表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/83

番外編②:それでも、私は“春日井課長”です


──春日井真希、職場復帰初日。


復帰の朝は、まるで新卒時代を思い出すような緊張感だった。

一歳になった息子・結翔ゆいとを悠真に託し、

育休明けのスーツに身を包み、ヒールの感覚を確かめながら出勤する。


「……ただいま、です」


自動ドアをくぐると、オフィスにはいつも通りの空気。

なのに、その空気のなかに“視線”が混ざっているのを真希は感じていた。


「春日井課長!お帰りなさい!」


「おかえりなさーい!」


笑顔で迎えてくれる後輩たちのなかに、妙に目を光らせる数人の女性社員がいた。


(……これは、“勘のいい女たち”の目……)


予感は当たる。


 



「ねぇねぇ、春日井課長って、育休中に子ども産んだってホント?」


「え、それどこ情報?」


「いや、さっき会話のなかで“おむつ”って単語が……!」


──昼休み、給湯室にて。


ホワイトボードに“産後の骨盤ケア”のメモを貼っただけで、

「子持ち確定」と判断される、女たちの洞察力は伊達じゃない。


しかも。


「春日井課長の復帰日と、営業の悠真くんが有給取った日が同じなんだよねぇ〜?」


「しかも最近、あの2人、昼休み一緒にいなくなったこと多くない?」


「まさか……できてる?しかも、子どもまで!?」


──すでに社内女子たちによる、“春日井真希=ママ疑惑”のプロファイリングは佳境を迎えていた。


 



一方その頃。


「課長、お戻りになって嬉しいです。現場もピリッと締まりますし」


と、部下の佐野が真面目な顔で書類を差し出す。


「ああ、ありがとう。……ん?」


提出書類のタイトルには、こうあった。


『時短勤務制度の申請手順案(仮)』


(え、これ……私のため?)


視線を上げると、佐野が“母としての課長”に対する尊敬を込めた瞳でこちらを見ていた。


「……課長、僕、尊敬してるんです。

育児しながら、ちゃんと戻ってきてくれるなんて……僕の姉も働くママで、」


「ちょ、ちょっと待って佐野くん!? 私、まだ“何も”言ってないんだけど!?」


慌てて言葉を濁す真希。

しかし佐野の表情は、すでに“全肯定”のフェーズに入っていた。


(……これはもう、バレてるのでは?)


 



そんな中、社内の空気を微妙に察知した人物がいた。

そう、陽翔だった。


「真希さん……いや、春日井課長。昼の会話、壁が薄いんで気をつけてくださいね」


「えっ……」


「それと、悠真のやつ……スマホの待ち受け、うっかり“例のやつ”になってたの気づいてませんよね?」


(……結翔の写真!?)


「……まさかあいつ、復帰祝いのスライドであの動画使おうとしてたとか、ないよね?」


「……悠真、爆発してしまえ」


 



そして定時直前。

社内スピーカーから流れたアナウンス。


「明日10時から、営業部春日井課長による“復職者支援と現場連携”のミニセミナーを開催します!」


(……ちょ、ちょっと待って、今私、“復職者支援”って紹介された!?)


慌てて自席で起き上がる真希。

それを遠巻きに見る女性社員たちは、目を輝かせていた。


「ねぇ、やっぱりママだよね……!」


「絶対、今日のセミナー、話の端々に出てくるって!」


 



──そして、退勤後のエレベーター。


「ねぇ、悠真くん」


「ん?」


「明日、社内スライドで“例の家族動画”とか流したら、私は一生、君を許さないからね?」


「えっ、なんでバレてるの……」


「私を、甘く見るな。私は“春日井課長”よ?」


──そう、それでも私は、母である前に“課長”である。


その背中は今日も、誰よりも真っ直ぐで、強く、そして時に優しかった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ