第7話「ハネムーン未満旅行――すれ違いの先に、肌で触れる未来」
◆ 【偽装出張、行き先は京都】
「……じゃあ、気をつけて行ってきますね」
「うん。“あくまで”出張、だからね」
金曜の朝。
社内では、春日井課長(=真希)と高槻悠真が、それぞれ別の部署へ“出張”申請。
もちろん、行き先もスケジュールも別々。
だが実際には――
(初めての、夫婦ふたりきりの旅行)
待ち合わせは、京都駅の新幹線ホーム。
ふたりは人混みを避けながら、目と目で微笑み合う。
「やっと“ふたりだけの時間”だね」
「……本当は、堂々と行きたいんだけどね」
「いいよ、今は“秘密の方が甘い”ってことで」
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◆ 【宿は露天風呂付きの和モダン旅館】
チェックインしたのは、京都・東山の高台にある隠れ宿。
木の香りが落ち着く和室に、坪庭を望む露天風呂。
「うわ……これ、完全にハネムーンじゃん」
「“未満”ね。あくまで偽装出張旅行だから」
「でもさ、もうこうなったら開き直って甘やかしてよ」
「……今夜、覚悟してなさい」
そんな軽口を交わしながらも、
真希はどこか、表情を曇らせていた。
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◆ 【すれ違いの理由は、一本の電話】
夕暮れ前。
ふたりで清水寺を歩き、宿に戻った直後――
真希のスマホが鳴る。
見慣れた表示。
「……部下から。ごめん、少しだけ」
「うん、いいよ」
だがその“少し”が、15分、20分と続く。
電話越しに聞こえる「はい」「すぐ対応します」
そして、「代案をメールで返してください」の声。
(せっかくの時間なのに――)
悠真は、口には出さず、
でも背中が少しだけ遠ざかっていくのを感じていた。
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◆ 【その後、ぎこちない空気】
電話を終えて戻ってきた真希も、
悠真の微妙な表情に気づいた。
「……ごめんね。せっかくの時間なのに」
「いや、真希は悪くないよ。仕事だし」
「でも、ちょっと寂しそうな顔してた」
「してない」
「してた」
「……真希が俺にだけ時間をくれるのが、すごく嬉しくて。
だから、独り占めしたいって思ってる自分に気づいちゃってさ」
真希はそっと彼に近づき、
手を握る。
「その“わがまま”、私は嬉しいよ」
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◆ 【露天風呂で、すべてを溶かす】
夕食を終え、部屋の露天風呂に並んで浸かる。
秋の風が肌を撫でる中、湯気と灯りに包まれて。
「……ねえ、見て」
真希が湯の中で、そっとタオルを外す。
「え……まって、真希……」
「大丈夫。悠真には、見せたいって思ってたから」
月明かりの下、
湯気越しに浮かび上がる肌の輪郭。
恥じらいながらも目を逸らさない瞳。
「ほんとに、綺麗……。綺麗すぎて、なんか……」
「見とれてくれて、ありがとう」
そっと湯の中で指先が触れ合い、
重なるように寄り添い合うふたり。
やわらかなキスは、
次第に深く、甘く――
「好きだよ、真希」
「……私も、あなたが愛しい」
肌と肌が、
ようやく“本当の意味で”重なる夜だった。
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◆ 【旅の終わりに、未来のヒント】
翌朝、チェックアウトのあと。
ふたりは嵐山の竹林を歩いていた。
「ねえ悠真、ふたりでこうして歩いてると……
将来、一緒に旅行できる家族の姿とか、想像しちゃうね」
「子ども連れて、手つないで、写真撮って……とか?」
「うん。……少しだけ、勇気が出た気がする。
この先の人生を、ちゃんと選んでいけそうな気がするの」
「じゃあ、次は“未来”の旅行、計画しよう」
「それって……?」
「“家族旅行”っていう意味で」
ふたりは静かに微笑み合いながら、
ゆっくりと歩き出した。
心の中に、
“これからの物語”を描きながら。
【第7話・完】
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