番外編③:ファミレスで鉢合わせ!?
日曜の昼下がり。
郊外のファミリーレストランには、週末を楽しむ家族連れが次々と訪れていた。
「結翔~、こっちの椅子に座ろうね~。お子さまランチ、あと少しで来るからね」
真希が赤ちゃん用チェアに座らせながら微笑みかける。
隣で悠真は、絵本とおもちゃを広げながら“周囲の目”にピリついていた。
「……なぁ、もうちょっと個室っぽい席にすればよかったんじゃないか?」
「週末は全部埋まってたの。仕方ないでしょ」
「うん、まぁ……でも、まさかあの2人が隣にいるなんて思わないって……!」
そう、隣のボックス席には――
「で、この“ナチュラルバリア・ミスト”を“子育て中の肌荒れ”と結びつけて……」
「育児あるあるを“共感マーケティング”に使う、と……よし、これ企画書に入れよう!」
進藤あかりと村瀬翼。
ルクシア広報部と商品企画部のコンビが、ファミレスで“会議風”に密談していた。
ただし、その実態は、
【裏テーマ:育児ママ向けコスメ企画のプレ調査会】
翼は育児コスメ部門の新規プロジェクト、あかりは販促PR戦略として仕掛けを練っていたのだ。
──しかも2人は、悠真と真希が“結婚して子どもがいる”という事実を知っている。
◆
(よりによって……このファミレスで、バッタリ遭うとか……!)
悠真が焦るなか――
「あら……?」
ふいに聞こえてきたのは、透明感ある柔らかな声。
「……春日井さん、悠真くん。偶然ね」
立っていたのは、氷室結衣社長だった。
その隣には、陽翔と、3人の子どもたち──翔太、廉翔、梢も一緒だった。
「ひっ、社ちょっ……」
「言わないで。ここでは“結衣さん”って呼んで。休日モードよ」
結衣が微笑む横で、陽翔が軽く手を挙げる。
そして、幼い梢が結翔を覗き込みながら「ちっちゃい……」と声を漏らした。
「可愛いわね。結翔くん」
結衣が優しく微笑むと、真希はそっと頭を下げる。
「……ご無沙汰してます、結衣さん」
「このあとの“鉢合わせ地獄”、頑張ってね。私たちは奥の席行くから……ふふっ」
◆
だが運命はそれでは終わらなかった。
さらに数分後──ファミレスの入り口からぞろぞろと、別グループが現れた。
「うわ、ここ混んでるな……あ、空いてるじゃん。あそこ座ろうぜ」
そこには、ルクシアの社員たち――
・営業部の三条陸
・商品開発の中園恵里
・法務部の小日向陽
さらには真希の同期組まで。
・総務部の榊涼
・人事部の牧村貴弘
・広報部の篠原結
・経理部の谷口彩乃
・秘書課の三浦遥
その全員が、たまたま同じファミレスで“合同ランチ”をしていたのだ。
(終わった……!この人数、絶対誰かに気づかれる……!)
真希は反射的に結翔を抱っこし、顔をうつむかせた。
悠真もそっと顔を反らしながら、翼とあかりに“助けてオーラ”を送る。
◆
そのときだった。
「えーと……皆さん、少しお静かに。こっち、“会議中”なんで」
村瀬翼が、声を張って周囲にアピールする。
進藤あかりもタイミングよく、わざとらしい声で続けた。
「ええ、今“産後ケア市場とコスメの親和性”について議論してるの」
その言葉を聞いた三浦遥がピクリと反応した。
「へぇ~、そんなプロジェクトあるんだ。春日井課長が関わってたり……しない?」
一瞬、空気が止まる。
だがそこに陽翔がすっと割って入った。
「その件はまだ社外秘ですよ。ね?」
(……ナイスすぎる、陽翔)
思わず心の中でハイタッチする悠真。
◆
──結局、ファミレスは無事(?)終了した。
「……はぁ。疲れた……ごはん食べただけなのに、社内調整級の緊張感だったわ」
真希がため息を漏らす。
悠真も苦笑しながら、結翔をチャイルドシートに乗せる。
その日、翼とあかりは新たな資料にこうメモを残した。
『【社外対応・危機回避編】:育児とキャリア、同時進行する家族社員への社内対応方針』
──一方で。
結衣はファミレス奥のソファ席で、こうつぶやいていた。
「……あの2人の子、いい名前ね。“結翔”……結び、翔ぶ。未来に向けて、ぴったりじゃない」
◆
こうして――日常と偶然が重なっただけの“週末の昼ごはん”は、
社内秘密と人間模様が入り混じる、まさに“スリルと絆のファミレス劇場”となったのだった。
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