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『40歳OLと高校生、世間では“母子”、本当は恋人――バレたら即終了の年の差ラブコメ、始まります。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
シーズン5《社会人5年目&家族拡大 第二子妊娠・出産に家族の試練と再生編》
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第7話「おかえりと、いってらっしゃい」



春日井家の朝は、静かに始まった。


いつもならキッチンに立つはずの真希が、今はベッドで安静に横たわっている。

代わりにエプロンを結ぶのは、夫・悠真だった。


「……卵焼き、ちょっと焦げたかも……」


「いい匂いするよ! パパ!」


隣で制服の襟を整えている結翔が、満面の笑みでそう言った。

リビングの窓にはやわらかな朝日が射し、どこか静かで優しい空気が満ちている。


――今日から、育休が始まる。


社会人5年目にして決断した「一時離脱」。

迷いがなかったと言えば嘘になる。

だが、家族のために選んだ道だった。


「いってらっしゃい、パパ!」


「……ただいま、って言う日まで、ちゃんと頑張るからな」


結翔と握手を交わし、ベッドで横になる真希にもそっと囁く。


「……行ってくるよ。俺、父親してくるから」


「……気をつけてね。お弁当、冷蔵庫の上よ」


「はーい、主婦力上がりそうです」


冗談のように笑っても、胸の奥には確かな覚悟が宿っていた。


その日、悠真は“退職”ではなく“継続”を選び、

社内での「仮引継ぎ・補佐」体制を整えるため、動き出していた。


まず頼ったのは、同期の仲間たち。


進藤あかり。

赤井美波。

村瀬翼。

瀬川陽翔。


「……引継ぎや業務の一部、頼めるか?」


悠真が口を開いた瞬間、全員が即座に頷いた。


「もちろんです。あたしでよければ、何でも」


あかりは即答した。

一瞬でも迷うことがなかった。


「課長代理って肩書き、まだちょっと緊張するけど……春日井さんの分まで頑張る」


「悠真、お前が家庭のために休むって聞いてさ――正直、ちょっと感動した」


村瀬翼がぼそりと呟いた。


「仕事人間だったお前がそこまで言うなら、俺たちも動かないとな」


「うん、何より“家族を選ぶ”って、やっぱかっこいいっすよ」


瀬川陽翔もニカっと笑う。


――男だからとか、社会人としてどうとか、

そんな“空気”の前に、ちゃんと彼らは「人として」の言葉を返してくれた。


そして、もうひとつ。

経営陣への「正式な」協力要請。


「社長。副社長。……ご相談があります」


悠真は、ルクシアの頂点に立つふたり――

氷室結衣社長、そして橘理沙副社長の前に頭を下げた。


「春日井真希課長の一時離脱に伴い、進藤あかりを後任代理とし、私自身は育児に専念する期間を取りたいと思っています。

業務体制上の調整やフォローについて、ご協力をお願いしたく……」


言葉が途切れる前に、氷室社長が口を開いた。


「了承します。むしろ、あなたがそうしてくれて、私は安心しました」


「……え?」


「あなたが家庭を大切にしていることを、春日井も喜んでいるでしょう。

ルクシアという会社も、“そういう決断ができる人材”を育てられる場所でありたい」


氷室の声は、いつになく柔らかかった。


「春日井さんには私からも個人的に声をかけておくわ。橘、あとは連携お願い」


「了解。進藤さんのフォローは私と瀬川で分担するわ。事務管理とプロジェクト進行の整備は私が担当する」


橘副社長は即座に動き出した。

その背中に、悠真は思わず――胸の奥で小さく、ありがとうと呟いた。


帰宅後、玄関を開けると、いつもと違う匂いがした。


「おかえりなさい。パパ」


ベッドから顔を出した真希が、笑って迎えてくれた。

そして、その横には……


「パパー! えほん読んでー!」


すでにパジャマ姿の結翔が、両手を広げて突進してくる。


「はいはい、まずは手洗いな?」


悠真は笑いながら屈み込む。


“仕事”という名前の鎧を脱ぎ捨て、

“父親”という役割を、いま真正面から抱きしめる。


おかえり。

そして――いってらっしゃい。


春日井家の、少しだけかたちを変えた日常が、

今日もまた始まった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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