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一話

 曇り空に同じような赤褐色の瓦屋根が並ぶ街中に、小さな列が川に沿うように進んでいる。

 その列の後方にいる子供は、道端の丸石を蹴り、川の中へと蹴り入れている。

 川は静かに流れ、その上を小さな船が不気味に滑っている。


 ところで、先程赤褐色の瓦屋根が並んでいるといったように、川を挟むように数えきれない数のレンガ造りの家が並んでいた。そのどれもが日の光によって白く焼けていて、粗末な色を眼下にさらしている。いうなれば青年のシャツのようなものである。妙にさらさらとした、違和感ばかりの残る、嫌らしい色である。


 もっとも、こう目下のことばかり見ていることも奇妙なことだが、ただ一人それらを見ていた男がいた。

 仮に名前をK・Vとすると、彼は果たして、眼前にある不思議な光景に何を思ったことだろう。


 K・Vは彼のいる質素な、言ってしまえば貧相な部屋のうちで、ただどうしようもない不平不満のままに外を見ていたにすぎない。ただその中で珍妙な列を見つけて、それに注視していたのだろう。

 こう述べているとK・Vは異郷の人のようだが、実際その通りで、彼はこの町から遠い、何百里も離れた異国の人であった。


 国を出るというのは、今でもやっと近所で見られるか見られないかの時期であるから、当然この時分では禁止されていたのだろうが、あろうことかK・Vは遠く離れた異国で窓の外を眺めている。


 もうそろそろ正午という刻であろうか、理解の叶わない列が完全に消えるのを見届けると、K・Vはその部屋を後にした。

 粗末な部屋の外には暗い、汚らしい、それもまた粗末なものに違いのない廊下がある。

 その廊下の上に、一人の女がいる。ぼろきれのような服──といってもこの国では大して珍しくはない。K・Vの着ている燕尾服の方が幾分も珍しいことだろう──を着た女は、K・Vを見ると初々しくも頭を下げる。


「旦那様どうか致しましたか?」と、女は依然としてその視線を貧相な廊下へと向けたままであった。

「いや、ただどうしたという訳ではない。友人でも会いに行こうと思うのだが、下品な、馬鹿らしい人が集まる場所を知らないだろうか」と、K・Vは問いかける。

「ああ、そういった場所は二番街の方にあると思われます」

「そうか、ありがとう。また帰ってくる」


 廊下に足音を響かせながら、女を背に二番街の方へと向かっていく。

 低い天井は大して背が高くない彼にとっても窮屈で、この陰惨な場所からは早急に逃げ出したいに違いない。

 ただ、玄関を出ると更に陰鬱とした町があった。


 先程まで見ていた憎い白壁は、眼前で見ると更に醜悪である。

 中の気泡がはじけたのだろうか、何かが生まれ落ちたように小さな穴が無数に空いている。波打った外壁は思うに、この町の怠惰さであった。

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