27:啄むようなキスを
エドに全部吐き出していいと言われて、覚悟を決めました。
「元夫の人と結婚していたことが、恥ずかしいです。エドにそれを知られているのが恥ずかしいです。自分の意見を持たず、流されるままに生きてきたことを知られているのが、酷く恥ずかしいです」
「ん。なんでそんなに恥ずかしいと思うんだ?」
「エドに呆れられたくないから。嫌われたくないから」
「っ、ん。ありがとうな」
なぜかお礼を言われました。わけが分からずきょとんとしていましたら、エドがクスクスと笑い出しました。
「俺、アンタに愛されてんだな、って思ってな」
「あ、ぅ、あ……はい」
顔から火が出るかと思いました。
なんで嫌だったのか、恥ずかしかったのか、ハッキリとした理由は自分で分かってなかったのです。エドに言われて、理解できてしまいました。
――――好き。
「好き」
気付いたら声が漏れ出ていました。
「好きです」
「俺もだ」
「エド…………抱きしめてください。キスしてください。好きって言ってください」
「んははっ! あぁ、いいよ」
エドが立ち上がって私の側に来ると、勢いよく抱き上げて、下からチュッと触れるキスをされました。
縦抱きの状態で移動して、エドがベッドに腰掛けました。
私はというと、エドの膝の上に座らされたのですが、股を開いてエドを跨ぐようにして向かい合わせ。なんというか、とても破廉恥な格好です。
「あっ、えっ……あのっ」
「アレキサンドライトがしてって言ったんだろ? ほら」
エドにギュッと抱きしめられました。
身体同士が密着して、お互いの体温が混ざっていくような不思議な感覚です。
心臓がバクバクと鳴り響きすぎて、他の音が遠くに聞こえます。
「アレキサンドライト」
それなのにエドの声はハッキリと、脳を震わせるかのように聞こえるのです。
「アレキサンドライト、愛してる」
エドの片腕に腰をさらに抱き寄せられて、身体の密着度合いがさらに高まって、なぜかブルリと身体が震えました。
お腹の奥底がむず痒いような、苦しいような。
エドの肩にもたれ掛かってなぜか乱れている息を整えていましたら、彼が背中をスルリと撫でました。
「んっ!」
「……その反応はくるな。アレキサンドライト」
エドに名前を呼ばれて顔を上げると、下から啄むようなキスをされました。
何度もチュッチュッと触れるだけのキス。
「アレキサンドライト」
「はい」
「今度の休み、デートしようか」
「デート!」
私がビックリとした声を上げてしまったので、エドが嫌だったかと首を傾げて聞いてこられました。
決して嫌ではないのです。
ただ、なにぶん初めてのことですので、デートでは何をすればいいのかが分かりません。素直にそう伝えると、今度はエドがビックリとした声を上げました。
「初めてだと!?」
「はい。デートというものをしたことがありません。それで、何をするのですか?」
「な、何を……」
エドが急に口ごもり、何かを考え込んでいました。うーんと唸ったり、いやしかし……と何やら悩んでいる様子です。
デートとは、そんなに悩ましいものなのでしょうか?





