14:パン・ペルデュ(フレンチトースト)
「……何してんだ?」
ドアがノックされて、エドが戻ってきたのだと分かりましたが、立ち上がれませんでした。
だから、お願いしたのです。ドアを開けて入ってくださいと。今ちょっと無理なのでと。
「気にしないでください」
「いや、無茶な」
「…………エドのせいです。エドがあんな破廉恥なことするからっ」
「はれんち……っ、くくくくく」
エドが笑いを堪えながら部屋に入ってきてテーブルの上にお皿を置くと、私の前にしゃがみ込みました。
「立ち上がれないんだな?」
「はい。エドのせいで」
「分かった分かった。俺が悪い。アンタの初心さをナメてた」
なんだかバカにされた気がするのですが、エドはバカにしてねぇよと言いながらも笑っていました。
エドが私の両脇に手を入れて、持ち上げるようにして立たせてくれたのですが……なんと言えばいいのでしょうか。幼い子どもを扱うような感じとでも言えばいいのか……とにかく、なんだか不服に感じてしまいました。
「なんで怒ってんだよ」
「別に……怒ってますけど…………」
「どっちだよ。ったく、ほら座れ」
テーブルのイスに座るよう促され、ヨタヨタしながら移動しました。
イスに座ると、エドが持ってきていたお皿の中のものをフォークでプスッと刺しました。
「ほら、口開けろ。あー」
「え? あー?」
あー、と言われて真似をしたら、口にパンで作ったデザートをムギュッと詰め込まれました。
「んむ!? ふあ……パン・ペルデュですか?」
「あぁ。本来は古くてカスカスに乾いたパンとかでやるのがお勧めだが、アンタが買ってきたやつは既にそんな感じのやつだからな」
「だって……安かったんですもの」
安売りコーナーに置いてあったので、たぶん売れ残りだったのでしょう。それが更に1日経っていたので、まあ確かに水分は抜けていましたけど。
「調理次第でどうとでもなるんだから、いいパン選んできたってことだよ」
「そう、なんですかね?」
「美味かっただろ?」
そう聞かれると、確かに物凄く美味しかったです。
卵とミルクがしっかりと染み込んでいてフワフワでしたし、たっぷりのバターで焼いたらしく、香ばしさが鼻から抜けて行きました。
「ほら……」
エドがまた私の口にパン・ペルデュを運んで来ました。今度は自ら口を開けてパクリ。
「んーっ、おいひいれす」
「機嫌は直ったか?」
「はい。美味しいパン・ペルデュに免じて、許してさしあげます」
「んははは! ありがとな」
エドが少年のように笑い、私の頭をひと撫でして部屋を出て行きました。
エドが作ってくれたパン・ペルデュを、今度は自分の手で食べました。
ゆっくりと噛み締めて。
甘かったからなのか、沢山あったからなのか、お腹がいっぱいなのか、胸がいっぱいなのか……分からないけれど、夕食は入りそうになかったです。
下の方に刊行情報入れてますです。
気になられた方は、じぇひっヽ(=´▽`=)ノ





