第1話「ふたりだけのはじまり朝――秘密の誓いと、夫婦という名前の恋」
《社会人2年目編 & 秘密の同棲&結婚生活編》
今日、ふたりは結婚した。
籍を入れたことを、誰にも知られないように。
でも、確かに“夫婦”になった。
朝焼けの光が、カーテン越しに差し込むリビング。
静かに炊けるごはんの匂いと、味噌汁の湯気。
テーブルの上には、区役所帰りにもらったばかりの
「婚姻届受理証明書」。
「……これで、俺たち、夫婦なんだな」
悠真がそう呟くと、
真希は笑って、彼の隣に腰を下ろした。
「実感、まだちょっとないけど……でも、うれしいわね」
白い湯のみから立ち上る湯気の向こう、
彼女の横顔は、いつもより少し照れて見えた。
•
◆ 「夫婦」だけど、「秘密」
ただし、社内には“ナイショ”。
結婚したことを知っているのは――
ただひとり、春日井真希の直属の上司・柳瀬部長だけ。
「……あなたたちの関係は把握しています。
しかし社内には、当面、公表しないほうがいいでしょうね」
柳瀬はそう言って、
静かにふたりの背中を押してくれた。
(ありがたい人だな……)
悠真は心の中で深く頭を下げた。
けれど、同時に覚悟も決めていた。
――“秘密の夫婦生活”を、きちんと守る。
職場ではただの後輩と先輩。
帰宅すれば、夫と妻。
誰にも気づかれないように。
誰にも笑われないように。
でも、
“誰よりも幸せだと胸を張れるように”。
•
◆ 家の鍵と、左手の薬指
「……鍵、ちゃんと持った?」
「持ったってば。あとで新しい表札も見に行こうよ、“高槻”って」
「やめてよ、そんなに堂々と……」
「だって、俺たちもう夫婦だし」
にやっと笑って、
悠真が彼女の左手を取る。
その薬指には、
まだ“結婚指輪”はない。
でも、代わりに――
彼女の指を、そっと口づけで包んだ。
「……俺、これから毎日、
真希の帰りを“夫”として待ってる」
「……バカね」
嬉しそうに笑って、
真希も彼の頬に口づけを返した。
まだ若くて、
まだ拙い“夫婦”だけど。
たしかにここに、
ふたりだけの未来がはじまった。
•
◆ ふたりだけの家、ふたりだけの朝
「いってらっしゃい、悠真」
「行ってきます、真希」
毎朝交わす“夫婦の挨拶”。
でもそれは、職場の誰にも知られない秘密。
それでもふたりは、
今日も明日も、
静かに愛を育てていく。
“好き”を選んだ結果が、
“夫婦”という形になった。
そしてこれから、
どんな困難があろうとも――
「ふたりなら、大丈夫」
その言葉だけを信じて。
夜になって、
家の中は静まり返っていた。
結婚初日の夜――と言っても、
豪華なディナーもなければ、
特別な記念日用の飾りつけもない。
ただ、静かに並ぶ食器。
ふたりで作ったハンバーグとサラダ。
コンロの火を見ながら、お互いの顔を何度も見て笑って。
「……ねえ、なんか変だね」
「何が?」
「籍、入れたのに……“何も変わってない”のに、“全部変わった”って感じ」
「……分かるかも」
指先が、そっと触れる。
それだけで、胸の奥があたたかくなる。
•
◆ 【一緒に暮らす、という現実】
夕食後、ふたりで皿を洗って、
真希は洗面所で髪を乾かしていた。
隣の部屋からは、悠真のシャワーの音。
(もう、毎日がこうなるのね)
どこか夢みたいで、でも現実で。
ひとりで生きてきた時間が長かった分、
誰かと空間を共有することが、まだ少しくすぐったい。
•
◆ 【静かな寝室、ふたりの距離】
寝室に入ると、
悠真はTシャツ姿でベッドに腰を下ろしていた。
「……真希」
呼ばれて、真希はそっとベッドの隣に座る。
「今日から、毎日こうやって眠るんだね。
隣に、真希がいてくれるんだなって思うと……ちょっと泣きそう」
「泣かないで。……私が泣いちゃう」
そう言って、彼女はそっとシーツを引き、
布団の中に潜り込んだ。
悠真の腕が、彼女の背中を包む。
「……幸せだなって思うの。
でも、やっぱりちょっと怖いの。
“いつか終わるんじゃないか”って、ふと考えちゃう」
彼女の声が震えた。
「真希、終わらせないよ。
俺、ぜったいに。
ずっと真希を、大切にするから」
彼の言葉は、
あたたかくて、まっすぐで――
真希の心を、優しく包み込んだ。
•
◆ 【静かに、甘く、ふたりで眠る】
キスは、
ひどく優しくて、泣きたくなるほど甘かった。
恋人でも、母でもない。
“妻”として、
“ひとりの女”として、
抱きしめられることが、こんなにも幸せだなんて。
「……おやすみ、悠真」
「おやすみ、真希」
その夜、
ふたりは何度もキスを交わして、
ようやく眠りについた。
大人と大人。
でも、まだ少し不器用な新婚夫婦の、
“はじまりの夜”。
【第1話・完】
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