表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/83

第3話「はじめての報告、秘密のままの妊娠だが… “信頼”と“打ち明ける覚悟”――秘密の妊娠と3人の仲間たち」


◆【静かなる決断】


春日井真希は、オフィスの廊下をゆっくりと歩いていた。


早朝の空気はまだ冷たく、窓越しに差し込む冬の日差しが、彼女の頬を優しくなぞる。


今朝も吐き気があった。だが、時間をかけて整えたメイクと、深呼吸でどうにかごまかしている。


(もうすぐ……言わなきゃ)


向かう先は――直属の上司、柳瀬貴文部長のデスクだった。


「……おはようございます、部長」


「ああ、春日井さん。おはよう。いつもより顔色が……いや、気のせいかな」


「いえ、少しお話ししたいことがありまして。お時間いただけますか?」


柳瀬は真剣な表情に気づいたのか、すぐに席を立った。


「会議室、空いてるな。行こうか」


◆【秘密の告白】


会議室にふたりきり。


真希は、柳瀬の前に立ち、深く息を吸い込んだ。


「部長……実は、妊娠しました」


その瞬間、室内の空気がぴたりと止まった。


「……そうか」


柳瀬はゆっくりと、頷いた。


「おめでとう、とはまだ言えないかもしれないけれど……まずは、教えてくれてありがとう」


「はい。まだ社内には誰にも伝えていません。

ただ、私の体調に影響が出始めていて、今後の業務への影響も考慮し、まずは直属の上司である柳瀬部長にだけお伝えしたいと」


「了解した。社内への周知は……君が決めていい。俺からは一切口外しない。

ただ、体調が悪くなったときは遠慮なく言ってくれ。君を守るために、俺はいる」


その言葉に、真希の目が思わず潤む。


「……ありがとうございます」


◆【社内の空気】


会議室を出た後も、真希は何食わぬ顔でデスクに戻った。


だが、つわりは誤魔化せるものではない。


昼休み、顔を洗いに行ったトイレの鏡に映った自分の姿は、確実に変化を帯びていた。


(あと何週間、隠し通せるかしら……)


その問いに、まだ答えは出ない。


けれど、彼女には、もう「独り」ではなかった。


お腹の中に宿る小さな命。


そして、いつも隣で支えてくれる、最愛の人――悠真がいた。


◆【その頃――悠真】


その日、悠真は昼休みに、こっそり母子手帳のコピーをスマホで見返していた。


「名前、どうしようかな……男の子? 女の子?

どっちに似るかな……」


隣の席に座る同期の村瀬翼が、「ん? なに独り言?」と覗き込もうとした瞬間、慌てて画面を消す。


「な、なんでもないっス!!」


「怪しっ!」


笑いながら去っていった村瀬に、悠真は内心ヒヤヒヤしながら思う。


(……まだ、秘密なんだ)


だからこそ、彼は決意を新たにした。


――俺が守る。ふたりを、絶対に。




◆【部長との約束】


「……無理をして倒れる前に、必ず俺に知らせろ」


柳瀬部長の静かな声に、真希は黙って頷いた。


「春日井、お前は優秀だし責任感もある。でもな、命が宿った今は、最優先すべきはお前自身と……その子だ」


真希の胸がきゅうっと熱くなった。


「……ありがとうございます。本当に、ありがとうございます……」


目頭が熱くなる。涙は堪えた。でも、心が救われるような気がした。


「俺が守る。上司としてな」


その言葉に、真希は小さく笑って、背筋を伸ばした。


「はい。必ず、無理はしません」


◆【予兆】


その数日後の午後、社内で小さな“事件”が起きた。


会議室でのプレゼン中、真希が急に顔を青ざめさせ、スライドの途中でしゃがみ込んでしまったのだ。


「春日井さん!? 大丈夫ですか!?」


部下たちの慌てた声に、柳瀬部長が即座に飛び込む。


「みんな、会議は中止。春日井はすぐ医務室に。俺が付き添う」


(ダメだ……迷惑、かけた……)


倒れ込みそうになる自分の体を、柳瀬の腕が支えていた。


◆【別室にて――悠真の告白】


午後――社内の騒ぎが一段落した頃。


柳瀬部長の指示で、真希の夫である高槻悠真は別室に呼ばれた。


だが、その途中で――


「なあ悠真、お前さ……最近、様子変じゃね?」


声をかけてきたのは、同期の村瀬翼だった。


悠真は一瞬、心臓が跳ねる音を感じた。


(もう、限界だ……)


「……翼、ちょっと、時間くれる?」


会議室の隅。人気のない場所に、悠真は村瀬、そして近くにいた同期の進藤あかり、赤井美波も呼んだ。


「え? なになに……? まさかまた弁当がプロ級だった件とか?」


あかりが茶化すように笑う。美波も首をかしげていた。


「……違うんだ」


悠真は、ゆっくりと口を開いた。


「……真希さん……春日井課長のお腹に……赤ちゃんが、います」


その場の空気が、まるで止まったように静まる。


あかりの目が大きく見開かれ、美波の口がわずかに開いた。


「えっ……? ちょ、ちょっと待って……それって、マジで……?」


「うん。ほんと。……つわりも出てきてて、今日、会議中に倒れかけたって聞いて」


悠真は、真剣な目で三人を見た。


「だから、言っておきたかったんだ。……ごめん。隠してて」


「そんな、謝ることじゃないよ!」と、あかりがすぐに口を挟んだ。


「それに、なんか……悠真が父親になるなんて、想像つかないけど、めちゃくちゃカッコいいじゃん!」


美波も小さく笑って、「うん、真希課長が相手って聞いてたし、むしろ納得」と呟く。


「……男の子か、女の子か、まだわからない。でも、名前とか……どうすればいいか、正直迷ってて」


「名前? あー、それは悩むよなぁ~」と翼がニヤニヤしながら頷いた。


「でも、俺はさ。悠真と真希課長の子って、絶対いい子になると思ってる。……だから、俺たちにも、できる限り力貸すから」


「ほんと、何かあったら言ってよね。ね、美波?」


「もちろん!」


ふたりの手が、悠真の背中を軽く叩いた。


「……ありがとう。本当に、ありがとう」


◆【帰宅後、ふたりきりの夜】


その夜、真希はソファで横になりながら悠真の手を握っていた。


「……誰かに話せた?」


「うん。翼と、あかりと美波。正直に、全部話した」


「そう……ありがとう。私も、柳瀬部長に伝えたの」


ふたりは、手を繋いだまま、静かに見つめ合う。


「みんな、味方でいてくれる。大丈夫だよ。俺たちのこと、応援してくれてる」


「……うん」


目を伏せながら、小さく微笑む真希の目元に、また涙が浮かぶ。


ふたりはそのまま、そっと寄り添い、ひとつの温もりを共有する。


――誰にも言えない日々の中で。

――静かに芽吹いた、新しい命と、絆のはじまりを胸に抱いて。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ