番外編④:社内懇親会、知られざる“座席操作”
毎年恒例、ルクシアの社内懇親会。
今年はホテルの宴会場を貸し切り、立食ビュッフェ形式で行われることとなった。
「悠真くん、ほんとにこの会、参加するの……?」
「上から言われちゃってさ。真希だって課長だし、逃げられないだろ?」
「それはそうだけど……今日ばかりは、マジで“絶対に接近禁止”よ?」
──そう、ふたりは“家では夫婦、会社では上司と部下”。
しかも子どもまでいる事実は、社内には完全非公開。
一歩間違えれば、即バレ。
懇親会のような“ざっくばらんな場”は、最大の危機なのである。
◆
「……というわけで、これが“今回の懇親会・最重要任務”だ」
陽翔が渡したのは、1枚の“座席配置図”。
そこには、以下のように書かれていた。
◎作戦名:『近づけるな、春日井と悠真』
◎配置担当:陽翔
◎協力者:村瀬・進藤・社長(黙認)
◎特記事項:一緒に写るな。視線を交わすな。うっかり触れるな。
「社長、これ見てましたけど、苦笑いで“ほどほどにね”って言ってましたよ」
「……うちの社長、理解あるけど容赦はないからな……」
◆
開宴。
グラスを手に、各テーブルで乾杯と挨拶が続いていた。
「こちら、商品企画部の皆さんでーす!」
「続いて、育児マーケチームの皆さん!最近人気の“親子体験コンテンツ”を……」
アナウンスと共に、プロジェクターに映し出されるチーム写真の数々。
──と、その時。
「ちょっと待ってください。今、映ったあの赤ちゃん……悠真くん、待ち受けの写真と一緒じゃない?」
鋭く反応したのは、商品開発の中園恵里だった。
「えっ、うそ……マジで? 悠真くん、赤ちゃんいるの?結婚してるの!?」
場の空気がざわつき始める。
(やばい……!やばい……!)
悠真の視線が宙をさまよう。
◆
──が、次の瞬間。
「それ、俺の姉の子なんだよ!」
横から声を上げたのは、陽翔だった。
「悠真くん、姉ちゃんの子をすげー可愛がっててさ。スマホの待ち受けにしちゃうぐらいで……な?」
「……あ、そ、そうなんです……義姉の子で……(涙)」
即席のアリバイを構築する陽翔と悠真。
間一髪のタイミングで、なんとか“決定打”を回避したのだった。
◆
その後、懇親会も終盤へ。
「ふう……なんとか乗り切ったな……」
「最後、村瀬が“席替えカード”をすり替えてくれてなかったら、隣に座ってたからね……」
実は会場入り前、ランダム席カードの中に“すり替え済み”のカードを忍ばせ、
真希と悠真が別グループになるよう、陽翔と村瀬が裏で細工していたのだ。
「……っていうかさ」
真希が、スマホを悠真にそっと見せる。
そこには、ビュッフェ前でお皿を持って並ぶ悠真と、少し後ろでピースしている真希が――
「同じ写真に、写っていた。」
「……これ、誰かSNSに上げてないよね……?」
「俺がさっき、社員に“撮った写真くれ”ってLINEして全部回収した。安心しろ」
「……ほんと、陽翔くんいなかったら、今頃うち全焼よ……」
◆
その夜、陽翔の手元には一枚の“戦利品”が残されていた。
◎社内懇親会_操作記録
『作戦成功。2人の接触時間:0分36秒。写真接触:未発覚。アリバイ偽装:完全完遂。』
「……よし」
ひとり、グラスを掲げる陽翔。
この日、最も働いたのは、上司でも、社長でもなく――
「謎の座席操作員」と化した男、氷室陽翔だった。
◆
かくして、“社内懇親会”という地雷原の夜は、
表向き、何事もなかったように幕を閉じたのである。
だがその裏で幾つもの“座席操作”と“隠密連携”が行われていたことを、
社員たちはまだ知らない。
──そしてファイル名は、こう記録されている。
『2025春 社内懇親会_機密作戦コード:春パパ阻止』
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