第6話「「彼女の人生、君が支えられるか?」――指輪と未来の話」
◆ 【柳瀬部長との“密談”】
それは、昼休み直前の会議室。
「……すみません、呼び出していただいて」
「いや。こちらこそ、時間を取らせて悪いね、高槻くん」
真希の直属の上司・柳瀬部長。
唯一、“ふたりの関係”を知る人物。
「春日井とは……順調かね?」
「……はい。おかげさまで。問題もなく、日々、助けられてばかりです」
「……そうか」
柳瀬は書類をそっと閉じ、
机に指を組んだ。
「――春日井は、昔から自分を後回しにする女だ」
「……はい」
「周囲に気を使って、誰かに頼られると断れない。
強く見えて、本当は誰よりも脆い。……君、その“脆さ”を分かっているか?」
悠真は、唇をぎゅっと結んでから頷いた。
「……分かってます。だから、俺が支えます。
年齢や立場に関係なく、彼女の人生を“半分こ”にする覚悟はあります」
一瞬の沈黙のあと、
柳瀬は目を細めて、静かに微笑んだ。
「――その言葉、信じよう。……あの子の“夫”としてな」
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◆ 【“指輪”が見られた昼下がり】
その日の午後。
コピー機の前で資料整理をしていた悠真の左手に――
薄いゴールドの“指輪”が、うっすらと光った。
「……あれ? 高槻くんって、結婚してたっけ?」
振り返ったのは、
経理の松井さん。
「え? あっ……これ、リングじゃなくて、ただの地金の――」
「へぇ〜、でも薬指って意味深じゃない? 彼女さんからの?」
その場は笑って誤魔化したものの、
冷や汗が背筋を伝った。
(ヤバい……!)
昼休みにスマホを開くと、
真希からのメッセージ。
『左手の指輪、気をつけてって言ったでしょ?(怒)』
『ごめん、完全に油断してた……。でも、誰にもバレてないと思う!』
ほんの些細な油断。
それが、秘密の関係を一気に壊しかねない。
けれど、それもまた“夫婦の日常”だった。
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◆ 【夜、ふたりだけの未来の話】
その夜。
リビングでワインを一杯ずつ飲んだあと、
ふたりは自然とソファに身を預けていた。
「ねえ、悠真」
「ん?」
「……将来のこと、考えたりする?」
「将来?」
「たとえば……子ども、とか」
静かな沈黙が流れた。
「……俺さ、真希の子どもが欲しいって、ずっと思ってた」
「……え?」
「真希が笑ってるときに、
その隣に、俺たちの子どもがいたらいいなって」
「でも……私、もう四十……」
「知ってる。リスクも、年齢も、現実も。
だけど、それでも“望んでいい未来”なら、俺は望みたい」
目頭が熱くなる。
「……悠真、ほんとに、あなたって……」
彼女の涙を、
そっと指で拭い、キスを落とす。
「一緒にいよう、真希。
どんな未来も、ふたりなら大丈夫」
•
◆ 【ベッドの中、涙のあとに】
ふたりはそのまま、ゆっくりとベッドへ。
いつもより静かで、
いつもよりあたたかいキス。
ぬくもりの中で交わる心と身体。
言葉では言えない想いを、肌で伝えるように。
「……ありがとう。
こうして、隣で眠れることが、今の私には一番の幸せよ」
「……それ、俺も同じ」
眠りにつく前。
ふたりは小さく手を繋いだ。
未来を、
ふたりで描いていくために。
【第6話・完】
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