表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/83

第7話「妊娠を巡る小さな事件と、守りたい理由と“家族になる覚悟”――ふたりが選んだ日常の強さ」


◆【昼休みの出来事】


その日、昼休み。

真希はいつものように社内の小さな休憩スペースで、持参したお弁当を広げていた。


――今日は少し、具材を減らしておこう。においも、まだちょっとつらいし。


同じ部署の後輩たちは気づかぬふりをしていたが、それでも彼女の体調を心配する視線は感じていた。

顔色の悪さ、時折しゃがみ込む姿、そして最近の控えめなお弁当――


「春日井課長、最近ちょっと体調が……」

「無理されてるんじゃ……」


誰かがぼそりと口にした声が、そのまま給湯室での噂になっていた。


◆【同期の気づき】


一方、同じ頃――


総務課の一角では、高槻悠真と村瀬翼、進藤あかり、赤井美波の3人が会話をしていた。


「最近、春日井課長のことで社内ざわついてるって、知ってた?」


「うん……『何か大きな仕事抱えてるんじゃ』とか『ストレスじゃ』って言ってたよ、別部署の人」


悠真は苦笑した。


――そりゃ、そうなるよな。だって、本当は……。


誰にも言えない。でも、守りたい。

真希が余計な負担を背負わないように――


「……俺がなんとかするよ」


その言葉に、翼たちは頷いた。

すでに彼女の妊娠を知っている彼らは、誰よりも“味方”だった。


◆【思わぬ場所で】


午後の打ち合わせが終わったあと。

真希は副社長の橘理沙に呼び止められる。


「春日井さん、少しだけいいかしら?」


「……はい、理沙さん」


ふたりきりの会議室で、理沙は小さく笑った。


「……あなた、顔色が悪いわ。無理してない?」


真希は一瞬、言葉を詰まらせた。


「……あの、実は……」


理沙の前でなら――そう思って、真希は静かに口を開いた。


「……妊娠、しているんです。まだ安定期にも入っていないのですが……」


理沙は目を丸くしたあと、ふっと笑みを浮かべた。


「……そう。じゃあ、あなたも、母になるのね」


◆【守られる日常】


その夜、自宅のキッチンで。

エプロン姿の悠真が、味噌汁の味見をしている真希に近づいた。


「今日、理沙副社長に話したの」


「えっ……大丈夫だった?」


「うん。ちゃんと“おめでとう”って言ってくれた。

それに……“無理しないように”って、仕事の調整も考えてくれるって」


悠真はほっと胸をなでおろした。


「……よかった。少しでも、真希さんの負担が減るなら、それが一番だよ」


湯気の立ちのぼる鍋の向こうで、ふたりは微笑み合った。


◆【橘理沙の“提案”】


翌日、理沙から真希に一本の内線が入った。

「お昼、社長室で少しだけ時間もらえるかしら?」


氷室結衣社長と理沙、そして真希の三人で顔を揃えた社長室は、柔らかな光が差し込んでいた。


「春日井さん、まずは――本当におめでとう」


結衣の言葉に、真希は深く頭を下げた。


「ありがとうございます、社長……」


理沙は資料を数枚テーブルに置いた。


「これは、産前産後に関わる社内調整の案。

あなたの負担を極力減らせるよう、私たちで出来る限り準備するわ」


「えっ……ここまで……」


「あなたが守ろうとしてる命、私たちも一緒に守る。それが“ルクシア”の姿勢よ」


涙が滲むのを、真希は必死に堪えた。

――会社で、こんなにもあたたかく受け入れられるなんて。


◆【夜の食卓、語り合う未来】


その夜。


「……今日、社長にも理沙さんにも、全部話したの」


「うん……ありがとう」


悠真は、湯気の立つテーブルを挟みながら、真希の瞳を見つめた。


「俺、思ったんだ。

“父になる覚悟”って、決して大げさなものじゃなくて――

こうして、毎日を丁寧に生きていくことなんだって」


真希は、ふっと笑った。


「……そうね。守りたいものがあるって、怖いけど、幸せなこと」


悠真は立ち上がり、そっと彼女の手を取った。


「俺、もっと強くなるよ。真希さんと、赤ちゃんを支えるために」


その手の温かさに、真希はそっと頷いた。


◆【眠れぬ夜、重ねた想い】


夜。

ふたりはベッドに並びながら、天井を見上げていた。


「ねえ……もし、生まれてくる子が、男の子だったら」


「……真希さんみたいな気遣いのできる子になるかな?」


「え? そしたら……あなた似の、ちょっと不器用で真っ直ぐな子がいいな」


「うーん、それじゃあダブルで泣き虫かも」


そんな他愛ない会話のなかで、真希の瞳にふいに涙が浮かぶ。


「……怖いの。

もしも何かあったらって。

私、母親になれるのかなって……」


「真希さん……」


悠真は黙って、彼女を抱きしめた。


「大丈夫。俺が一緒にいる。どんなときも、ずっと」


その言葉が、どれほど救いだったか。

真希は、ぎゅっと彼の胸に顔を埋めた。


◆【夜明けの気配と、優しさの中で】


少しずつ外が白みはじめ、カーテン越しに朝の光が差し込む。


「ねえ、悠真……」


「うん?」


「ありがとう。……私、あなたと出会えて、本当によかった」


「それは、俺の台詞だよ」


ふたりは静かにキスを交わした。

柔らかく、深く、あたたかく。


それは不安を溶かすような、やさしい夜明けのキスだった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ