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『40歳OLと高校生、世間では“母子”、本当は恋人――バレたら即終了の年の差ラブコメ、始まります。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
シーズン5《社会人5年目&家族拡大 第二子妊娠・出産に家族の試練と再生編》
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第4話「産婦人科と、すれ違い」




火曜日の午後――雨のにおいを含んだ曇天のなか、春日井真希はひとり、病院の待合室にいた。


壁際のテレビには、どこか間延びした健康番組が流れている。

だがその音も耳に入らない。

指先でエコー写真を握りしめながら、彼女は黙って自分の順番を待っていた。


(……本当は、今日も悠真が一緒に来る予定だった)


けれど、急遽入った関西方面の出張。

営業部の若手として育成中の悠真にとって、現地での大型商談同行は大きなチャンスだった。

真希自身も「行ってきなさい」と背中を押した。

けれど――やはり、どこか、胸の奥が空っぽのように感じてしまうのだ。


「春日井真希さん、どうぞー」


名前を呼ばれて診察室へ入る。

今日の検査も、胎児ふたりとも順調だった。


心音はふたつとも明瞭で、推定体重も標準。

医師の言葉に、理屈では安心すべきだと分かっていた。


けれど、どうしても――


「……ひとりで聞くと、なんだか不安になるのよね。良い知らせでも」


ぽつりと呟いた真希に、年配の助産師が微笑んだ。


「そうね。わかりますよ、お母さん。

“聞く”だけじゃなくて、“共有する”ことで、安心って生まれるものですから」


“共有”。

それは――「ふたりで育てていく」という覚悟と、その証だ。


真希はエコー写真をバッグにしまい、深く息を吐いた。

帰り道、どこか空虚な足取りで病院を出た瞬間、スマホが鳴った。


《悠真(既読なし)》

――【写真送ってくれてありがとう!仕事終わったら絶対電話する】

【会いたい……って、変かな】


その短いメッセージが胸を衝いた。


(……バカね、こっちこそ会いたいって思ってたのに)


返信を打とうとしたそのとき。

ふと、隣に立つ妊婦が誰かと楽しげに電話しているのが目に入った。


「うん、双子って言われたよー!そうそう、性別はまだ。楽しみー!」


屈託のない笑顔。

妊娠を“堂々と”喜び合える関係性。

心から羨ましいと思ってしまった自分が、少しだけ嫌だった。


(私だって……本当は、一緒に通いたい)


(エコーを見て、あなたが笑う顔を隣で見たかった)


雨が降り始めた。

傘を差すのも忘れて、真希はしばらくその場に立ち尽くした。


その夜。

帰宅した真希が濡れた服のまま玄関に入ると、電話が鳴った。


「……真希さん! 今、戻ったとこ。遅くなってごめん……今日どうだった? 病院、問題なかった?」


「……ふたりとも元気だったわ。心音、しっかり聞こえた」


「そうか……よかった……」


電話越しの声に、いつもの調子がなかった。

逆に言えば、それは――彼もまた、寂しさを抱えていたということ。


「……次は、一緒に行きたい」


「……うん。俺も、そう思ってた」


ふたりの沈黙が、優しい余白として電話の向こうに溶けていく。


たとえ今は、すれ違うことが多くても――

“共有する”という想いがあれば、

家族の絆は、きっと揺らがない。


エコー写真は、明日またリビングに貼ろう。

家族みんなが、同じ未来を見つめるために。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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