表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/83

第5話「初めての妊婦健診と、ほんの少し未来の名前を… ふたりの相談相手――先輩として、父として、母として」


◆【朝、いつもより早く】


「あ、起きてる? 真希さん」


ベッドの中、薄いカーテン越しに差し込む朝日。

小さく目を開けた真希は、悠真の優しい声に微笑む。


「……起きてるわよ。でも、まだあと5分……」


「ダメ。今日は大事な日だよ?」


悠真がそっと手を伸ばし、真希の指先にキスをする。


「初めての妊婦健診でしょ。お腹の赤ちゃんに会える日なんだから」


その言葉に、ふたりの心がふっと温かくなる。


◆【病院の待合室にて】


診療所の待合室。

ふたり並んで座りながら、周囲の妊婦とその夫たちを眺める。


「……若いわね、あのご夫婦」


「こら、俺たちも“夫婦”だろ?」


「ええ、そうね。……でも、やっぱり少し気が引けるの。私、年齢的にも“高齢出産”になるし……」


真希の声が少し弱くなる。

悠真は、迷わず彼女の手を握った。


「……でも俺は、真希さんとだからこそ、この子を育てたいって思えたよ」


「悠真……」


「誰が何を言おうと、真希さんは俺にとって――世界で一番の母親で、恋人で、妻なんだ」


ふっと、真希の目から涙が零れそうになる。

でも、それを見せる前に、看護師の声が響いた。


「春日井さま、どうぞ」


ふたりは手を繋いだまま、診察室へと向かう。


◆【初めての音】


エコー室。


機械の操作音が小さく響く中、画面に浮かび上がる小さな命の輪郭。


「……あっ」


「こちら、赤ちゃんの姿ですね。順調に育ってますよ」


モニター越しに映った、小さな心臓の“トク、トク、トク”。


その音に、ふたりの呼吸が一瞬止まる。


「……生きてる。こんなに、小さいのに」


真希が震える声で呟いた。


悠真は、ただその横顔を見つめながら――

「ありがとう」と、心のなかで何度も言っていた。


◆【病院の帰り道】


診察が終わり、ふたりは近くのカフェに入る。


「……ねえ、名前、どうする?」


真希が、そっと話題を切り出す。


「まだ性別わからないし……でも、考えておくのも悪くないわよね?」


「……そうだね」


悠真はスマホを取り出し、メモ帳を開いた。


「俺、もういくつか候補あったんだ」


「……早いわね」


「“未来みく”とか、“陽翔はると”とか、“結月ゆづき”とか……」


「ちょっと待って、それどれも綺麗だけど、どこから思いついたの?」


「……あはは、実は結婚してからずっと考えてた」


「……可愛いパパね」


真希は、小さく笑いながら、そのメモを見つめる。


まだ“誰になるか”わからない。

でも、この小さな選択が、未来に繋がっていると思うと――


ふたりの心は、自然と寄り添っていた。



◆【社長室――氷室結衣の言葉】


午後、真希は仕事の合間を縫って、氷室結衣社長の社長室を訪れていた。


「育児と仕事、どうやって両立してるのか……不安で」


真希がそう口にすると、結衣はソファに腰をかけながら、微笑んだ。


「不安じゃない人なんて、いないわよ。私だって、最初は何もかも手探りだった」


「でも……あなたは社長で、私なんかよりもっと大きな責任を抱えていて……」


「だからこそ、支えてくれる人の存在が何より大事だったのよ」


ふっと笑う結衣は、遠くを見つめながら続けた。


「陽翔がいてくれて、私は“社長”の肩書きのまま“母”にもなれた。どちらかを捨てる必要なんてない。あなたもよ」


「……私も?」


「うん。真希ならできるわ。だってあなた、あの高槻くんをここまで育てたんだもの」


言葉に詰まった真希の目が、潤む。


「……ありがとう、ございます」


◆【社員食堂――男同士の本音】


同じ頃、悠真は社員食堂の隅で瀬川陽翔と向き合っていた。


「……正直、不安で。父親って、どうやったらなれるのかなって」


言った瞬間、陽翔は思いきり笑った。


「俺だっていまだに“パパしてる”って自信はないぞ。子どもたちに聞いたら“いつもふざけてる”って言うしな」


「……でも、支えてるじゃないですか。結衣さんも、子どもも」


「それはな、俺が“父親になったから”じゃなくて、“一緒に成長してるだけ”なんだよ」


「……成長?」


「最初から完璧な親なんていない。おむつ替えもミルクも寝かしつけも、全部が初体験。でも、失敗しながら覚えていくんだ」


悠真は静かに頷いた。


「……俺も、成長してみせます。真希さんと赤ちゃんのために」


「おう、頼もしいな、パパ先輩」


◆【夜、ふたりだけのベッドルーム】


帰宅後、ふたりは互いの話を語り合った。


「……結衣さんに言われたわ。“あなたならできる”って」


「陽翔さんも似たようなこと言ってた。“完璧じゃなくていい”って」


「ふふ、なんか似てるのね、あの夫婦」


静かに微笑み合うふたりの間に、柔らかな灯りが落ちる。


「ねぇ、悠真」


「うん?」


「“お母さん”って、どう思う?」


「……俺は、真希さんが“母親”って呼ばれてる姿、好きだよ。だって、どんな呼ばれ方でも――真希さんが真希さんでいる限り、俺は全部愛せるから」


その言葉に、真希はぎゅっと彼を抱きしめた。


「ありがとう……本当に、あなたに出会えてよかった」


◆【そして、未来へ】


夜が更け、眠りに落ちる前――


「ねえ、もう少しだけ起きてていい?」


「うん、いいよ。赤ちゃんの名前、もう少し考えようか」


「……そうね。まだ決めなくていい。けど、少しずつ、未来を描きたいの」


ふたりの声が重なり、手が重なる。


“ふたりの未来”は、まだ何も決まっていない。

でも、確かにここにある。


――そして、小さな命とともに、ふたりの愛はまた、ひとつ深くなっていく。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ