表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/83

第1話 「もしかして、わたし……… あなたと、家族になれる?――その奇跡が、今ここに」


シーズン4《社会人3年目&妊娠出産編》

『家族になるということ――秘密の夫婦、そして“いのち”の奇跡』




◆ 【朝のキッチンにて】


静かな朝。

フライパンの上で卵が焼ける音が心地いいBGMになる。

香ばしい匂いとともに、キッチンにはふたりの気配があった。


「……ん、ありがとう、悠真。お味噌汁、ちょうど飲みたかった」


「体調、大丈夫? 昨日あんまり食べられてなかったから……」


エプロン姿の悠真が心配そうにのぞき込む。

その視線に、真希は少しだけ曖昧な笑みを浮かべた。


「……ちょっとね。最近、朝がしんどくて」


「寝不足……って感じじゃないよな。もしかして……風邪?」


「ううん、違うの。ただ……ちょっと、違和感があるの」


コーヒーを口に含みながら、ふと真希は自分の手に視線を落とす。

なんとなく、身体の感覚が変わった気がする。


なんとなく、匂いに敏感になっている。

なんとなく、眠気が強い。


そして何より――月のものが、少し遅れていた。


(まさか……でも、そんな……)


心の奥に浮かぶ一つの可能性を、まだ言葉にはできなかった。


◆ 【出勤前、鏡の前で】


スーツに袖を通し、髪を束ねる手元がふと止まった。


「……もし、ほんとうに……だったら」


誰にも知られず、誰にも言えず――

でも、確かに身体の奥に芽生えつつある“予感”。


真希はそっとお腹に手を当てた。

まだ何も感じないはずなのに、

その場所が、妙にあたたかく感じた。


◆ 【帰宅後――ひとりの決意】


その夜、仕事帰りに立ち寄った薬局。

誰にも見られないよう、そっと手に取ったのは――妊娠検査薬。


(こんなにも、手が震えるなんて……)


帰宅し、バッグを置くなり、真希は洗面所へと駆け込んだ。


静かな数分間。

心臓の鼓動が、耳の奥で鳴っている。


……結果は、陽性。


小さく、でも確かに現れた二本線に、真希の視界が滲んだ。


「……赤ちゃん……本当に……?」


想像以上に、心が揺れていた。

怖さよりも、驚きよりも、ただ――胸の奥に、あたたかい光が差し込む。


◆ 【「おかえり」と、「ただいま」の間に】


「……ただいま」


玄関の扉が開き、悠真の声が届いた。

ふたりの家、ふたりの夜。

だけど今夜からは――“三人”になる、かもしれない。


キッチンに立つ真希の背中を見て、悠真はすぐに異変に気づく。


「……真希さん?」


「悠真……」


その声に、悠真が一歩、近づく。


「どうしたの?」


振り返った真希の瞳は、涙に濡れていた。

でもそれは、悲しみの涙ではなく――


「……赤ちゃんが、いるみたい」


静かに告げたその言葉に、悠真は目を見開き、

次の瞬間、何も言わずに真希を抱きしめた。


「……本当に? 俺たちの……赤ちゃん……?」


「うん……まだ信じられないけど……でも、嬉しいの……」


ふたりの腕の中、温もりが強く結び合っていく。


静かな夜。

まだ誰にも言えない“新しい命”の始まりが、そこにはあった――。




◆ 【抱きしめられたその瞬間】


「……赤ちゃんが、いるみたい」


その一言が、悠真の胸を撃ち抜いた。


鼓動が早まる。

脳内が真っ白になる。

でも、不思議なほど、心は静かだった。


「……本当に?」


「うん、今日ね……検査薬で確認したの。まだ病院には行ってないけど……」


言葉の途中で、真希の目からぽろりと涙がこぼれた。

嬉しさとも、驚きとも、安心とも言えない感情があふれ出す。


悠真は何も言わず、その身体をそっと抱きしめた。


「……ありがとう、真希さん」


「……え?」


「ありがとう、俺との未来を……信じてくれて、選んでくれて……」


肩に顔を埋めながら、ぎゅっと力を込めて抱き寄せる。

その温もりの中に、小さな命が芽生えている。


それだけで、胸がいっぱいになった。


◆ 【ふたりで迎える、未知の未来】


「不安もあるよ。でも……俺は、嬉しい。すごく、嬉しい」


「……私も。こわいけど……でも、幸せって思ってしまったの」


真希の言葉に、悠真はそっと頷く。


「じゃあ……一緒に、がんばっていこう。三人で」


「……うん」


照明の落ちたリビングに、あたたかな静けさが広がる。

ふたりの間に、確かに“新しい人生”が始まりつつあった。


まだ誰にも言えない。

秘密のまま、育てていく命。


だけど、それでも――


「名前、考えようかな。まだ早いけど」


「それ、私も思ってた」


ふたりは顔を見合わせて、ふふっと小さく笑い合う。


どんな人生が待っているか、わからない。

でも、ふたりなら、きっと乗り越えていける。

そう思えるほどに、いまの絆は強かった。


◆ 【夜、ふたりきりの寝室で】


ベッドの中。

毛布の下で指を絡ませながら、真希がぽつりと口を開いた。


「ねぇ……悠真。あなたは……父親になるって、想像したことあった?」


「うん。あったよ」


「いつ頃?」


「……ずっと前から。たぶん、高校のときから、真希さんと“家族”になれたらって、どこかで思ってた」


真希は目を瞬かせ、そして小さく息を呑んだ。


「……早いわよ、あなた」


「でも、真希さんがもし……俺の子を産んでくれたら、その子を一生守るって、そう思ってた」


「……っ、ずるいわ。そんなこと言われたら……涙出ちゃう」


目尻に光るものを拭うと、真希は悠真の手を取り、自分の下腹部へとそっと添えた。


「ここに……いるのよね、あなたと私の赤ちゃんが」


悠真は、ただ黙ってその手を包み込んだ。


「……大事にしよう。真希さんも、赤ちゃんも、ずっと……」


「うん。私も、あなたを守る。お母さんとして、女として……あなたの妻として」


重なる唇は、いつもより長く、優しく、深く――

“家族”としての初めての夜に、ふたりの未来を静かに誓った。


◆ 【翌朝、始まりの朝】


カーテン越しの朝陽が、寝室をやわらかく照らす。


「……おはよう、ママ」


そう囁いた悠真に、真希は「まだ早いわよ」と笑って頬を赤らめた。


でも、その表情は――間違いなく、母のそれだった。


“夫婦”として、“親”として――

ふたりの物語は、ここからまた新しい章を歩き出す。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ