよ」
はやく食べて行きましょ、もっとうるさくなるわよ、と言われ慌てて夕食を食べました。





