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番外編④:社内懇親会、知られざる“座席操作”


毎年恒例、ルクシアの社内懇親会。

今年はホテルの宴会場を貸し切り、立食ビュッフェ形式で行われることとなった。


「悠真くん、ほんとにこの会、参加するの……?」


「上から言われちゃってさ。真希だって課長だし、逃げられないだろ?」


「それはそうだけど……今日ばかりは、マジで“絶対に接近禁止”よ?」


──そう、ふたりは“家では夫婦、会社では上司と部下”。

しかも子どもまでいる事実は、社内には完全非公開。


一歩間違えれば、即バレ。

懇親会のような“ざっくばらんな場”は、最大の危機なのである。


 



「……というわけで、これが“今回の懇親会・最重要任務”だ」


陽翔が渡したのは、1枚の“座席配置図”。

そこには、以下のように書かれていた。


◎作戦名:『近づけるな、春日井と悠真』

◎配置担当:陽翔

◎協力者:村瀬・進藤・社長(黙認)

◎特記事項:一緒に写るな。視線を交わすな。うっかり触れるな。


「社長、これ見てましたけど、苦笑いで“ほどほどにね”って言ってましたよ」


「……うちの社長、理解あるけど容赦はないからな……」


 



開宴。


グラスを手に、各テーブルで乾杯と挨拶が続いていた。


「こちら、商品企画部の皆さんでーす!」


「続いて、育児マーケチームの皆さん!最近人気の“親子体験コンテンツ”を……」


アナウンスと共に、プロジェクターに映し出されるチーム写真の数々。


──と、その時。


「ちょっと待ってください。今、映ったあの赤ちゃん……悠真くん、待ち受けの写真と一緒じゃない?」


鋭く反応したのは、商品開発の中園恵里だった。


「えっ、うそ……マジで? 悠真くん、赤ちゃんいるの?結婚してるの!?」


場の空気がざわつき始める。


(やばい……!やばい……!)


悠真の視線が宙をさまよう。


 



──が、次の瞬間。


「それ、俺の姉の子なんだよ!」


横から声を上げたのは、陽翔だった。


「悠真くん、姉ちゃんの子をすげー可愛がっててさ。スマホの待ち受けにしちゃうぐらいで……な?」


「……あ、そ、そうなんです……義姉の子で……(涙)」


即席のアリバイを構築する陽翔と悠真。

間一髪のタイミングで、なんとか“決定打”を回避したのだった。


 



その後、懇親会も終盤へ。


「ふう……なんとか乗り切ったな……」


「最後、村瀬が“席替えカード”をすり替えてくれてなかったら、隣に座ってたからね……」


実は会場入り前、ランダム席カードの中に“すり替え済み”のカードを忍ばせ、

真希と悠真が別グループになるよう、陽翔と村瀬が裏で細工していたのだ。


「……っていうかさ」


真希が、スマホを悠真にそっと見せる。


そこには、ビュッフェ前でお皿を持って並ぶ悠真と、少し後ろでピースしている真希が――


「同じ写真に、写っていた。」


「……これ、誰かSNSに上げてないよね……?」


「俺がさっき、社員に“撮った写真くれ”ってLINEして全部回収した。安心しろ」


「……ほんと、陽翔くんいなかったら、今頃うち全焼よ……」


 



その夜、陽翔の手元には一枚の“戦利品”が残されていた。


◎社内懇親会_操作記録

『作戦成功。2人の接触時間:0分36秒。写真接触:未発覚。アリバイ偽装:完全完遂。』


「……よし」


ひとり、グラスを掲げる陽翔。


この日、最も働いたのは、上司でも、社長でもなく――

「謎の座席操作員」と化した男、氷室陽翔だった。


 



かくして、“社内懇親会”という地雷原の夜は、

表向き、何事もなかったように幕を閉じたのである。


だがその裏で幾つもの“座席操作”と“隠密連携”が行われていたことを、

社員たちはまだ知らない。


 


──そしてファイル名は、こう記録されている。


『2025春 社内懇親会_機密作戦コード:春パパ阻止』



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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