待ち望んだ日
僕は結婚式の日を指折り数えて待っていた。カレンダーの数字が1つずつ消えていくたびに、胸の奥からこみ上げてくる、痛みにも似た期待感が高まっていった。この日が訪れることを、どれほど夢見てきたのだろう。幼馴染である彼女と、一緒に未来を歩む。その瞬間が今、まさに目の前にある。そう思うだけで、胸が張り裂けそうになるほどの期待がこみ上げてきた。
式場の前に立ったとき、澄み渡る青空が広がっていた。太陽の光が式場全体を優しく照らし、まるで僕たちを祝福しているかのようだった。彼女が白いウェディングドレスに身を包み、僕の目の前に現れる瞬間をずっと想像していた。笑顔で手を取り合い、これからの未来を共に歩んでいく……そんな夢をずっと抱き続けてきた。
彼女との出会いは、僕たちがまだ幼い頃だった。近所に住んでいた彼女とは、自然と一緒に過ごすことが多かった。幼稚園では同じ組だったし、放課後は一緒に近所の公園で遊んだ。僕たちはいつも一緒だった。子供の頃から、彼女の笑顔を見ると、なぜか心が安らいだ。小さな頃はそれが「特別な気持ち」だとは理解していなかったけれど、今思えばその頃から僕は彼女に心を奪われていたのかもしれない。
中学生になってからも、彼女との関係は変わらなかった。いや、むしろもっと深まっていった。部活の帰り道、彼女と一緒に帰るのが日課になり、彼女が僕に話す日常の出来事や悩みが、いつの間にか僕にとっても大切なものになっていた。彼女の声や笑顔、ふと見せる寂しそうな表情が、僕の心を揺さぶる。それが「恋」という感情だと気づいたのは、高校生になってからだった。
僕は高校の文化祭で、彼女に告白した。あの時の彼女の驚いた表情は今でも忘れられない。そして、照れくさそうに「私も……」と小さな声で返事をしてくれた瞬間、世界が一変したように感じた。二人の距離が一気に縮まり、恋人としての関係が始まった。
式場に足を運ぶと、純白のユリと淡いピンクのバラで埋め尽くされていた。甘く、どこか物憂げな香りが、会場全体を満たしている。白い壁と大きな窓から差し込む光が、会場全体を明るく照らしていた。床に敷かれた赤い絨毯が、この場所を一層厳かに見せていた。僕は式場の中央に立ち、彼女が現れるのを待っていた。彼女は僕の運命の人だと、心から信じていた。
両親も、彼女の両親も、式場内で話し合っていた。彼女の家族は昔から僕の家族と仲が良く、僕たちの結婚を誰よりも喜んでくれている。彼女の父親は少し緊張しているようで、何度もスーツの袖口を直していたが、母親は彼女が結婚することを心から喜んでいるようだった。父が微笑みながら言った。「お前たち、ついにここまで来たか。」その表情には、少し誇らしげなものが混じっていた。母は涙を拭いながら、「本当におめでとう、幸せになってね」と微笑んでくれた。僕の両親も、彼女の両親と同じように感動している様子で、母はそっと手を握りしめて僕を見守っていた。
僕は、今までの思い出が走馬灯のように浮かんできた。小さな頃、彼女と一緒に遊んだ日々。二人で秘密基地を作り、夢を語り合ったあの夏の日。彼女の笑顔に心を奪われた瞬間が何度もあった。彼女と手をつないで歩くことが、どれほど嬉しかったか思い出す。ずっとこの日を待ち望んでいた。彼女との未来を築くための第一歩だと信じていたから。
「今日は特別な日なんだ。」心の中で何度も呟いた。彼女との未来を思い描きながら、もう一度自分に言い聞かせる。彼女がこの場所にいて、今まさに誓いを交わす瞬間が訪れることを、心から楽しみにしていた。
友人たちの笑い声が耳に心地よく響く。祝福の言葉が緊張を和らげてくれる一方で、僕はスーツの襟を何度も直していた。手のひらには、うっすらと汗が滲んでいた。特に、彼女の友人たちも華やかに装飾されたドレスを身にまとい、彼女のために心を込めて準備をしている様子が印象的だ。
式の準備が進むにつれて、周囲の雰囲気も徐々に緊張感を増していった。お互いの親族や友人たちが集まり、笑顔で談笑しているが、その裏には期待と不安が交錯していることがわかった。僕もその一員として、ただ期待するだけではなく、これからの人生を共にすることへの責任を感じていた。
やがて、挙式の時間が近づいてくる。静かに場内の雰囲気が変わっていくのを感じた。笑顔で談笑していた親族たちも、次第に厳粛な空気に包まれ、誰もがこの瞬間を待ち望んでいるのがわかった。僕の心臓は高鳴り、鼓動が耳に響く。これから彼女が、僕の前に現れる。その瞬間が、僕の人生の中で最も大切な瞬間になるだろう。
彼女のドレス姿を想像するたび、心がドキドキして止まらない。これからの人生を共に歩むための第一歩が、今まさに始まろうとしている。式場の扉が開くその瞬間、全ての期待と喜びが溢れ出すことを願っていた。
「もうすぐだ。待っててくれ。」
心の中で彼女に語りかける。彼女はどんな気持ちでこの瞬間を迎えているだろうか。少しは緊張しているかもしれない。だけど、きっと僕と同じように、この瞬間を待ち望んでいるはずだ。彼女が僕の隣に立ち、一緒に誓いの言葉を交わすその瞬間が、今すぐにでも訪れてほしかった。
結婚式の準備が整い、期待に胸を膨らませている今、まさかこの瞬間が僕の人生の転機になるなんて想像もしていなかった。友人たちの笑顔、家族の祝福、そして何より彼女との未来に思いを馳せていた。だけど、まさかこの幸せな日が、僕の心に深い傷を残すことになるとは……。