第1話 「もしかして、わたし……… あなたと、家族になれる?――その奇跡が、今ここに」
シーズン4《社会人3年目&妊娠出産編》
『家族になるということ――秘密の夫婦、そして“いのち”の奇跡』
◆ 【朝のキッチンにて】
静かな朝。
フライパンの上で卵が焼ける音が心地いいBGMになる。
香ばしい匂いとともに、キッチンにはふたりの気配があった。
「……ん、ありがとう、悠真。お味噌汁、ちょうど飲みたかった」
「体調、大丈夫? 昨日あんまり食べられてなかったから……」
エプロン姿の悠真が心配そうにのぞき込む。
その視線に、真希は少しだけ曖昧な笑みを浮かべた。
「……ちょっとね。最近、朝がしんどくて」
「寝不足……って感じじゃないよな。もしかして……風邪?」
「ううん、違うの。ただ……ちょっと、違和感があるの」
コーヒーを口に含みながら、ふと真希は自分の手に視線を落とす。
なんとなく、身体の感覚が変わった気がする。
なんとなく、匂いに敏感になっている。
なんとなく、眠気が強い。
そして何より――月のものが、少し遅れていた。
(まさか……でも、そんな……)
心の奥に浮かぶ一つの可能性を、まだ言葉にはできなかった。
•
◆ 【出勤前、鏡の前で】
スーツに袖を通し、髪を束ねる手元がふと止まった。
「……もし、ほんとうに……だったら」
誰にも知られず、誰にも言えず――
でも、確かに身体の奥に芽生えつつある“予感”。
真希はそっとお腹に手を当てた。
まだ何も感じないはずなのに、
その場所が、妙にあたたかく感じた。
•
◆ 【帰宅後――ひとりの決意】
その夜、仕事帰りに立ち寄った薬局。
誰にも見られないよう、そっと手に取ったのは――妊娠検査薬。
(こんなにも、手が震えるなんて……)
帰宅し、バッグを置くなり、真希は洗面所へと駆け込んだ。
静かな数分間。
心臓の鼓動が、耳の奥で鳴っている。
……結果は、陽性。
小さく、でも確かに現れた二本線に、真希の視界が滲んだ。
「……赤ちゃん……本当に……?」
想像以上に、心が揺れていた。
怖さよりも、驚きよりも、ただ――胸の奥に、あたたかい光が差し込む。
•
◆ 【「おかえり」と、「ただいま」の間に】
「……ただいま」
玄関の扉が開き、悠真の声が届いた。
ふたりの家、ふたりの夜。
だけど今夜からは――“三人”になる、かもしれない。
キッチンに立つ真希の背中を見て、悠真はすぐに異変に気づく。
「……真希さん?」
「悠真……」
その声に、悠真が一歩、近づく。
「どうしたの?」
振り返った真希の瞳は、涙に濡れていた。
でもそれは、悲しみの涙ではなく――
「……赤ちゃんが、いるみたい」
静かに告げたその言葉に、悠真は目を見開き、
次の瞬間、何も言わずに真希を抱きしめた。
「……本当に? 俺たちの……赤ちゃん……?」
「うん……まだ信じられないけど……でも、嬉しいの……」
ふたりの腕の中、温もりが強く結び合っていく。
静かな夜。
まだ誰にも言えない“新しい命”の始まりが、そこにはあった――。
◆ 【抱きしめられたその瞬間】
「……赤ちゃんが、いるみたい」
その一言が、悠真の胸を撃ち抜いた。
鼓動が早まる。
脳内が真っ白になる。
でも、不思議なほど、心は静かだった。
「……本当に?」
「うん、今日ね……検査薬で確認したの。まだ病院には行ってないけど……」
言葉の途中で、真希の目からぽろりと涙がこぼれた。
嬉しさとも、驚きとも、安心とも言えない感情があふれ出す。
悠真は何も言わず、その身体をそっと抱きしめた。
「……ありがとう、真希さん」
「……え?」
「ありがとう、俺との未来を……信じてくれて、選んでくれて……」
肩に顔を埋めながら、ぎゅっと力を込めて抱き寄せる。
その温もりの中に、小さな命が芽生えている。
それだけで、胸がいっぱいになった。
•
◆ 【ふたりで迎える、未知の未来】
「不安もあるよ。でも……俺は、嬉しい。すごく、嬉しい」
「……私も。こわいけど……でも、幸せって思ってしまったの」
真希の言葉に、悠真はそっと頷く。
「じゃあ……一緒に、がんばっていこう。三人で」
「……うん」
照明の落ちたリビングに、あたたかな静けさが広がる。
ふたりの間に、確かに“新しい人生”が始まりつつあった。
まだ誰にも言えない。
秘密のまま、育てていく命。
だけど、それでも――
「名前、考えようかな。まだ早いけど」
「それ、私も思ってた」
ふたりは顔を見合わせて、ふふっと小さく笑い合う。
どんな人生が待っているか、わからない。
でも、ふたりなら、きっと乗り越えていける。
そう思えるほどに、いまの絆は強かった。
•
◆ 【夜、ふたりきりの寝室で】
ベッドの中。
毛布の下で指を絡ませながら、真希がぽつりと口を開いた。
「ねぇ……悠真。あなたは……父親になるって、想像したことあった?」
「うん。あったよ」
「いつ頃?」
「……ずっと前から。たぶん、高校のときから、真希さんと“家族”になれたらって、どこかで思ってた」
真希は目を瞬かせ、そして小さく息を呑んだ。
「……早いわよ、あなた」
「でも、真希さんがもし……俺の子を産んでくれたら、その子を一生守るって、そう思ってた」
「……っ、ずるいわ。そんなこと言われたら……涙出ちゃう」
目尻に光るものを拭うと、真希は悠真の手を取り、自分の下腹部へとそっと添えた。
「ここに……いるのよね、あなたと私の赤ちゃんが」
悠真は、ただ黙ってその手を包み込んだ。
「……大事にしよう。真希さんも、赤ちゃんも、ずっと……」
「うん。私も、あなたを守る。お母さんとして、女として……あなたの妻として」
重なる唇は、いつもより長く、優しく、深く――
“家族”としての初めての夜に、ふたりの未来を静かに誓った。
•
◆ 【翌朝、始まりの朝】
カーテン越しの朝陽が、寝室をやわらかく照らす。
「……おはよう、ママ」
そう囁いた悠真に、真希は「まだ早いわよ」と笑って頬を赤らめた。
でも、その表情は――間違いなく、母のそれだった。
“夫婦”として、“親”として――
ふたりの物語は、ここからまた新しい章を歩き出す。
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