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24:光と影

 



▼▼▼




 レギーナが行きたいと言っていた、王都で一番人気のドレス店に来た。

 どれだけの地位があろうと、どれだけ金を積もうとも、優先度は変わらず予約制。

 半年以上前から予約をしていた。レギーナのために。

 正式に妻として連れていけることの嬉しさを胸に抱き――――入店拒否された。


「大変申し訳ございません。今後一切のお取引はお断りさせていただきますわ」


 何を言っても、そう断ってくる店主。

 どんな圧力にも屈しないと有名で、この店の後ろ盾がやんごとなきお方だとか、様々な噂がある。それは、貴族たちの中では有名な話だった。


「パウル様、なぜですの! なぜ私がこのような辱めを!? 酷いわっ!」

「すまない、レギーナ。なにがあったか調べるから、ねっ? ほら、宝石商に行こう?」

「ドレスも! 買ってくださいまし!」

「あぁ、もちろんだとも」


 レギーナの機嫌を取りつつ、部下たちに調べさせて分かったのは、あのドレス店にアレキサンドライトが入り浸っているということ。

 そして平民街のカフェに住んでいるということ。


 ――――こんな近くにいたのか!


 ドレス店の店主にありもしない私の悪口を言い、来店しても断るよう仕向けたのはアレキサンドライトだろう。

 この私に恥をかかせた報いを受けてもらおうじゃないか。




 カフェの店主が出掛けたと報告があり、建物にはアレキサンドライトしかいないと言われた。

 馬車を走らせて平民街のカフェに向かった。

 部下に裏口の鍵を壊させ中に侵入する。話では二階にいるとのことだった。


「私はここで見張っておりますので」

「あぁ」


 そうして二階に上れば、いくつもの部屋があった。

 どの部屋か調べておけよとイラッとしたが、ドアの下から光が漏れている部屋があった。


 ――――ここか。


 耳を澄ませれば、鼻歌が聞こえてきた。聞き覚えのある声。

 ご機嫌でいいものだな? 私に恥をかかせ、レギーナの機嫌を損ない、何がしたい? 何の恨みがあるというのだ。貧しく酷い扱いをされていたところを救ってやったのに、こんなふうに裏切られるとは思っていなかった。

 この報いは必ず受けさせる。


 そうして、アレキサンドライトを部屋から引きずりだそうとしていたら、店主が帰って来てしまった。


「何をしているんだ!」


 くそっ、見張りの護衛は何をしているんだ。どいつもこいつも役立たずばかりだ。


「アレキサンドライトを引き取りに来た。保護してくれた謝礼はする」

「は?」

「私は、あの女の主人だ」

「は?」


 なんだこの店主は。無駄に体格がいいのが気になるが、そんなことよりも酒臭い。あと目が据わっていて、話が通じるのか少し不安になった。


「私は、アレキサンドライトの主人だと言ったんだ」

「……帰れ。殺すぞ」

「なっ!?」


 酔っぱらいか! 酔っぱらいは何をするか分かったものではない。

 だが相手は脚を引きずっているし、こちらは階段の奥側にいる。何かあっても、階段へ押して行き落とせば体格差など関係ないだろう。私もそこそこ鍛えているからな。


「私はヘンチュケ侯爵である。平民ごときが私に手を出してみろ! 一族郎党根絶やしにされるぞ」

「……出来るもんならしてみろ」

「ハッ! 酔っ払いとは、脳が使えんのか。地位の差も判断できぬとはな」

「俺はな、地位をかざすのは好きじゃねぇ。だが、お前みたいな馬鹿にはこれが一番効くってのは、酔ってても分かるんだよ」


 男がそう言ってズボンのポケットから出したのは、王の子であるという証の指輪。

 それは、偽装するだけで死罪になるもの。そもそも特殊な技術が使われており、偽装も難しい。


「っ……なぜお前がそれを…………」

「残念なことに、王族だからだろ」


 聞いたことがある……継承権を放棄した落胤がいると。まさか、こいつが!?


「俺と関係者以外は知らないことだがな、ここには暗部の監視が付いている。侵入した時点で、お前の家には制裁が入る。あのクソ親父が、それを条件にしやがったからな」


 過保護にも程があると男が頭を掻いていたが、過保護とかいう問題じゃないだろう! 我が家に制裁が入る!? なんだそれは!


「つまりだ……さっさと俺の城から出ていけっ!」


 男に怒鳴られ、ハッとした。家に制裁が入る。いつどのタイミングかわからない。家にはレギーナがいるんだぞ!?


 クソッ! クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソッ! クソ、クソクソクソクソクソ! クソッ――――!




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― 新着の感想 ―
ブティックについては元クズ夫に対する反発は勿論あるでしょうけど、それだけで高位貴族夫妻を出禁にはしませんよ、普通は。 たぶん出戻り即再婚した最愛のレギーナ夫人が既に元婚家で何かしらやらかしたからこその…
前頁の感想、ヒロインの元契約夫の地位を間違って解釈しておりました。申し訳ございません。初頁を見直す事無く別の作品とごちゃ混ぜになって、勝手に元契約夫が王子と思い込んでおりました。 さて、今頁でエドが王…
過ー保ー護ー!!!!。お父さんどんだけ過保護なの息子さんもう少しでアラサー?のはず。手元で育てられなかった反動? 元夫のやらかしからアレクの実家までいくのかしら?ワクワクするわね。
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